[本編] 藍建 仁 編
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【銀】
「わかったなら、さっさと仕事に戻れ」
【ハク】
「…………」
ナツはもう書類に視線を戻して、俺の方を見もしない。
俺はもう、社長室を出て仕事に戻るしかなかった。
俺がナツに直接話を迫り、あえなく玉砕したその夜も、俺が家に帰ると既に藍建さんが部屋にいた。
【藍建】
「ハクくん、おかえり」
【ハク】
「ただいま、藍建さん」
しかしその表情は明るいとは言えない。
……仕事が忙しいのかもしれない。だが、きっと一番の理由はそんなことではないはずだ。
俺ではこの人の気持ちを晴らしてやることはできないのかもしれないと、心の奥で呟く。
俺は、そんな無力な自分が嫌だった。
【藍建】
「どうしたんだ?浮かない顔して」
自分の方がひどい顔をしている癖に、そんなことを言う。
そんな藍建さんを見ていたら、ついぽろりと口から言葉が滑り落ちた。
【ハク】
「ごめんなさい……俺、今日ナツに会ってきたんですけど……」
【藍建】
「銀に?どうして……」
【ハク】
「藍建さんにこんな顔させるアイツに、ひとこと言ってやりたくて……」
【ハク】
「でも、だめでした。相手にすらされなかった」
言葉にすると、悔しさが溢れ出る。
俺がその気持ちを噛み締めていると、藍建さんが茫然とした様子で口を開いた。
【藍建】
「オレの、ために……?」
【ハク】
「……はい」
当然だ。
俺は藍建さんのためなら、なんだってしてやりたい。
藍建さんには恩があるから……
いや、きっとそれだけじゃない。
だが、その気持ちはもう少しだけ、仕舞っておきたかった。
【藍建】
「ありがとう……」
【ハク】
「でも俺、結局何も……」
【藍建】
「オレのためにそんなことまでしてくれたってことが、一番嬉しいんだよ」
【藍建】
「ありがとう」
【藍建】
「そうだ、オレもハクくんに……」
そこまで言うと、藍建さんは考え込むような顔をして黙ってしまった。
【ハク】
「……藍建さん、どうかしたんですか?」
【藍建】
「いや、なんでもない。本当に、ありがとう」
その日から、藍建さんの帰宅時間が遅くなった。
ある日のことだ。
俺が会社から帰ると、藍建さんが妙に改まった顔をして座っていた。
俺がナツのところに直談判しに行ったあの日以来、憑き物が取れたと言って藍建さんは忙しそうに働いていた。
帰りも俺より遅い日が続き、だが、あの日のように消沈した様子ではなく、むしろ充実している風なことが救いだ。
【藍建】
「……オレが今追ってる事件のこと、聞いてもらえるかい」
【ハク】
「え……でも、そんな大事なこと、俺が聞いちゃって良いんですか?」
【藍建】
「良いんだ。オレが今追っている事件ってのは、あの放火事件だからさ」
放火事件、と聞いてすぐにぴんと来た。
燃えてしまった俺の元住んでいたアパート。火元は俺の部屋だと言う。
家を焼け出された俺は、藍建さんの家にこうして世話になることになった。
藍建さんの口からあの日以来、この事件のことを聞いていなかった俺は内心動揺する。
だが藍建さんはそんな俺をよそに、一枚の写真を取り出した。
【藍建】
「この男性に、見覚えはないか」
【ハク】
「……!!この人は……!」
小さい写真を拡大したような、荒い画像でも確かにわかる。
……藍建さんが見せた写真の人物は、俺に横領の罪を着せて懲戒免職に追い込んだ上司、その人だった。
【藍建】
「もう一つ見てほしい写真があるんだ」
そう言って藍建さんが取り出した二枚目の写真には、元上司の他にもう一人、
俺の良く知る男の姿があった。
【ハク】
「ナツ……!?一体どうして……」
【藍建】
「これは、ある店の防犯カメラの映像をプリントアウトしたものだ」
【藍建】
「俺の調べたところによると、キミの上司と銀は裏で繋がっていたようだ」
【藍建】
「放火のセンはまだわからないが……」
【藍建】
「少なくともハクくんの解雇の件に関してはこいつらが噛んでると見てほぼ間違いない」
【ハク】
「……っ!?」
俺は言葉を失った。
十年以上も会ってなかったナツが、一体、なんで……?
理由なんて、これっぽっちも思いつかない。
……だが、こうして落ち込んでいる場合じゃないということだけは、わかった。
【ハク】
「藍建さん、これ、借ります!!」
気が付くと俺は会社から帰ってきたスーツ姿のまま、その写真を手に外へ走り出していた。
続く…
「わかったなら、さっさと仕事に戻れ」
【ハク】
「…………」
ナツはもう書類に視線を戻して、俺の方を見もしない。
俺はもう、社長室を出て仕事に戻るしかなかった。
俺がナツに直接話を迫り、あえなく玉砕したその夜も、俺が家に帰ると既に藍建さんが部屋にいた。
【藍建】
「ハクくん、おかえり」
【ハク】
「ただいま、藍建さん」
しかしその表情は明るいとは言えない。
……仕事が忙しいのかもしれない。だが、きっと一番の理由はそんなことではないはずだ。
俺ではこの人の気持ちを晴らしてやることはできないのかもしれないと、心の奥で呟く。
俺は、そんな無力な自分が嫌だった。
【藍建】
「どうしたんだ?浮かない顔して」
自分の方がひどい顔をしている癖に、そんなことを言う。
そんな藍建さんを見ていたら、ついぽろりと口から言葉が滑り落ちた。
【ハク】
「ごめんなさい……俺、今日ナツに会ってきたんですけど……」
【藍建】
「銀に?どうして……」
【ハク】
「藍建さんにこんな顔させるアイツに、ひとこと言ってやりたくて……」
【ハク】
「でも、だめでした。相手にすらされなかった」
言葉にすると、悔しさが溢れ出る。
俺がその気持ちを噛み締めていると、藍建さんが茫然とした様子で口を開いた。
【藍建】
「オレの、ために……?」
【ハク】
「……はい」
当然だ。
俺は藍建さんのためなら、なんだってしてやりたい。
藍建さんには恩があるから……
いや、きっとそれだけじゃない。
だが、その気持ちはもう少しだけ、仕舞っておきたかった。
【藍建】
「ありがとう……」
【ハク】
「でも俺、結局何も……」
【藍建】
「オレのためにそんなことまでしてくれたってことが、一番嬉しいんだよ」
【藍建】
「ありがとう」
【藍建】
「そうだ、オレもハクくんに……」
そこまで言うと、藍建さんは考え込むような顔をして黙ってしまった。
【ハク】
「……藍建さん、どうかしたんですか?」
【藍建】
「いや、なんでもない。本当に、ありがとう」
その日から、藍建さんの帰宅時間が遅くなった。
ある日のことだ。
俺が会社から帰ると、藍建さんが妙に改まった顔をして座っていた。
俺がナツのところに直談判しに行ったあの日以来、憑き物が取れたと言って藍建さんは忙しそうに働いていた。
帰りも俺より遅い日が続き、だが、あの日のように消沈した様子ではなく、むしろ充実している風なことが救いだ。
【藍建】
「……オレが今追ってる事件のこと、聞いてもらえるかい」
【ハク】
「え……でも、そんな大事なこと、俺が聞いちゃって良いんですか?」
【藍建】
「良いんだ。オレが今追っている事件ってのは、あの放火事件だからさ」
放火事件、と聞いてすぐにぴんと来た。
燃えてしまった俺の元住んでいたアパート。火元は俺の部屋だと言う。
家を焼け出された俺は、藍建さんの家にこうして世話になることになった。
藍建さんの口からあの日以来、この事件のことを聞いていなかった俺は内心動揺する。
だが藍建さんはそんな俺をよそに、一枚の写真を取り出した。
【藍建】
「この男性に、見覚えはないか」
【ハク】
「……!!この人は……!」
小さい写真を拡大したような、荒い画像でも確かにわかる。
……藍建さんが見せた写真の人物は、俺に横領の罪を着せて懲戒免職に追い込んだ上司、その人だった。
【藍建】
「もう一つ見てほしい写真があるんだ」
そう言って藍建さんが取り出した二枚目の写真には、元上司の他にもう一人、
俺の良く知る男の姿があった。
【ハク】
「ナツ……!?一体どうして……」
【藍建】
「これは、ある店の防犯カメラの映像をプリントアウトしたものだ」
【藍建】
「俺の調べたところによると、キミの上司と銀は裏で繋がっていたようだ」
【藍建】
「放火のセンはまだわからないが……」
【藍建】
「少なくともハクくんの解雇の件に関してはこいつらが噛んでると見てほぼ間違いない」
【ハク】
「……っ!?」
俺は言葉を失った。
十年以上も会ってなかったナツが、一体、なんで……?
理由なんて、これっぽっちも思いつかない。
……だが、こうして落ち込んでいる場合じゃないということだけは、わかった。
【ハク】
「藍建さん、これ、借ります!!」
気が付くと俺は会社から帰ってきたスーツ姿のまま、その写真を手に外へ走り出していた。
続く…