[本編] 藍建 仁 編
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裏路地から駅前の待ち合わせ場所に戻ってきて時間を確認すると、ちょうど約束の時刻だった。
【ハク】
(まだ、ドキドキいってる……)
まるで全身が心臓そのもののように脈打っており、動悸が鎮まらない。
それもそうだ。
久々に再会したリュウと別れたのが数分前。
その直後にリュウの声を聞いて路地を覗けば、そこには血まみれの見知らぬ男性と、
その返り血を浴びたリュウの姿があった……。
目を瞑ると、目蓋の裏に焼きついたかのような、あのリュウの冷たい目 ――
【ハク】
「はぁ……」
俺は自分を落ち着けるために一度、深く息を吐く。
だが、ざわざわする胸の内は収まりそうになかった。
【ハク】
(藍建さん、遅いな……)
既に時計の針は約束の時刻を過ぎていた。
全く無関係なはずなのに頭の中には先ほどの血まみれの男がチラついて、藍建さんに何かあったのでは……
と縁起でもないことまで考えてしまう。
【ハク】
(そんな訳ないか…)
俺は自分のバカな妄想を頭の隅へと追いやろうとしていた。
そのまま約束の時間を五分ほど過ぎた頃だろうか。
不安に駆られながら待っていると、不意に明るい声が俺の名前を呼んだ。
【藍建】
「あ、いたいた!ハクくん!」
【ハク】
「藍建さん!」
駅の改札を通って、藍建さんがやってきた。
当たり前に何事もない様子で、俺はそのことにほっとする。
ただ、よっぽど仕事が忙しかったのか、それとも急いで来てくれたのだろうか……
心なしか今朝会った時よりもスーツ姿がくたびれているような気がする。
【藍建】
「いやー、悪い悪い。仕事が思ったより長引いちゃって」
【ハク】
「お疲れ様です」
【藍建】
「心配かけてすまなかったね」
【ハク】
「いえ、俺も来たばかりですから」
そんな藍建さんの顔を見た途端、さっきまでの不安な気持ちが胸の内からすーっと消えていった。
同時に、冷静に先ほどの出来事を思い返してみる。
【ハク】
(そうだ。藍建さんは刑事だし、路地でのことを話した方がいいのかな?)
【ハク】
(でも、そうするとリュウのことも言わなきゃならなくなる……)
一瞬の間に様々な思いが頭を駆け巡る。
【藍建】
「ん、どうした?オレの顔、なんかついてる?」
どうやら、無意識のうちに藍建さんを見つめてしまっていたらしい。
【ハク】
「あ、いえ……何でもないです」
結局、俺は何も言わないことを選択した。
できれば、見なかったことにしたい気持ちもあった。
【藍建】
「それじゃ、オレの家に行く前に飯…だな」
【藍建】
「取り合えず行きつけのラーメン屋に行こうと思うんだけど、いいかな?」
【ハク】
「はい」
こっち、と藍建さんが指をさす。
それに続いて俺も藍建さんの後ろを着いて歩きだした。
【藍建】
「ここ、安くて旨いんだよ」
そう言って藍建さんが案内してくれたラーメン屋は、お世辞にも綺麗とは言えなかった。
適当に空いている席に着くと、藍建さんは店主と思しき人に目配せをする。
【藍建】
「俺はいつものラーメンに半チャーハンだけど、ハクくんはどうする?」
【ハク】
「あ、俺も同じので大丈夫です」
そう言うと藍建さんは店主に向かって指を2本見せた。
もう言葉をかわさなくても注文ができるほどの常連のようだ。
しばらくすると注文したラーメンと半チャーハンが出てくる。
【藍建】
「さぁ、冷めないうちに食った食った」
そう言った藍建さんもラーメンに箸をつけ始めた。
【ハク】
「旨い!」
ラーメンを一口食べた俺は、思わずその旨さに声をあげていた。
【藍建】
「だろ?俺はこの辺じゃ一番旨いと思ってるんだよ」
正直期待はしていなかったのだが、それもあってその旨さが舌に沁みる。
俺は腹が減っていたのもあったが、ラーメンと半チャーハンを一気に平らげてしまった。スープも飲みほしてしまったほどだ。
2人とも食べ終えて、会計をと財布を取り出そうとすると、藍建さんが俺に目配せをする。
【藍建】
「ここは俺が奢るよ」
その申し出に俺はなんだが申し訳ない気持ちになったが、どうやら支払わせてはくれないようだ。
【ハク】
「昼に引き続き、すみません」
俺はそうお礼を言うのが精一杯だった。
ラーメン屋を後にした俺達は、藍建さんの家へと向かう。
【ハク】
「さっきのラーメンほんと旨かったです」
【ハク】
「近所に、こんな旨いラーメン屋があるなんて」
【藍建】
「口に合ってよかったよ」
【藍建】
「まぁ店の中はお世辞にもきれいとはいえないけどな」
藍建さんがそう言って俺に笑いかけるから、俺もつられて笑ってしまった。
何気ない気配りが、やっぱり頼りになる大人としての魅力を感じる。
【藍建】
「さて。じゃあ、俺の家に向かうか」
そう言って藍建さんが歩きだすと、俺もそれに続いて今夜お世話になる家へと歩き出した。
俺は火事で住んでいたアパートを焼け出され、とりあえず今夜は藍建さんの家にお世話になることになったのだった。
【藍建】
「はい、ここがオレの部屋」
駅から少し歩いた通りに、藍建さんの住むアパートはあった。
【藍建】
「ちょっと散らかってるけど、どうぞ」
【ハク】
「お邪魔します……」
【藍建】
「まぁ、そのへんに座っちゃってよ」
【ハク】
「じゃあ、失礼します」
藍建さんの部屋は、俺が元住んでいたアパートよりも広い2DKだ。
部屋にあげてもらい、言われた通りに藍建さんが示したちゃぶ台の前の座布団に座る。
落ち着かない俺はきょろきょろと視線を彷徨わせてしまうが、藍建さんは気にせず俺の隣に座った。
【ハク】
(なんていうか……男の一人暮らしって感じの部屋だな)
仕事が忙しいのもあるんだろう。
家の中は少々雑然としているというか……
洗濯物が積み上がっていたり、新聞や雑誌が重なったままだ。
【藍建】
「とりあえず、疲れただろ。今日はもう寝るか」
【ハク】
「えっ、あ、はい……」
【藍建】
「トイレと洗面所は出て左だから。タオルはこれ使って……あ、洗濯はしてあるよ」
【ハク】
「はい……」
洗濯物の山の中にあったタオルを手渡され、言われるまま洗面所へ向かう。
顔を洗って戻ると、藍建さんは布団の準備をしていた。
【藍建】
「いやー、そういえば布団一組しかなかったんだった」
【ハク】
(まだ、ドキドキいってる……)
まるで全身が心臓そのもののように脈打っており、動悸が鎮まらない。
それもそうだ。
久々に再会したリュウと別れたのが数分前。
その直後にリュウの声を聞いて路地を覗けば、そこには血まみれの見知らぬ男性と、
その返り血を浴びたリュウの姿があった……。
目を瞑ると、目蓋の裏に焼きついたかのような、あのリュウの冷たい目 ――
【ハク】
「はぁ……」
俺は自分を落ち着けるために一度、深く息を吐く。
だが、ざわざわする胸の内は収まりそうになかった。
【ハク】
(藍建さん、遅いな……)
既に時計の針は約束の時刻を過ぎていた。
全く無関係なはずなのに頭の中には先ほどの血まみれの男がチラついて、藍建さんに何かあったのでは……
と縁起でもないことまで考えてしまう。
【ハク】
(そんな訳ないか…)
俺は自分のバカな妄想を頭の隅へと追いやろうとしていた。
そのまま約束の時間を五分ほど過ぎた頃だろうか。
不安に駆られながら待っていると、不意に明るい声が俺の名前を呼んだ。
【藍建】
「あ、いたいた!ハクくん!」
【ハク】
「藍建さん!」
駅の改札を通って、藍建さんがやってきた。
当たり前に何事もない様子で、俺はそのことにほっとする。
ただ、よっぽど仕事が忙しかったのか、それとも急いで来てくれたのだろうか……
心なしか今朝会った時よりもスーツ姿がくたびれているような気がする。
【藍建】
「いやー、悪い悪い。仕事が思ったより長引いちゃって」
【ハク】
「お疲れ様です」
【藍建】
「心配かけてすまなかったね」
【ハク】
「いえ、俺も来たばかりですから」
そんな藍建さんの顔を見た途端、さっきまでの不安な気持ちが胸の内からすーっと消えていった。
同時に、冷静に先ほどの出来事を思い返してみる。
【ハク】
(そうだ。藍建さんは刑事だし、路地でのことを話した方がいいのかな?)
【ハク】
(でも、そうするとリュウのことも言わなきゃならなくなる……)
一瞬の間に様々な思いが頭を駆け巡る。
【藍建】
「ん、どうした?オレの顔、なんかついてる?」
どうやら、無意識のうちに藍建さんを見つめてしまっていたらしい。
【ハク】
「あ、いえ……何でもないです」
結局、俺は何も言わないことを選択した。
できれば、見なかったことにしたい気持ちもあった。
【藍建】
「それじゃ、オレの家に行く前に飯…だな」
【藍建】
「取り合えず行きつけのラーメン屋に行こうと思うんだけど、いいかな?」
【ハク】
「はい」
こっち、と藍建さんが指をさす。
それに続いて俺も藍建さんの後ろを着いて歩きだした。
【藍建】
「ここ、安くて旨いんだよ」
そう言って藍建さんが案内してくれたラーメン屋は、お世辞にも綺麗とは言えなかった。
適当に空いている席に着くと、藍建さんは店主と思しき人に目配せをする。
【藍建】
「俺はいつものラーメンに半チャーハンだけど、ハクくんはどうする?」
【ハク】
「あ、俺も同じので大丈夫です」
そう言うと藍建さんは店主に向かって指を2本見せた。
もう言葉をかわさなくても注文ができるほどの常連のようだ。
しばらくすると注文したラーメンと半チャーハンが出てくる。
【藍建】
「さぁ、冷めないうちに食った食った」
そう言った藍建さんもラーメンに箸をつけ始めた。
【ハク】
「旨い!」
ラーメンを一口食べた俺は、思わずその旨さに声をあげていた。
【藍建】
「だろ?俺はこの辺じゃ一番旨いと思ってるんだよ」
正直期待はしていなかったのだが、それもあってその旨さが舌に沁みる。
俺は腹が減っていたのもあったが、ラーメンと半チャーハンを一気に平らげてしまった。スープも飲みほしてしまったほどだ。
2人とも食べ終えて、会計をと財布を取り出そうとすると、藍建さんが俺に目配せをする。
【藍建】
「ここは俺が奢るよ」
その申し出に俺はなんだが申し訳ない気持ちになったが、どうやら支払わせてはくれないようだ。
【ハク】
「昼に引き続き、すみません」
俺はそうお礼を言うのが精一杯だった。
ラーメン屋を後にした俺達は、藍建さんの家へと向かう。
【ハク】
「さっきのラーメンほんと旨かったです」
【ハク】
「近所に、こんな旨いラーメン屋があるなんて」
【藍建】
「口に合ってよかったよ」
【藍建】
「まぁ店の中はお世辞にもきれいとはいえないけどな」
藍建さんがそう言って俺に笑いかけるから、俺もつられて笑ってしまった。
何気ない気配りが、やっぱり頼りになる大人としての魅力を感じる。
【藍建】
「さて。じゃあ、俺の家に向かうか」
そう言って藍建さんが歩きだすと、俺もそれに続いて今夜お世話になる家へと歩き出した。
俺は火事で住んでいたアパートを焼け出され、とりあえず今夜は藍建さんの家にお世話になることになったのだった。
【藍建】
「はい、ここがオレの部屋」
駅から少し歩いた通りに、藍建さんの住むアパートはあった。
【藍建】
「ちょっと散らかってるけど、どうぞ」
【ハク】
「お邪魔します……」
【藍建】
「まぁ、そのへんに座っちゃってよ」
【ハク】
「じゃあ、失礼します」
藍建さんの部屋は、俺が元住んでいたアパートよりも広い2DKだ。
部屋にあげてもらい、言われた通りに藍建さんが示したちゃぶ台の前の座布団に座る。
落ち着かない俺はきょろきょろと視線を彷徨わせてしまうが、藍建さんは気にせず俺の隣に座った。
【ハク】
(なんていうか……男の一人暮らしって感じの部屋だな)
仕事が忙しいのもあるんだろう。
家の中は少々雑然としているというか……
洗濯物が積み上がっていたり、新聞や雑誌が重なったままだ。
【藍建】
「とりあえず、疲れただろ。今日はもう寝るか」
【ハク】
「えっ、あ、はい……」
【藍建】
「トイレと洗面所は出て左だから。タオルはこれ使って……あ、洗濯はしてあるよ」
【ハク】
「はい……」
洗濯物の山の中にあったタオルを手渡され、言われるまま洗面所へ向かう。
顔を洗って戻ると、藍建さんは布団の準備をしていた。
【藍建】
「いやー、そういえば布団一組しかなかったんだった」