そんなことがあった翌日の夜。
この日も藍建さんは家で夕食を食べている。

【藍建】
「うん、今日の飯もおいしい！」

【ハク】
「よかった……」

【ハク】
（なんか、ここのところ藍建さんと夕飯が食べられてうれしいな）

先週頃は藍建さんの仕事が忙しくて、一人で食べる夕食が多かったのだ。
俺がご飯と共に喜びを噛み締めていると、不意に藍建さんに質問を投げかけられた。

【藍建】
「ところでハクくん、今週末は何か予定あるか？」

【ハク】
「今週末、ですか？」

【ハク】
「えっと……何もないですけど」

【藍建】
「そうか……」

【藍建】
「じゃあ、ここへ行かないか？」

そうして藍建さんは、何か封筒を取り出してテーブルに置いた。

【藍建】
「開けてみて」

【ハク】
「……？」

【ハク】
「これは……！」

促されて俺は封筒を開ける。
そこに入っていたのは、昨日テレビでハロウィンイベントの特集をやっていた、ドリームワールドのチケットだった。

【ハク】
「えっ！？これ……どうして藍建さんが……？」

【藍建】
「喜んでもらえたかな？」

【ハク】
「はっ、はい！それはもう……」

【ハク】
「でも、なんで俺が行きたがってるってわかったんですか？」

【藍建】
「昨日の本屋でも熱心に雑誌を読んでいたし、テレビの特集も気にしてたみたいだったから、きっと行きたいんじゃないかなぁと思ったんだ」

【藍建】
「正解みたいでよかったよ」

【ハク】
「でも俺、藍建さんはこういうとこ行っても楽しくないんじゃないかって思ってました……」

【藍建】
「……バカだなぁ。キミが行きたいところなら、オレはどこでも付き合うよ」

【ハク】
「藍建さん……！」

感極まった俺は、思わず食事中の藍建さんに抱き着いた。

【藍建】
「わっ、よせ、味噌汁が零れるって！」

【ハク】
「だって、俺……うれしくて」

【ハク】
「ありがとうございます、藍建さん」

【藍建】
「まったく……しょうがないなハクくんは」

藍建さんはそう言うと、箸を置いて俺の頭を撫でてくれた。

【ハク】
（早く週末にならないかな……）


【ハク】
「うわー、すごい人ですね」

【藍建】
「さすがに休日だけあって大盛況だな、こりゃ」

あっと言う間に俺の望んだ週末になり、俺と藍建さんは件のテーマパーク、ドリームワールドへとやってきた。
雑誌やテレビの宣伝効果の賜物か、午前中にもかかわらず既に辺りは人でごった返している。

【藍建】
「テレビで特集されるくらいだから、人気なんだなぁ」

【ハク】
「藍建さん……その、大丈夫ですか？」

なんだか俺のわがままに藍建さんを付き合せてしまったようで、少しだけ不安になる。
だが、藍建さんは俺の不安を笑い飛ばすように笑顔を見せた。

【藍建】
「ん？平気平気。それより、まずはどこに行く？」

【ハク】
（よかった……）

【ハク】
「えっと……それじゃ……」

入口で受け取ったパンフレットを広げると、ちょうど昼のパレードの時刻が迫っている。

【ハク】
「あ、もうすぐパレードがありますよ。ハロウィンイベントの一部みたい」

【藍建】
「よーし。じゃあまずは、それを見てからだな」

俺と藍建さんは、アトラクションの前に昼のパレードを見ることにした。