【ハク】
（ジャックオーランタンがコウモリ男を人質にして、ゾンビと睨み合ってるなんて……）

改めて客観的に考えると、かなりの異常事態である。
しばしの間二人の睨み合いが続いたが、リュウの目力に負けたのかジャックオーランタンの男が言い訳のように口を開いた。

【男】
「俺は……就職にも失敗して、もう貯金も使い果たして……」

【男】
「俺が生きて行くためには、こうするしか、なかったんだ！！」

【ハク】
「……！」

【赤屋】
「…………」

【店員】
「…………」

男の悲痛な叫びに、店内は俄かに強盗への同情ムードに包まれる。
だが、そこに空気を読まない一言が水を差した。

【水野】
「……でも、強盗した時点で人生終わってないスか？」

【強盗】
「な、なんだと！？」

【水野】
「あ？やんのか？」

【店員】
「ひいいいいい！」

男は改めて包丁を構え直した。
水野さんも挑戦的に睨みつける……しかし、それをリュウが制した。

【赤屋】
「ヤス！」

【赤屋】
「止めろ……そんなこと、言うもんじゃねぇ……」

【水野】
「アニキ……スイマセン」

リュウが言うと、水野さんはしゅんとして静かになる。
そして、リュウは強盗の方へ向き直った。

【赤屋】
「なぁ、お前……」

【男】
「な、なんだよ……お前まで俺に説教する気かよ……」

【赤屋】
「いや、そうじゃない」

【赤屋】
「お前……働くところがないなら、うちの組で働かないか？」

【男】
「……は？」

【水野】
「何言ってるんスか、アニキ！」

【赤屋】
「ヤスは黙ってろって言っただろ」

何やら反対しようとする水野さんを、リュウは再び黙らせる。

【赤屋】
「確かに、強盗は犯罪だ。罪は償わなくちゃならない」

【赤屋】
「だが、罪を償って出所した後なら……うちは歓迎するぞ」

【ハク】
「リュウ……」

リュウの言葉は、暗に強盗に自首を勧めていた。