[本編] 黒木 忠生 編
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【久々津】
「ハク君。もし―――何か困り事があったら、ここに連絡しなさい」
【ハク】
「え……?」
久々津は唐突にそんなこと言うと、俺に一枚の紙を手渡した。
そこには、電話番号が書かれている。
【ハク】
「これ、は……?」
【久々津】
「しまってくれ。――――君を最後まで送りたかったが…どうやら迎えが来たようだからな」
【久々津】
「あちらさんはそう待ってはくれないらしい……行こうか」
【ハク】
「あ、はい……っ」
俺は言われるままに紙をしまいこむと、久々津と共に黒木の元へと近づいていった。
近くに行くと、黒木のイライラは絶頂に達していることが分かる。
険しい顔をしていた黒木は、俺が久々津の隣を離れると、ようやく少し緩やかな表情になった。
【黒木】
「……ずいぶんと面白いことをしてくれましたよねぇ?」
【久々津】
「―――――言葉もない」
【黒木】
「……まぁ、いいや。ハクが帰ってくれば」
その義理堅い態度に俺は圧倒されてしまったが、黒木はそれを冷めた目で見下ろしている。
【黒木】
「………ハク、大丈夫?何もされなかった?怖かっただろう?」
【ハク】
「あ……いや、その………」
【黒木】
「…無事に戻ってきてくれたから良かった」
【黒木】
「………帰ろう、ハク」
【ハク】
「あ、ああ……」
俺は、黒木に腕を掴まれ、ヤジの群れをかきわけてその場を後にした。
気になって振り返ると、久々津はまだ頭を下げたままだった………。
俺たちは無事に家に帰ってきた。
ここ最近すっかり黒木の家に住んでいるせいか、ここに帰ってくると妙にホッとしてしまう。
さっきまでの出来事が、まるで嘘みたいに思える………。
【ハク】
「黒木……ごめんな。俺がその……捕まったばっかりに、あんなことになって………」
【黒木】
「ハクが謝ることじゃないだろ。今はとにかく……ハクが無事で良かった」
【ハク】
「ああ……」
水野がかけた脅迫電話………あれを聞いて、黒木はあの場にかけつけてくれたんだろう。
【ハク】
(でも……そういえば、俺は黒木を呼び出すためのカモだったんだよな……?ってことは………)
もともと水野の目的は、俺じゃなくて黒木だったということだ。
なぜ黒木はそんなに目の敵にされているのだろう………やはり詐欺師だからだろうか……?
同じ裏社会の人間だから、なにか関わりがあるのかもしれない………。
【ハク】
(それに、黒木………さっき、銃……持ってたよな……?あれは本物だったんだろうか……)
そういえば、無心に帰ってきたせいか、そのことはすっかり忘れていた。
今黒木を見てみても、どこにも銃の存在はない。
ただ、あの時の久々津の態度からすれば、あれは本物だったんだろう――――そんな気がする……。
【ハク】
(あのとき、あのままだったら……黒木は、撃って…いたのか……?……まさかな……脅すため、だよな…あんなの………)
俺は、それ以上深く考えるのも良くない気がして、努めて軽い話題をふりかけた。
【ハク】
「………なんか、安心したらハラ減ってきたな……」
【黒木】
「あぁ、確かにもういい時間だ」
【ハク】
「そういえば俺、夕飯の買い物してきたんだ。だけどまあ…それもパァになっちゃったけど……」
【黒木】
「そうだったんだ。せっかくハクが買ってくれたのに……つくづく許せないやつらだなぁ……」
黒木が険悪な顔をしたので、俺は慌てて話題を逸らしたりする。
でも黒木はその表情を変えず、俺を見て強い口調で言った。
【黒木】
「……ハク。しばらくは危ないから、家から出ちゃダメだよ」
【ハク】
「え…?家から……?」
【黒木】
「そう。今日みたいなことが、また起こるとも限らないだろ?
【黒木】
「ほとぼりが冷めるまでは家の中にいたほうがいいから」
【ハク】
「そ…っか。そうだよな……」
【ハク】
(確かに、俺が襲われたのは家に入る寸前だったもんな……)
【ハク】
(一歩外に出れば、襲われる可能性があるってことだ……)
久々津や赤屋の態度を思い出すと、また襲われるなんて考えにくかったけれど……
でも、彼らがヤクザだということには違いない。
【ハク】
(それに…黒木を狙っているとしたら、今日みたいに俺がそのエサになる可能性があるってことだ……)
俺は…黒木の言うことを聞くことにした。
【ハク】
「…わかったよ。しばらくは家の中にいることにする」
【黒木】
「………………」
【黒木】
「ああ……。わかってくれて嬉しいよ、ハク」
【ハク】
「いや、俺のためを思って言ってくれてるんだもんな……」
【黒木】
「そう…。―――どこの誰が、ハクの身体を狙ってくるか分かんないからな」
【ハク】
「身体?……って、俺、男だぞ?身体を狙ってくるなんてさすがに無いだろ。何言ってんだよ」
【ハク】
(命を狙われるとかならともかく………)
俺は黒木の言葉に軽く笑った。
黒木の顔は全然笑っていなくて、むしろ強ばった様子でなんだか怖かったけれど………。
【黒木】
「……じゃあ、何か食べようか、ハク」
【ハク】
「ああ」
【ハク】
(……気のせいかな?)
俺はあまり深く考えないことにして、いつもどおりの日常に戻っていった。
黒木と約束したとおり、しばらくは家の中で過ごす毎日が続く。
数日もすると、その生活サイクルに慣れてしまい、家の中での過ごし方にもバリエーションが出てくる。
【ハク】
「平和なのはいいけど退屈っていうか……。……こんな時こそ、掃除だよな!」
いつだったか俺が、掃除でもしようと申し出たとき、黒木はやらなくていいと言ってくれた。
だけど今はもう黒木の家にも慣れてきたし、何もやらないで過ごすよりかはマトモだ。
【ハク】
「…っていっても、黒木の家って片付いてるんだよなあ……そもそも、モノが少ないからな………」
俺はそんなことをブツクサと言いながらも、軽く掃除をしていく。
それがちょっとした日課になったりして、とうとう俺は、普段だったら考えないようなことまで考えるようになった。
【ハク】
「そういえば、隣の部屋とか誰か住んでるのかな……?」
【ハク】
「ここにきてそこそこ経った気がするけど、会ったことないような………」
普通だったら、一度くらいは顔を合わせそうなものだけど……
空家なのだろうか?
【ハク】
「まあ、別になんでもいいか」
俺にとって、そんな日々はいかにも平和そのものだった。
でもそれは………嵐の前の静けさだったのかもしれない――――――………。
続く…
「ハク君。もし―――何か困り事があったら、ここに連絡しなさい」
【ハク】
「え……?」
久々津は唐突にそんなこと言うと、俺に一枚の紙を手渡した。
そこには、電話番号が書かれている。
【ハク】
「これ、は……?」
【久々津】
「しまってくれ。――――君を最後まで送りたかったが…どうやら迎えが来たようだからな」
【久々津】
「あちらさんはそう待ってはくれないらしい……行こうか」
【ハク】
「あ、はい……っ」
俺は言われるままに紙をしまいこむと、久々津と共に黒木の元へと近づいていった。
近くに行くと、黒木のイライラは絶頂に達していることが分かる。
険しい顔をしていた黒木は、俺が久々津の隣を離れると、ようやく少し緩やかな表情になった。
【黒木】
「……ずいぶんと面白いことをしてくれましたよねぇ?」
【久々津】
「―――――言葉もない」
【黒木】
「……まぁ、いいや。ハクが帰ってくれば」
その義理堅い態度に俺は圧倒されてしまったが、黒木はそれを冷めた目で見下ろしている。
【黒木】
「………ハク、大丈夫?何もされなかった?怖かっただろう?」
【ハク】
「あ……いや、その………」
【黒木】
「…無事に戻ってきてくれたから良かった」
【黒木】
「………帰ろう、ハク」
【ハク】
「あ、ああ……」
俺は、黒木に腕を掴まれ、ヤジの群れをかきわけてその場を後にした。
気になって振り返ると、久々津はまだ頭を下げたままだった………。
俺たちは無事に家に帰ってきた。
ここ最近すっかり黒木の家に住んでいるせいか、ここに帰ってくると妙にホッとしてしまう。
さっきまでの出来事が、まるで嘘みたいに思える………。
【ハク】
「黒木……ごめんな。俺がその……捕まったばっかりに、あんなことになって………」
【黒木】
「ハクが謝ることじゃないだろ。今はとにかく……ハクが無事で良かった」
【ハク】
「ああ……」
水野がかけた脅迫電話………あれを聞いて、黒木はあの場にかけつけてくれたんだろう。
【ハク】
(でも……そういえば、俺は黒木を呼び出すためのカモだったんだよな……?ってことは………)
もともと水野の目的は、俺じゃなくて黒木だったということだ。
なぜ黒木はそんなに目の敵にされているのだろう………やはり詐欺師だからだろうか……?
同じ裏社会の人間だから、なにか関わりがあるのかもしれない………。
【ハク】
(それに、黒木………さっき、銃……持ってたよな……?あれは本物だったんだろうか……)
そういえば、無心に帰ってきたせいか、そのことはすっかり忘れていた。
今黒木を見てみても、どこにも銃の存在はない。
ただ、あの時の久々津の態度からすれば、あれは本物だったんだろう――――そんな気がする……。
【ハク】
(あのとき、あのままだったら……黒木は、撃って…いたのか……?……まさかな……脅すため、だよな…あんなの………)
俺は、それ以上深く考えるのも良くない気がして、努めて軽い話題をふりかけた。
【ハク】
「………なんか、安心したらハラ減ってきたな……」
【黒木】
「あぁ、確かにもういい時間だ」
【ハク】
「そういえば俺、夕飯の買い物してきたんだ。だけどまあ…それもパァになっちゃったけど……」
【黒木】
「そうだったんだ。せっかくハクが買ってくれたのに……つくづく許せないやつらだなぁ……」
黒木が険悪な顔をしたので、俺は慌てて話題を逸らしたりする。
でも黒木はその表情を変えず、俺を見て強い口調で言った。
【黒木】
「……ハク。しばらくは危ないから、家から出ちゃダメだよ」
【ハク】
「え…?家から……?」
【黒木】
「そう。今日みたいなことが、また起こるとも限らないだろ?
【黒木】
「ほとぼりが冷めるまでは家の中にいたほうがいいから」
【ハク】
「そ…っか。そうだよな……」
【ハク】
(確かに、俺が襲われたのは家に入る寸前だったもんな……)
【ハク】
(一歩外に出れば、襲われる可能性があるってことだ……)
久々津や赤屋の態度を思い出すと、また襲われるなんて考えにくかったけれど……
でも、彼らがヤクザだということには違いない。
【ハク】
(それに…黒木を狙っているとしたら、今日みたいに俺がそのエサになる可能性があるってことだ……)
俺は…黒木の言うことを聞くことにした。
【ハク】
「…わかったよ。しばらくは家の中にいることにする」
【黒木】
「………………」
【黒木】
「ああ……。わかってくれて嬉しいよ、ハク」
【ハク】
「いや、俺のためを思って言ってくれてるんだもんな……」
【黒木】
「そう…。―――どこの誰が、ハクの身体を狙ってくるか分かんないからな」
【ハク】
「身体?……って、俺、男だぞ?身体を狙ってくるなんてさすがに無いだろ。何言ってんだよ」
【ハク】
(命を狙われるとかならともかく………)
俺は黒木の言葉に軽く笑った。
黒木の顔は全然笑っていなくて、むしろ強ばった様子でなんだか怖かったけれど………。
【黒木】
「……じゃあ、何か食べようか、ハク」
【ハク】
「ああ」
【ハク】
(……気のせいかな?)
俺はあまり深く考えないことにして、いつもどおりの日常に戻っていった。
黒木と約束したとおり、しばらくは家の中で過ごす毎日が続く。
数日もすると、その生活サイクルに慣れてしまい、家の中での過ごし方にもバリエーションが出てくる。
【ハク】
「平和なのはいいけど退屈っていうか……。……こんな時こそ、掃除だよな!」
いつだったか俺が、掃除でもしようと申し出たとき、黒木はやらなくていいと言ってくれた。
だけど今はもう黒木の家にも慣れてきたし、何もやらないで過ごすよりかはマトモだ。
【ハク】
「…っていっても、黒木の家って片付いてるんだよなあ……そもそも、モノが少ないからな………」
俺はそんなことをブツクサと言いながらも、軽く掃除をしていく。
それがちょっとした日課になったりして、とうとう俺は、普段だったら考えないようなことまで考えるようになった。
【ハク】
「そういえば、隣の部屋とか誰か住んでるのかな……?」
【ハク】
「ここにきてそこそこ経った気がするけど、会ったことないような………」
普通だったら、一度くらいは顔を合わせそうなものだけど……
空家なのだろうか?
【ハク】
「まあ、別になんでもいいか」
俺にとって、そんな日々はいかにも平和そのものだった。
でもそれは………嵐の前の静けさだったのかもしれない――――――………。
続く…