[本編] 銀 夏生 編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
俺は、ナツの肩を借りて車に乗せられた。
俺とナツは一言も言葉を交わさず、自然と車内には沈黙が走る。
【ハク】
「…………」
【銀】
「…………」
あの倉庫での悪夢から離れ、今はナツの車の中にいる。
―――それなのに。
俺は、車に乗ってからも涙と震えが止まらなかった。
あそこから離れ、外の空気と光を感じた瞬間、俺の中でぷつんと緊張の糸が途切れた。
その時から、がたがたと震えが止まらない。
流れつくして枯れたと思った涙は、また同じ場所に筋を作って流れている。
【銀】
「……ハク」
そんな俺を見たナツが、俺を抱きよせ、ギュッと抱きしめてきた。
――――あったかい……。
しばらくこうしていたい。
…そんな気分になる。
【銀】
「……これからはオレが守ってやる」
【ハク】
「………」
【ハク】
(……ナツ……)
その言葉を聞いて、ナツの体温を感じて……俺は、ようやく体の震えを止めることができた。
それを確認したナツは、ゆっくり俺の身体から離れていく。
【銀】
「少しは落ち着いたか?」
【ハク】
「うん…」
【銀】
「…とりあえず震えは止まったみたいだな」
【ハク】
「うん…」
俺はさすがに元気に返事することなどできなかったが、なんとかコクリと頷いた。
ナツは頷きながら息を吐く……安堵の息だ。
【銀】
「さあ、家に帰るぞ」
正面に向きなおったナツは、そう言ってギアを入れた。
そして車は、自宅に向けて発車する。
バックミラーには、嫌な記憶しかないあの倉庫がだんだんと小さくなっていく様子が映し出されていた。
それを見て、俺はなんとも言えない気持ちになる………。
【銀】
「…………」
【ハク】
「…………」
車が走り始めてしばらくの間は、また沈黙が続いていた。
ふとサイドウィンドウに目を移した俺は、自分がまだ虚ろ気な目をしているのに気づく。
【ハク】
(――――あの時ナツが助けにきてくれていなかったら……)
そう思うとゾッとする。
あのタイミングだったからこそ良かったのだろう。
【ハク】
(………そういえば……)
タイミングといえば―――そういえば昔もこんなことがあった……。
その時も、ちょうど良いタイミングでナツが助けてくれたのだ。
それは、ふと脳裏をよぎった高校時代の記憶……。
【ハク】
「ナツに助けられたの、これで3回目だな……」
【銀】
「お前を助けたって?」
突然口を開いた俺に驚くでもなく、ナツが不思議そうにそう聞いてくる。
俺は、今でも記憶に残っているあのシーンを、頭の中で再生していた。
【ハク】
「そう。最初に助けてもらったのは……あの時だった………」
それは、俺が高校へ入学してしばらく経ったときのこと――――。
俺はいつも購買でパンを購入し、それを昼休みに食べていた。
ある日、購買で目当ての焼きそばパンを買おうとした時……残っていたのは最後の1個だけだった。
【ハク】
「お、ラッキー!」
俺は、急いで最後の1個だったそれを手にとる。
……が、脇から出てきた2年生に、力づくで奪われてしまったのだ。
【ハク】
「ちょ…そ、それ…俺が先に……!」
【男子生徒1】
「あぁ?なんだ?なんか言ったか一年坊主?最初から俺が持ってたんだぜ?」
【ハク】
(な、なんだよ…っ。俺の焼きそばパンなのに……!)
タチの悪い2年生は、俺にパンを返そうなんて素振りはまるで見せない。それどころか購買のおばちゃんのところに向かおうとまでしている。
【ハク】
(悔しい…!でも……文句なんか言ったら絶対に絡まれるし……)
せっかく最後の一個だったのに泣き寝入りするしかないなんて。
………そう思っていた時。
【銀】
「おい、そこの2年。そのパン、お前たちのもんじゃないだろ。返せ」
【男子生徒1】
「あぁ?なんだとコラ?」
【銀】
「返せ。いますぐ」
【男子生徒1】
「っ!銀…!………くそっ」
【ハク】
(えっ…!?取り返した……!?)
それは、偶然そこを通りかかったナツだった。
ナツは2年生を呼び止め、パンを取り返して俺に渡してくれたのだ。
【銀】
「ほら。これ、お前のなんだろ?」
【ハク】
「あ…はい。あ、ありがとうございます……!」
【銀】
「お前もあんまりぼんやりするなよ?」
【ハク】
「あっ、はい!気をつけます!」
その時のナツは、あまりにもスマートで……。
ナツの存在は有名で、校内の誰しもが知っていたけれど、そうやってみんなが一目置く理由が分かったような気がした。
【ハク】
(あれが…有名な銀先輩か……文武両道ってだけじゃないんだ……。なんだか、カッコ良かったな………)
――――その一件以来、俺はナツを意識するようになったのだ。
校内で有名なナツ。
もっと、この人のことを知りたい………俺の中にはいつのまにかそんな気持ちがわき起こっていて………そんな中だったのだ。
あの、球技大会のテニスの試合があったのは―――――。
しばらく俺は、高校時代のことを考えていた。
そのまま思い出にふけってしまいそうだった俺を、ナツの一言が現実に呼び戻す。
【銀】
「それで……大丈夫だったか?」
【ハク】
「え…?」
【銀】
「黒木だ。アイツに……なにかされてないか?」
【ハク】
「…っ。……大丈夫なわけ、ないだろ……」
ナツの言葉の意味を理解して、俺は半ばヤケ気味に答えた。
何か、って………ナツは分かって言っているんじゃないのか………?
あの時の俺の格好を見れば、普通じゃないことくらいは分かるはずだ。
【ハク】
(だって、あの時の俺………黒木に好き放題にされてたんだぞ………)
―――でも……。
俺が陵辱されるまでの経緯は、ナツにも分からないんだろう………。
【ハク】
「………俺……黒木に、だまされたんだ……」
俺は、黒木にされたこと全てを、おおまかにナツに伝えた。
あの泥酔した時から、さっき助けられた瞬間までのことを
―――それは自分で話すのも嫌になるような内容だったけど………。
思い出すだけでも、気分が悪くなる………。
そんな、耳を塞ぎたくなる話を、ナツは冷静に、そして真面目に聞いてくれていた。
【銀】
「……そうだったのか。随分ひどい仕打ちを受けたんだな…」
【銀】
「―――黒木のヤツ」
俺の話を聞いて、ナツが一言そう漏らす。
黒木の名前を口にしたときのナツの声には、妙に熱がこもっているように感じられた。
俺とナツは一言も言葉を交わさず、自然と車内には沈黙が走る。
【ハク】
「…………」
【銀】
「…………」
あの倉庫での悪夢から離れ、今はナツの車の中にいる。
―――それなのに。
俺は、車に乗ってからも涙と震えが止まらなかった。
あそこから離れ、外の空気と光を感じた瞬間、俺の中でぷつんと緊張の糸が途切れた。
その時から、がたがたと震えが止まらない。
流れつくして枯れたと思った涙は、また同じ場所に筋を作って流れている。
【銀】
「……ハク」
そんな俺を見たナツが、俺を抱きよせ、ギュッと抱きしめてきた。
――――あったかい……。
しばらくこうしていたい。
…そんな気分になる。
【銀】
「……これからはオレが守ってやる」
【ハク】
「………」
【ハク】
(……ナツ……)
その言葉を聞いて、ナツの体温を感じて……俺は、ようやく体の震えを止めることができた。
それを確認したナツは、ゆっくり俺の身体から離れていく。
【銀】
「少しは落ち着いたか?」
【ハク】
「うん…」
【銀】
「…とりあえず震えは止まったみたいだな」
【ハク】
「うん…」
俺はさすがに元気に返事することなどできなかったが、なんとかコクリと頷いた。
ナツは頷きながら息を吐く……安堵の息だ。
【銀】
「さあ、家に帰るぞ」
正面に向きなおったナツは、そう言ってギアを入れた。
そして車は、自宅に向けて発車する。
バックミラーには、嫌な記憶しかないあの倉庫がだんだんと小さくなっていく様子が映し出されていた。
それを見て、俺はなんとも言えない気持ちになる………。
【銀】
「…………」
【ハク】
「…………」
車が走り始めてしばらくの間は、また沈黙が続いていた。
ふとサイドウィンドウに目を移した俺は、自分がまだ虚ろ気な目をしているのに気づく。
【ハク】
(――――あの時ナツが助けにきてくれていなかったら……)
そう思うとゾッとする。
あのタイミングだったからこそ良かったのだろう。
【ハク】
(………そういえば……)
タイミングといえば―――そういえば昔もこんなことがあった……。
その時も、ちょうど良いタイミングでナツが助けてくれたのだ。
それは、ふと脳裏をよぎった高校時代の記憶……。
【ハク】
「ナツに助けられたの、これで3回目だな……」
【銀】
「お前を助けたって?」
突然口を開いた俺に驚くでもなく、ナツが不思議そうにそう聞いてくる。
俺は、今でも記憶に残っているあのシーンを、頭の中で再生していた。
【ハク】
「そう。最初に助けてもらったのは……あの時だった………」
それは、俺が高校へ入学してしばらく経ったときのこと――――。
俺はいつも購買でパンを購入し、それを昼休みに食べていた。
ある日、購買で目当ての焼きそばパンを買おうとした時……残っていたのは最後の1個だけだった。
【ハク】
「お、ラッキー!」
俺は、急いで最後の1個だったそれを手にとる。
……が、脇から出てきた2年生に、力づくで奪われてしまったのだ。
【ハク】
「ちょ…そ、それ…俺が先に……!」
【男子生徒1】
「あぁ?なんだ?なんか言ったか一年坊主?最初から俺が持ってたんだぜ?」
【ハク】
(な、なんだよ…っ。俺の焼きそばパンなのに……!)
タチの悪い2年生は、俺にパンを返そうなんて素振りはまるで見せない。それどころか購買のおばちゃんのところに向かおうとまでしている。
【ハク】
(悔しい…!でも……文句なんか言ったら絶対に絡まれるし……)
せっかく最後の一個だったのに泣き寝入りするしかないなんて。
………そう思っていた時。
【銀】
「おい、そこの2年。そのパン、お前たちのもんじゃないだろ。返せ」
【男子生徒1】
「あぁ?なんだとコラ?」
【銀】
「返せ。いますぐ」
【男子生徒1】
「っ!銀…!………くそっ」
【ハク】
(えっ…!?取り返した……!?)
それは、偶然そこを通りかかったナツだった。
ナツは2年生を呼び止め、パンを取り返して俺に渡してくれたのだ。
【銀】
「ほら。これ、お前のなんだろ?」
【ハク】
「あ…はい。あ、ありがとうございます……!」
【銀】
「お前もあんまりぼんやりするなよ?」
【ハク】
「あっ、はい!気をつけます!」
その時のナツは、あまりにもスマートで……。
ナツの存在は有名で、校内の誰しもが知っていたけれど、そうやってみんなが一目置く理由が分かったような気がした。
【ハク】
(あれが…有名な銀先輩か……文武両道ってだけじゃないんだ……。なんだか、カッコ良かったな………)
――――その一件以来、俺はナツを意識するようになったのだ。
校内で有名なナツ。
もっと、この人のことを知りたい………俺の中にはいつのまにかそんな気持ちがわき起こっていて………そんな中だったのだ。
あの、球技大会のテニスの試合があったのは―――――。
しばらく俺は、高校時代のことを考えていた。
そのまま思い出にふけってしまいそうだった俺を、ナツの一言が現実に呼び戻す。
【銀】
「それで……大丈夫だったか?」
【ハク】
「え…?」
【銀】
「黒木だ。アイツに……なにかされてないか?」
【ハク】
「…っ。……大丈夫なわけ、ないだろ……」
ナツの言葉の意味を理解して、俺は半ばヤケ気味に答えた。
何か、って………ナツは分かって言っているんじゃないのか………?
あの時の俺の格好を見れば、普通じゃないことくらいは分かるはずだ。
【ハク】
(だって、あの時の俺………黒木に好き放題にされてたんだぞ………)
―――でも……。
俺が陵辱されるまでの経緯は、ナツにも分からないんだろう………。
【ハク】
「………俺……黒木に、だまされたんだ……」
俺は、黒木にされたこと全てを、おおまかにナツに伝えた。
あの泥酔した時から、さっき助けられた瞬間までのことを
―――それは自分で話すのも嫌になるような内容だったけど………。
思い出すだけでも、気分が悪くなる………。
そんな、耳を塞ぎたくなる話を、ナツは冷静に、そして真面目に聞いてくれていた。
【銀】
「……そうだったのか。随分ひどい仕打ちを受けたんだな…」
【銀】
「―――黒木のヤツ」
俺の話を聞いて、ナツが一言そう漏らす。
黒木の名前を口にしたときのナツの声には、妙に熱がこもっているように感じられた。
