[本編] 赤屋 竜次 編
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【ハク】
「このへんのはずなんだけどな……」
赤屋と連絡を取る手がかりは、赤屋にもらったこの名刺のみ。
しかも、名刺には名前と住所しか記載されていない。
俺はすがる思いで名刺の住所へと足を運んだ。
電車を乗り継ぐこと約30分、着いた場所は閑静な住宅地だった。
【ハク】
(うわ……すごい屋敷だ)
キョロキョロと辺りを見回しながら歩いている途中、ものすごく立派な和風の屋敷を見かけた。
一軒家にしては広すぎるそれは、まさにお屋敷という感じだ。
立派な門構えに、高い塀が道の向こうまで続いていて敷地もさぞかし広いのだろう。
【ハク】
(こんな家、一体どんな人が住むんだろう)
【ハク】
(会社の社長?芸能人?それとも代々続く武将の末裔とかか……?)
【ハク】
(どっちにしろ俺みたいな一般人には一生縁がないんだろうな)
昨晩、アパートが放火に遭った時間、俺はリュウと一緒だった。
つまり、俺のアリバイを晴らしてくれる人はリュウしかいない。
そして、リュウの居場所の手掛かりはこの住所しかないんだ……。
その後も名刺の住所を探して歩き回ったが、どうも同じ場所をぐるぐる回ってしまう。
【ハク】
「もしかして……」
【ハク】
「やっぱり……ここなのか」
そこは、先ほど見かけた立派なお屋敷だった。
俺にはまるで縁がないと思っていたその場所だったが、さっそく縁ができてしまったようだ。
何度見比べてみても、名刺の住所はそこを指している。
門の前に立ってみると、重々しい雰囲気がこっちまで伝わってくる……ような気がする。
【ハク】
(それにしても、本当にここであってるのか?)
【ハク】
(会社っぽい感じもしないし、リュウが使用人として働いてるなんてのも想像できないぞ……?)
【ハク】
(それに万が一、間違いだったら気まずいし……)
そうして俺がしばらく門の前で考えこんでいたそのときだった。
【男】
「坊っちゃん、いってらっしゃいませーっ!!」
【ハク】
(な、なんだぁ!?)
急に屋敷の中から外まで聞こえるくらい大きな声がした。それも、男が数人で叫んでるみたいな調子だ。
思わず俺はその場から離れ、様子をうかがう。
少し間を置いてギギ……と音がしそうなほど重厚な門が開くと、出てきたのは黒塗りの高級車。
しかも運転してるのはなんだかチンピラっぽいし、後部座席はフルスモークでよく見えない。どう考えてもヤクザ仕様だ。
【ハク】
(さっき坊っちゃんって聞こえたのは、ヤクザのお坊っちゃんのことなのかよ!)
【ハク】
(ちょっと待てよ、ヤクザ……?)
【ハク】
(ってことはリュウもヤクザ屋さんってことか!?)
そんなこと聞いてない。でも、名刺の住所は確かにこの屋敷だ。
そしてたった今屋敷から出てきたのはおそらく立派なヤクザ……。
想定外の事態に、今更俺は帰りたい気持ちでいっぱいだ。
しかし帰るはずのアパートは黒焦げで、今頼れるのは本当にリュウだけなのだ。
そうだった。職なし、家なし、これに覚えのない前科までついたら……考えるだけでも恐ろしい。
【ハク】
(さて、どうするか……?)
俺は正面からインターフォンを鳴らした
【ハク】
(………………)
やっぱり、直接確かめるしかないだろう。
俺は高級車が走り去って誰もいなくなった門の前に再び立つと、一度深呼吸をしてからインターフォンを押した。
ヤクザの屋敷でもインターフォンはあるんだな、なんて現実逃避なのかどうでもいいことを考えてしまう。
ピンポーンと普通の民家となんら変わらない音がして、すぐに応答の声がした。
【赤屋】
「はい」
【ハク】
(リュウの声だ……!)
【ハク】
「すみません、えっと……」
【赤屋】
「その声……ハクか。なぜ、ここに……」
【ハク】
「えっと、名刺の住所見たら、ここだって……」
【赤屋】
「そうか、名刺を見たのか」
【赤屋】
「待ってろ、すぐ行く」
知ってる声が聞こえて安心していると、間を置かずにリュウが門の脇の小さなくぐり戸から出てきた。
【赤屋】
「待たせたな」
【ハク】
「リュウ……」
改めてリュウがこの屋敷から出てきたことを考えると、なんだか複雑な気持ちだ。
【赤屋】
「何か話があって来たんだろ?」
【赤屋】
「ここじゃなんだから中、入れ」
【ハク】
「じゃあ、失礼します……」
こんな立派なところに入るなんて初めてで思わずキョロキョロしてしまう俺に、リュウが苦笑しながら話を切り出す。
【赤屋】
「で、どうしたんだ」
【ハク】
「急に押しかけてごめん。実は……」
俺は屋敷から出てきたリュウに、住んでいたアパートが放火に遭ったこと、さらに俺も犯人として疑われていることを告げた。
【ハク】
「……というわけで、とにかく昨晩のアリバイを証明しないとならないんだ」
【赤屋】
「それは……ひどい目に遭ったな」
【ハク】
「リュウ、昨日の夜からずっと俺と一緒だっただろ?」
【ハク】
「だから……もし、迷惑じゃなければ……」
【赤屋】
「わかった。俺がお前の証人になればいいんだな」
【ハク】
「……!いいのか?」
【赤屋】
「当然だろ」
リュウが深く頷く。
こんな、急に仕事先にまでやってきた俺を、快く受け入れてくれるなんて……。
そうだ。俺はここがリュウの仕事先だったことに気づく。
リュウは仕事があるんだから、そこまで迷惑をかけられない。
【赤屋】
「そうと決まればさっさと行くぞ」
【ハク】
「え、でもリュウは仕事中じゃ……俺ならどこかで待ってるから」
【赤屋】
「そんなこと気にしなくていい」
【赤屋】
「こういうのは早いほうが良いに決まってる」
【ハク】
「リュウ……」
やはりリュウは優しい。それは、高校時代から何も変わらない。
リュウの自信に満ちた笑顔を見ると、俺も大丈夫だと思える。
やっぱり、来てよかった。
【ハク】
「リュウが、そう言うなら……」
【赤屋】
「じゃあ車出す。支度してくるから、ちょっと待ってろ」
【ハク】
「うん。……ありがとう」
「このへんのはずなんだけどな……」
赤屋と連絡を取る手がかりは、赤屋にもらったこの名刺のみ。
しかも、名刺には名前と住所しか記載されていない。
俺はすがる思いで名刺の住所へと足を運んだ。
電車を乗り継ぐこと約30分、着いた場所は閑静な住宅地だった。
【ハク】
(うわ……すごい屋敷だ)
キョロキョロと辺りを見回しながら歩いている途中、ものすごく立派な和風の屋敷を見かけた。
一軒家にしては広すぎるそれは、まさにお屋敷という感じだ。
立派な門構えに、高い塀が道の向こうまで続いていて敷地もさぞかし広いのだろう。
【ハク】
(こんな家、一体どんな人が住むんだろう)
【ハク】
(会社の社長?芸能人?それとも代々続く武将の末裔とかか……?)
【ハク】
(どっちにしろ俺みたいな一般人には一生縁がないんだろうな)
昨晩、アパートが放火に遭った時間、俺はリュウと一緒だった。
つまり、俺のアリバイを晴らしてくれる人はリュウしかいない。
そして、リュウの居場所の手掛かりはこの住所しかないんだ……。
その後も名刺の住所を探して歩き回ったが、どうも同じ場所をぐるぐる回ってしまう。
【ハク】
「もしかして……」
【ハク】
「やっぱり……ここなのか」
そこは、先ほど見かけた立派なお屋敷だった。
俺にはまるで縁がないと思っていたその場所だったが、さっそく縁ができてしまったようだ。
何度見比べてみても、名刺の住所はそこを指している。
門の前に立ってみると、重々しい雰囲気がこっちまで伝わってくる……ような気がする。
【ハク】
(それにしても、本当にここであってるのか?)
【ハク】
(会社っぽい感じもしないし、リュウが使用人として働いてるなんてのも想像できないぞ……?)
【ハク】
(それに万が一、間違いだったら気まずいし……)
そうして俺がしばらく門の前で考えこんでいたそのときだった。
【男】
「坊っちゃん、いってらっしゃいませーっ!!」
【ハク】
(な、なんだぁ!?)
急に屋敷の中から外まで聞こえるくらい大きな声がした。それも、男が数人で叫んでるみたいな調子だ。
思わず俺はその場から離れ、様子をうかがう。
少し間を置いてギギ……と音がしそうなほど重厚な門が開くと、出てきたのは黒塗りの高級車。
しかも運転してるのはなんだかチンピラっぽいし、後部座席はフルスモークでよく見えない。どう考えてもヤクザ仕様だ。
【ハク】
(さっき坊っちゃんって聞こえたのは、ヤクザのお坊っちゃんのことなのかよ!)
【ハク】
(ちょっと待てよ、ヤクザ……?)
【ハク】
(ってことはリュウもヤクザ屋さんってことか!?)
そんなこと聞いてない。でも、名刺の住所は確かにこの屋敷だ。
そしてたった今屋敷から出てきたのはおそらく立派なヤクザ……。
想定外の事態に、今更俺は帰りたい気持ちでいっぱいだ。
しかし帰るはずのアパートは黒焦げで、今頼れるのは本当にリュウだけなのだ。
そうだった。職なし、家なし、これに覚えのない前科までついたら……考えるだけでも恐ろしい。
【ハク】
(さて、どうするか……?)
俺は正面からインターフォンを鳴らした
【ハク】
(………………)
やっぱり、直接確かめるしかないだろう。
俺は高級車が走り去って誰もいなくなった門の前に再び立つと、一度深呼吸をしてからインターフォンを押した。
ヤクザの屋敷でもインターフォンはあるんだな、なんて現実逃避なのかどうでもいいことを考えてしまう。
ピンポーンと普通の民家となんら変わらない音がして、すぐに応答の声がした。
【赤屋】
「はい」
【ハク】
(リュウの声だ……!)
【ハク】
「すみません、えっと……」
【赤屋】
「その声……ハクか。なぜ、ここに……」
【ハク】
「えっと、名刺の住所見たら、ここだって……」
【赤屋】
「そうか、名刺を見たのか」
【赤屋】
「待ってろ、すぐ行く」
知ってる声が聞こえて安心していると、間を置かずにリュウが門の脇の小さなくぐり戸から出てきた。
【赤屋】
「待たせたな」
【ハク】
「リュウ……」
改めてリュウがこの屋敷から出てきたことを考えると、なんだか複雑な気持ちだ。
【赤屋】
「何か話があって来たんだろ?」
【赤屋】
「ここじゃなんだから中、入れ」
【ハク】
「じゃあ、失礼します……」
こんな立派なところに入るなんて初めてで思わずキョロキョロしてしまう俺に、リュウが苦笑しながら話を切り出す。
【赤屋】
「で、どうしたんだ」
【ハク】
「急に押しかけてごめん。実は……」
俺は屋敷から出てきたリュウに、住んでいたアパートが放火に遭ったこと、さらに俺も犯人として疑われていることを告げた。
【ハク】
「……というわけで、とにかく昨晩のアリバイを証明しないとならないんだ」
【赤屋】
「それは……ひどい目に遭ったな」
【ハク】
「リュウ、昨日の夜からずっと俺と一緒だっただろ?」
【ハク】
「だから……もし、迷惑じゃなければ……」
【赤屋】
「わかった。俺がお前の証人になればいいんだな」
【ハク】
「……!いいのか?」
【赤屋】
「当然だろ」
リュウが深く頷く。
こんな、急に仕事先にまでやってきた俺を、快く受け入れてくれるなんて……。
そうだ。俺はここがリュウの仕事先だったことに気づく。
リュウは仕事があるんだから、そこまで迷惑をかけられない。
【赤屋】
「そうと決まればさっさと行くぞ」
【ハク】
「え、でもリュウは仕事中じゃ……俺ならどこかで待ってるから」
【赤屋】
「そんなこと気にしなくていい」
【赤屋】
「こういうのは早いほうが良いに決まってる」
【ハク】
「リュウ……」
やはりリュウは優しい。それは、高校時代から何も変わらない。
リュウの自信に満ちた笑顔を見ると、俺も大丈夫だと思える。
やっぱり、来てよかった。
【ハク】
「リュウが、そう言うなら……」
【赤屋】
「じゃあ車出す。支度してくるから、ちょっと待ってろ」
【ハク】
「うん。……ありがとう」