[本編] 赤屋 竜次 編
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【ハク】
「……少し早く着き過ぎたかな」
ある日俺に短い手紙が届いた。
中身は待ち合わせの日時と場所、それに高校時代の友人とだけ記してあった。
――差出人の名前はない。
普通は怪しがって捨てるところなんだろうが、その手紙を見ると不思議と高校時代仲間が今どうしているのか気になった。
そして、指定されたバーにやって来たというわけだ。
高校時代の友人と会うのは卒業以来、実に12年ぶり。
店内を見回してみても、それらしい顔はまだなかった。
そのとき、偶然知らない男と目が合ってしまった。
【男】
「あ?おい、何見てんだよ」
【ハク】
(うわ、やばそうな人だ……しかも結構酔ってる……?)
【ハク】
「いえ……とくに、何も」
【男】
「人様にガンつけといてなんだァ?その態度は」
【ハク】
「……見てない、ですし……」
【男】
「うるせぇ!」
酔った男が俺の腕をつかんでくる。男が大声を出してきたせいで店内の注目もこっちに向く。
ったく……面倒なことになった。
俺は争いごとは苦手だ。できることなら穏便にすませたいが…腕力で敵わなそうな気がする。
そこで俺は助けを求めて再び店内を見回す。
【ハク】
「あの……誰か」
やはり面倒事に巻き込まれるのが嫌なのは皆同じなのか、人々は俺が助けを求めようとするとさっと目を伏せる。
その時だった。
【???】
「……おい、やめとけ」
【ハク】
「えっ……?」
一人の赤髪の男性が、俺に絡んでいた男の肩に手を置いた。
身長は170センチと平均的な俺に比べればかなり高く、肩幅も広くガタイも良い。
【男】
「なんだお前は!?」
【???】
「手、離せって言ってんだよ」
【男】
「お前には関係ないだろうが!」
【???】
「たとえ関係ないとしても、見過ごせねェな」
赤髪の男性が鋭い目で男を睨みつけ、肩に置いた手に力を込める。
俺から見ても痛いのがわかるくらいに、男の肩に食い込む指。
【男】
「ぐぅぅぅ…」
【男】
「ちっ、しょ、しょうがねぇな……」
赤髪の男性に睨まれた酔っ払いの男は慌てて俺の腕を離すと、逃げるように店から出て行った。
それにしても、なんで見ず知らずの俺なんかを助けてくれたんだろう。
俺は、改めて助けてくれた男性に向き直る。
【ハク】
「あ、あの……ありがとう、ございました」
【???】
「気にすんな、このくらい。……大丈夫だったか?ハク」
【ハク】
「え?」
【ハク】
(『ハク』だって……?)
『ハク』、それは高校時代の俺の呼び名だ。
この呼び方をする奴は限られてる。
もしかして、この人は……?
【赤屋】
「なんだ。覚えてないのか」
【赤屋】
「『リュウ』だよ、赤屋竜次だ」
【ハク】
「『リュウ』……?」
【ハク】
「じゃあ、あの手紙は……!」
【赤屋】
「ああ。……来てくれたんだな」
『リュウ』こと赤屋竜次。
高校時代の仲間の一人だ。
一年留年していたため仲間内では兄貴分で、俺のことも弟のように可愛がってくれていた。
こうやってよくよく見ると、背丈は昔とさほど変わらない。
でも、体格はさらに一回り逞しくなった気がする。
【ハク】
(それにしても……)
【ハク】
(あの頃から兄貴って感じだったけど、さらに渋くなったというか……)
【赤屋】
「なんだよ、人の顔じろじろ見て」
【ハク】
「あ、いや……大人になったな、と」
【赤屋】
「当たり前だろ、もう12年も経つんだから」
【赤屋】
「ハクも、大人っぽくなったな」
【ハク】
「そりゃ、もういい年だし」
【赤屋】
「それもそうか」
【ハク】
「まぁ、久しぶりなんだから、飲もうよ」
そうして酒とつまみを注文し、昔話に花が咲く。
気づけば時間も経っていた。
【ハク】
「そういえば、リュウは今なにやってるの?」
【赤屋】
「今、か……?」
【ハク】
「会社員?……にしてはガタイ良いし……もしかしてガテン系、とか?」
【赤屋】
「ああ、まぁ……そんなとこだ」
リュウはどこか歯切れ悪く答える。
【赤屋】
「ハクのほうこそ、何してるんだ」
【ハク】
「お、俺……は……」
【ハク】
(どうしよう、横領の罪で会社クビになったなんて言えるわけ……)
【ハク】
(いや、濡れ衣なんだけど……)
【赤屋】
「ハク?」
【ハク】
「せ、せっかくの再会なんだから、そんなことはどうでもいいか」
【ハク】
「俺、おかわり貰おうかな」
【ハク】
「おい、そんなペースで飲んで大丈夫か?」
【ハク】
「俺ももう子供じゃないんだからさ、大丈夫だって」
【赤屋】
「……そう、だよな」
【ハク】
「大丈夫、大丈夫だって」
【赤屋】
「…ああ」
【ハク】
「すいませーん、今のヤツ、もう一杯下さい」
【和久井】
「はーい」
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