[本編] 緑川 彰一 編
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―――その日の閉店後ミーティング。
【緑川】
「今日は申し訳なかった」
緑川さんは本当に申し訳なさそうに謝っていた。
【ハク】
(緑川さん……)
この店に来てから、緑川さんのことを『何ひとつ不自由のない完璧な王子様』だと思ってたいけれど……。
【ハク】
(……そんな緑川さんも深刻な悩みを抱えているのかもしれない……)
どうやら家族とは連絡を取っていないみたいだ。
【ハク】
(にしても、緑川商事って……)
日本でも有数の大企業だ。
緑川さんはそこの御曹司?
でも……。
【ハク】
(じゃあなんで連絡も取らずに、しかもホストって……)
緑川さんの笑顔の裏に隠された闇は……俺に想像もできない。
【緑川】
「そこで提案なんだけど、今日怖い思いをさせてしまったお客さんに、何か改めてお詫びがしたいんだ」
【桃島】
「お詫び、ですか……?」
【緑川】
「モモ、今日の来客リストあるよね?」
【桃島】
「ありますけど……」
【緑川】
「悪いけど……持ってきてもらえるかな」
【桃島】
「わかりました」
そう言って、一旦バックヤードへ姿を消した桃島さんが顧客リストを持って戻ってくる。
【緑川】
「ありがとう」
【緑川】
「今日来たお客さんたちを招待して、パーティーを開こう」
【ハク】
(パーティー!)
【緑川】
「特別なサービスができるといいよね、たとえば……」
【緑川】
「シャンパンタワーとか?」
【ハク】
「……」
【緑川】
「それからプレゼントを用意するのもいいかもしれない」
【緑川】
「楽しむためのお店であんな思いをさせたらいけないよね」
【緑川】
「精一杯の誠意を尽くそう」
【ハク】
(緑川さん……)
そう話す緑川さんの表情は、まるで張り付いたような笑顔。
【ハク】
(無理して笑わなくてもいいのに……)
たぶん、……店にいるみんなは気づいていなかったと思う。
緑川さんは相変わらず王子様スマイルを浮かべているだけなんだけど……。
その笑顔が俺には偽物にしか感じられなかった―――。
―――数日後。
この間のお客さんたちを招待して、お詫びのパーティーが開かれた。
【緑川】
「みんな、この間は怖い思いをさせて本当にごめん」
【緑川】
「少しでも楽しんでもらえたらと思って今日のパーティーを企画しました」
【緑川】
「思いっきり楽しんで帰ってね」
【緑川】
「それじゃ……カンパイ」
今日のパーティーにかかる費用は、全て緑川さんの自腹だった。
お詫びのパーティーと名乗っている以上、お客さんから代金を取るわけにはいかない。
当然、今日の俺たちスタッフの分も緑川さんが立て替えることになる。
そう考えると今日だけで緑川さんの出費は十、百……もう桁を考えることすら恐ろしい。
【ハク】
(……緑川さん、笑ってる……)
緑川さんはお店にいるとき確かにいつも笑っている。
でも今日はいつも以上に笑顔を崩さない気がした。
【ハク】
(仮面の笑顔……って感じ)
そうは思っても、俺に言えることは何もない。
……すると、緑川さんを見つめる俺の肩を誰かが叩いた。
【桃島】
「よう」
【ハク】
「モモさん!」
【桃島】
「……あれ、どう思う?」
【ハク】
(…………)
【桃島】
「緑川さん、ですよね……」
【桃島】
「俺もあの人と一緒に働いてるけど……あんな笑顔、初めて見た」
【ハク】
「なんか……悲しいです」
確かにホストは笑顔を見せる商売だ。
でも……あんなに悲しい笑顔を崩さない緑川さんを見ているのは苦しい。
【桃島】
「……あの人、俺にも……他の誰かにも、絶対本音見せないんだ」
【ハク】
「そうなんですか?」
【桃島】
「そりゃホストやってるぐらいだし、何かしらウラはあると思ってたけど……」
【桃島】
「古株のホストでも、緑川さんが『緑川商事』の御曹司だってこと」
【桃島】
「こないだの事件まで誰も知らなかったんだ」
【ハク】
「そうだったんですか!?」
【桃島】
「あの人は自分のこと、何も話さない……」
【ハク】
「どうして……」
【桃島】
「さあね。……でも」
【ハク】
「モモさん?」
【桃島】
「……お前ならいけそうな気がするけど」
【ハク】
「えっ……俺?」
【桃島】
「緑川さんのホントのトコロ、……お前なら聞けそうな気がする」
【桃島】
「俺には無理だったけど」
悲しそうにそうつぶやいて、桃島さんは控え室に去って行った。
【ハク】
(俺に、って……)
【ハク】
(ホストの先輩たちや桃島さんにも聞けなかった真実を、なんで俺が……)
【ハク】
(無理に決まってますよ、桃島さん……)
そう思いながら俺は、お客さんに変わらぬ笑顔を振りまく緑川さんのことをずっと見つめていた―――。
―――その日の夜。
不幸は再び、訪れることとなった……。
【緑川】
「今日は申し訳なかった」
緑川さんは本当に申し訳なさそうに謝っていた。
【ハク】
(緑川さん……)
この店に来てから、緑川さんのことを『何ひとつ不自由のない完璧な王子様』だと思ってたいけれど……。
【ハク】
(……そんな緑川さんも深刻な悩みを抱えているのかもしれない……)
どうやら家族とは連絡を取っていないみたいだ。
【ハク】
(にしても、緑川商事って……)
日本でも有数の大企業だ。
緑川さんはそこの御曹司?
でも……。
【ハク】
(じゃあなんで連絡も取らずに、しかもホストって……)
緑川さんの笑顔の裏に隠された闇は……俺に想像もできない。
【緑川】
「そこで提案なんだけど、今日怖い思いをさせてしまったお客さんに、何か改めてお詫びがしたいんだ」
【桃島】
「お詫び、ですか……?」
【緑川】
「モモ、今日の来客リストあるよね?」
【桃島】
「ありますけど……」
【緑川】
「悪いけど……持ってきてもらえるかな」
【桃島】
「わかりました」
そう言って、一旦バックヤードへ姿を消した桃島さんが顧客リストを持って戻ってくる。
【緑川】
「ありがとう」
【緑川】
「今日来たお客さんたちを招待して、パーティーを開こう」
【ハク】
(パーティー!)
【緑川】
「特別なサービスができるといいよね、たとえば……」
【緑川】
「シャンパンタワーとか?」
【ハク】
「……」
【緑川】
「それからプレゼントを用意するのもいいかもしれない」
【緑川】
「楽しむためのお店であんな思いをさせたらいけないよね」
【緑川】
「精一杯の誠意を尽くそう」
【ハク】
(緑川さん……)
そう話す緑川さんの表情は、まるで張り付いたような笑顔。
【ハク】
(無理して笑わなくてもいいのに……)
たぶん、……店にいるみんなは気づいていなかったと思う。
緑川さんは相変わらず王子様スマイルを浮かべているだけなんだけど……。
その笑顔が俺には偽物にしか感じられなかった―――。
―――数日後。
この間のお客さんたちを招待して、お詫びのパーティーが開かれた。
【緑川】
「みんな、この間は怖い思いをさせて本当にごめん」
【緑川】
「少しでも楽しんでもらえたらと思って今日のパーティーを企画しました」
【緑川】
「思いっきり楽しんで帰ってね」
【緑川】
「それじゃ……カンパイ」
今日のパーティーにかかる費用は、全て緑川さんの自腹だった。
お詫びのパーティーと名乗っている以上、お客さんから代金を取るわけにはいかない。
当然、今日の俺たちスタッフの分も緑川さんが立て替えることになる。
そう考えると今日だけで緑川さんの出費は十、百……もう桁を考えることすら恐ろしい。
【ハク】
(……緑川さん、笑ってる……)
緑川さんはお店にいるとき確かにいつも笑っている。
でも今日はいつも以上に笑顔を崩さない気がした。
【ハク】
(仮面の笑顔……って感じ)
そうは思っても、俺に言えることは何もない。
……すると、緑川さんを見つめる俺の肩を誰かが叩いた。
【桃島】
「よう」
【ハク】
「モモさん!」
【桃島】
「……あれ、どう思う?」
【ハク】
(…………)
【桃島】
「緑川さん、ですよね……」
【桃島】
「俺もあの人と一緒に働いてるけど……あんな笑顔、初めて見た」
【ハク】
「なんか……悲しいです」
確かにホストは笑顔を見せる商売だ。
でも……あんなに悲しい笑顔を崩さない緑川さんを見ているのは苦しい。
【桃島】
「……あの人、俺にも……他の誰かにも、絶対本音見せないんだ」
【ハク】
「そうなんですか?」
【桃島】
「そりゃホストやってるぐらいだし、何かしらウラはあると思ってたけど……」
【桃島】
「古株のホストでも、緑川さんが『緑川商事』の御曹司だってこと」
【桃島】
「こないだの事件まで誰も知らなかったんだ」
【ハク】
「そうだったんですか!?」
【桃島】
「あの人は自分のこと、何も話さない……」
【ハク】
「どうして……」
【桃島】
「さあね。……でも」
【ハク】
「モモさん?」
【桃島】
「……お前ならいけそうな気がするけど」
【ハク】
「えっ……俺?」
【桃島】
「緑川さんのホントのトコロ、……お前なら聞けそうな気がする」
【桃島】
「俺には無理だったけど」
悲しそうにそうつぶやいて、桃島さんは控え室に去って行った。
【ハク】
(俺に、って……)
【ハク】
(ホストの先輩たちや桃島さんにも聞けなかった真実を、なんで俺が……)
【ハク】
(無理に決まってますよ、桃島さん……)
そう思いながら俺は、お客さんに変わらぬ笑顔を振りまく緑川さんのことをずっと見つめていた―――。
―――その日の夜。
不幸は再び、訪れることとなった……。