[本編] 桃島 光彦 編
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【ハク】
「いらっしゃませ」
【緑川】
「ようこそ、お客様」
―――あれから数日。
【ハク】
「今日のご指名はどなたになさいますか?」
【緑川】
「こちらの彼はユキ、オススメですよ」
店では普段通りの日々が続いた。
【ハク】
(緑川さんは桃島さんのこと、カタつけてくれるって言ってたけど……)
【ハク】
(どうなったんだろう……?)
―――その時、キャアア! と店内に断末魔のようなお客さんの悲鳴が響いた。
【ハク】
「何だっ、今の音!?」
悲鳴の方を全員が振り返る。
【ハク】
「香月さん!?」
そこにいたのは、―――ナイフを持っている香月さんだった。
【緑川】
「なっ……!」
さすがの緑川さんも動揺している。
【ハク】
「お客様、奥へ!」
とりあえず安全第一とお客様や他のホストたちを奥の部屋に誘導する。
【香月】
「ちょうどいいや、緑川。お前に用があんだよ」
【緑川】
「……営業中です」
【香月】
「知るかよ! こんな店より大事なモンの取引に来てやってんだ」
【桃島】
「香月さん……」
桃島さんはそんな香月さんの姿を見て呆然としていた。
【緑川】
「……何ですか」
【香月】
「お前はいつも馬鹿丁寧で癪に障るな」
【緑川】
「……手短にお願いします」
すると香月さんは緑川さんの頬にナイフを接近させた。
【緑川】
「っ……!」
【ハク】
「危なっ……」
【香月】
「関係ねーヤツは引っ込んでろよ!」
香月さんの怒声が響き渡った。
【緑川】
「……なんでこんなことを?」
【香月】
「しらばっくれてんじゃねぇよ!」
すると香月さんは抵抗できない緑川さんの下腹部を思いきり殴りつけた。
【緑川】
「うっ……」
緑川さんは呻き声をあげて座り込む。
【ハク】
(やばい……そうだ、赤屋!)
リュウは確かこの組にいると聞いていた。
【ハク】
「連絡先、連絡先……あった!」
慌てて今の状況を端的にケータイに打ち込む。
【ハク】
(お願いだから通じてくれ)
祈るようにメール送信ボタンを押す。
『送信完了しました』
【ハク】
「良かった……」
ほっとしたのもつかの間。
今度は香月さんが緑川さんを蹴りつけていた。
【香月】
「違うんだ……俺はお前を傷つけるつもりじゃ……」
【桃島】
「……うるせえ」
【香月】
「だって……お前が俺に縋らないから……」
【香月】
「ホストさせられるより、俺のことを愛してくれた方が……」
【桃島】
「……お前のそういうところ、反吐が出るほど嫌いだ」
【香月】
「そんな……モモ……」
【桃島】
「でも……俺も同じ気持ち、味わってたから……」
【香月】
「……!」
弱々しい声で、桃島さんは香月さんにそう語りかける。
【ハク】
(香月さんはずっと桃島さんのこと……。それに……)
桃島さんも香月さんの気持ちに、気づいていたのかもしれない。
【ハク】
(香月さんが自分と同じ立場だから振り切れなかったのか……?)
借金だと思っていた桃島さんの行動の理由が明らかになる。
【緑川】
「それ以上喋るな。身体に障る」
【桃島】
「緑川さん……ハハ、カッコわりぃ、俺」
【緑川】
「テル……」
すると、店のドアが開かれる。
【赤屋】
「おい!」
【香月】
「赤屋……!?」
【赤屋】
「ハク、連絡ありがとう」
【ハク】
「来てくれたんだ!」
【赤屋】
「あぁ」
【赤屋】
「香月……」
赤屋は桃島さんを抱えて座り込む香月さんに近寄り、襟元をつかんで引っ張り上げた。
【香月】
「お前……立場をわかって……」
【赤屋】
「いくらナンバー2の息子でも、久々津組の顔に泥塗るやつは許せない」
ドカッ、と赤屋の拳が香月さんの頬を思いきり殴る。
【香月】
「ぐ、っ……!」
【赤屋】
「落とし前は、つけてもらうぞ」
【香月】
「……」
赤屋は久々津組の面々と、香月さんを引き連れて店を出て行った。
開いていたドアからは救急車のサイレンが聞こえる。
するとドアを開けて救急隊員が入ってきた。
【救急隊員】
「急患はこちらですか!?」
【緑川】
「はい!」
救急隊員の手際のいい止血で、桃島さんの出血は一時的に止まったものの、やはり病院へ搬送されるらしい。
その時俺は…
俺も行きます!と叫んでいた。
応急処置をされたとはいえ、負傷していることに変わりはない。
緑川さんに次いで俺が乗り込むと、救急車はけたたましいサイレンを鳴らして出発した。
【ハク】
「桃島さん!大丈夫ですか?」
俺は思わず、担架で横になっている桃島さんの手を握りながら声をかけた。
【桃島】
「くっ…なに…これぐらいの傷で…」
【緑川】
「テル!それ以上喋るな。体力消耗を抑えないと…」
【桃島】
「……緑川さん。俺…また迷惑かけちまった…な」
【緑川】
「気にするな…。それより早く傷を治す事を考えろ」
【桃島】
「……はい」
そう桃島さんは短く返事をすると、そのまま目を閉じてしまった。
【緑川】
「おい!テル!?大丈夫か!?」
俺達はガクガク桃島さんの身体を揺さぶるが、返事はない。
救急車は俺達が勤めるホストクラブのある繁華街を抜けて病院を目指すが、さすがは夜の街。
人通りが多く、なかなか思うように進めない。
【緑川】
「…くそっ!」
さすがの緑川さんも、なかなか進まない救急車に焦っているのがわかる。
俺も同じ気持ちだった。
このまま桃島さんが助からなかったら…。
俺はそんな最悪のことを考えてしまっていた…。
続く…
「いらっしゃませ」
【緑川】
「ようこそ、お客様」
―――あれから数日。
【ハク】
「今日のご指名はどなたになさいますか?」
【緑川】
「こちらの彼はユキ、オススメですよ」
店では普段通りの日々が続いた。
【ハク】
(緑川さんは桃島さんのこと、カタつけてくれるって言ってたけど……)
【ハク】
(どうなったんだろう……?)
―――その時、キャアア! と店内に断末魔のようなお客さんの悲鳴が響いた。
【ハク】
「何だっ、今の音!?」
悲鳴の方を全員が振り返る。
【ハク】
「香月さん!?」
そこにいたのは、―――ナイフを持っている香月さんだった。
【緑川】
「なっ……!」
さすがの緑川さんも動揺している。
【ハク】
「お客様、奥へ!」
とりあえず安全第一とお客様や他のホストたちを奥の部屋に誘導する。
【香月】
「ちょうどいいや、緑川。お前に用があんだよ」
【緑川】
「……営業中です」
【香月】
「知るかよ! こんな店より大事なモンの取引に来てやってんだ」
【桃島】
「香月さん……」
桃島さんはそんな香月さんの姿を見て呆然としていた。
【緑川】
「……何ですか」
【香月】
「お前はいつも馬鹿丁寧で癪に障るな」
【緑川】
「……手短にお願いします」
すると香月さんは緑川さんの頬にナイフを接近させた。
【緑川】
「っ……!」
【ハク】
「危なっ……」
【香月】
「関係ねーヤツは引っ込んでろよ!」
香月さんの怒声が響き渡った。
【緑川】
「……なんでこんなことを?」
【香月】
「しらばっくれてんじゃねぇよ!」
すると香月さんは抵抗できない緑川さんの下腹部を思いきり殴りつけた。
【緑川】
「うっ……」
緑川さんは呻き声をあげて座り込む。
【ハク】
(やばい……そうだ、赤屋!)
リュウは確かこの組にいると聞いていた。
【ハク】
「連絡先、連絡先……あった!」
慌てて今の状況を端的にケータイに打ち込む。
【ハク】
(お願いだから通じてくれ)
祈るようにメール送信ボタンを押す。
『送信完了しました』
【ハク】
「良かった……」
ほっとしたのもつかの間。
今度は香月さんが緑川さんを蹴りつけていた。
【香月】
「違うんだ……俺はお前を傷つけるつもりじゃ……」
【桃島】
「……うるせえ」
【香月】
「だって……お前が俺に縋らないから……」
【香月】
「ホストさせられるより、俺のことを愛してくれた方が……」
【桃島】
「……お前のそういうところ、反吐が出るほど嫌いだ」
【香月】
「そんな……モモ……」
【桃島】
「でも……俺も同じ気持ち、味わってたから……」
【香月】
「……!」
弱々しい声で、桃島さんは香月さんにそう語りかける。
【ハク】
(香月さんはずっと桃島さんのこと……。それに……)
桃島さんも香月さんの気持ちに、気づいていたのかもしれない。
【ハク】
(香月さんが自分と同じ立場だから振り切れなかったのか……?)
借金だと思っていた桃島さんの行動の理由が明らかになる。
【緑川】
「それ以上喋るな。身体に障る」
【桃島】
「緑川さん……ハハ、カッコわりぃ、俺」
【緑川】
「テル……」
すると、店のドアが開かれる。
【赤屋】
「おい!」
【香月】
「赤屋……!?」
【赤屋】
「ハク、連絡ありがとう」
【ハク】
「来てくれたんだ!」
【赤屋】
「あぁ」
【赤屋】
「香月……」
赤屋は桃島さんを抱えて座り込む香月さんに近寄り、襟元をつかんで引っ張り上げた。
【香月】
「お前……立場をわかって……」
【赤屋】
「いくらナンバー2の息子でも、久々津組の顔に泥塗るやつは許せない」
ドカッ、と赤屋の拳が香月さんの頬を思いきり殴る。
【香月】
「ぐ、っ……!」
【赤屋】
「落とし前は、つけてもらうぞ」
【香月】
「……」
赤屋は久々津組の面々と、香月さんを引き連れて店を出て行った。
開いていたドアからは救急車のサイレンが聞こえる。
するとドアを開けて救急隊員が入ってきた。
【救急隊員】
「急患はこちらですか!?」
【緑川】
「はい!」
救急隊員の手際のいい止血で、桃島さんの出血は一時的に止まったものの、やはり病院へ搬送されるらしい。
その時俺は…
俺も行きます!と叫んでいた。
応急処置をされたとはいえ、負傷していることに変わりはない。
緑川さんに次いで俺が乗り込むと、救急車はけたたましいサイレンを鳴らして出発した。
【ハク】
「桃島さん!大丈夫ですか?」
俺は思わず、担架で横になっている桃島さんの手を握りながら声をかけた。
【桃島】
「くっ…なに…これぐらいの傷で…」
【緑川】
「テル!それ以上喋るな。体力消耗を抑えないと…」
【桃島】
「……緑川さん。俺…また迷惑かけちまった…な」
【緑川】
「気にするな…。それより早く傷を治す事を考えろ」
【桃島】
「……はい」
そう桃島さんは短く返事をすると、そのまま目を閉じてしまった。
【緑川】
「おい!テル!?大丈夫か!?」
俺達はガクガク桃島さんの身体を揺さぶるが、返事はない。
救急車は俺達が勤めるホストクラブのある繁華街を抜けて病院を目指すが、さすがは夜の街。
人通りが多く、なかなか思うように進めない。
【緑川】
「…くそっ!」
さすがの緑川さんも、なかなか進まない救急車に焦っているのがわかる。
俺も同じ気持ちだった。
このまま桃島さんが助からなかったら…。
俺はそんな最悪のことを考えてしまっていた…。
続く…