[本編] 赤屋 竜次 編
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こうして、アパートの火事で行くところのない俺をリュウが受け入れてくれたかたちで、俺たちの同居が始まった。
同性同士で気兼ねがないとはいえ、それまで別々に暮らしていた男が一緒に暮らすのだから、もちろん楽なことばかりじゃなかった。
その中でも、俺が一番慣れなかったのは睡眠だ。
リュウの部屋にベッドは一つしかない。
それなので、俺は最初は床に寝るつもりだった。
俺は案外どこでも眠れる体質なのでちゃんとした布団がなくてもどうとでもなると思ったし、文句もない。
だが、リュウが床で寝るのは体に良くないと言うので、結局一つしかないベッドを二人で使うことになった。
アラサーの男が二人並んでベッドで寝るのは、個人的には床で寝るよりも問題がある気もするのだが……。
唯一の救いはそのベッドがゆったりしたクイーンサイズで、高校時代とは違い、2人で寝ても苦にならない広さということだろうか……。
そういうわけで、俺は今日もリュウと同じベッドで寝ている。
【ハク】
(リュウってほんと、こういうとこ子供扱いっていうか……)
【ハク】
(過保護っていうか……高校時代から変わってないよな)
【ハク】
(俺もそろそろ三十路だってのに)
【ハク】
(っていうか、リュウはもう34歳なのか!)
リュウに気づかれないように苦笑しながら考える。
リュウの家に住むようになって数日が経つが、俺はまだ二人で一つのベッドを使うことに慣れる気配がない。
今日も、寝ているリュウの横で眠れない時間を持て余している。
【ハク】
(そんなに簡単に慣れるわけないよな……)
【ハク】
(でも、そのうち慣れるもんなのかな……)
反面、リュウの部屋の天井にはもう慣れた。
なぜならベッドでリュウの隣に寝転ぶと、俺はもう天井を見つめるか、目を閉じるしかないからだ。
電気は消してあるから部屋は暗いが、そのうちに闇に目が馴染んで見えてくる。
また俺は、いつかのようにぼーっと天井を見ていた。
俺が前に住んでたアパートとは違った天井。
ふと、懐かしくなってその天井を思い出す。
【ハク】
(もう…ないんだよな)
そう思うとなんだか切なくなる。
決していい物件ではなかったが、俺なりな愛着はあった。
が、今はもう火事で焼けてしまって、跡形もないのだ。
【ハク】
(……本当に誰の仕業だったのだろうか)
夜になると必ず思い出す。
考えても考えても、答えはでないはずなのに。
警察は犯人を探してくれているとは言っていたが、それも当てにはならない。
やっぱり、自分で探さなきゃならない…のか。
俺は、ふと大きなため息をついた。
【ハク】
(さて、……そろそろ寝るか)
慣れないとはいえ、いつまでもこうしていても仕方ない。
寝てしまおうとしたそのとき、リュウがこっちに向けて寝返りを打った。
【赤屋】
「ん……」
【ハク】
(うわ……)
どきんと、胸が鳴る。
俺がなかなか二人で寝るのに慣れることのできない理由のひとつが、ここにあった。
つい、あの日……
リュウと再会した翌日のことを思い出す。
リュウの部屋、このベッドで起き上がったその時、たまたま見てしまったリュウの裸体。
今はもちろんパジャマ代わりのTシャツは着ているが、きれいに筋肉がついていることが服の上からでも見てわかる。
【ハク】
(やっぱり、いい体してるよなぁ……)
彫刻のように引き締まった身体……厚い胸板に、均等に割れた腹筋。
そんな細部まで覚えていないはずなのに、俺はこの薄い布地の下を思い描かずにいられない。
そして、その身体にある無数の傷跡も……。
あの時俺には、リュウの傷が逞しく見えた。
【ハク】
(今思えば、仕事の関係でついた傷なのかな……)
相変わらず、リュウは仕事でどんなことをしているのかは俺に話してくれない。
俺には何をしたらあそこまで傷だらけになるのかはわからなかったが、何か危険なことをしているのはわかる。
【ハク】
(……リュウは毎日普通にしてるけど)
【ハク】
(もう、寝よう……)
俺は目を瞑り、リュウとは逆の方向に寝返りを打った。
とはいえ、生活の面では二人暮らしはなかなか快調だ。
リュウには何から何まで世話になっているので、せめてと思って家事は俺が進んでやるようになった。
会社をクビになったことはもうリュウも知っているから、掃除に洗濯、食事も俺が作る。
もともと結構長いこと一人暮らしだったし、自炊もしていた。
そりゃ店に出すような料理は無理だが、それなりに食えるものは作れると思っている。
【赤屋】
「ただいま……お、なんか良い匂いすんな」
【ハク】
「リュウ、おかえり」
今日も夕食を作っていると、リュウが帰ってきた。
ただいまとおかえりの挨拶もすっかり習慣になっている。
【ハク】
「そろそろ帰ってくると思って、夕飯作ってたんだ」
【ハク】
「卵が余ってたから、オムライスにしちゃったけど……」
【赤屋】
「うん、美味そうだ」
一人分の料理をするのも二人分の料理をするのも、手間はほとんど変わらない。
むしろ、俺の向かいでリュウが美味しそうに食べてくれるのが嬉しくて、一人で作っていたときより楽しいくらいだ。
【赤屋】
「いただきます」
【ハク】
「……いただきます」
行儀よく手を合わせるリュウに続いて、俺も手を合わせてからオムライスを頬張る。
……うん、悪くない味だ。
【赤屋】
「……美味い。オムライスも、このスープも」
【赤屋】
「ホント悪いな、いつもメシ作ってもらって」
【ハク】
「ううん。置いてもらってるのは俺だし……それに、一人で食べるよりも二人の方が美味いしさ」
【赤屋】
「そうだな。俺も、ハクが料理上手くて助かる」
そう言ってリュウは微笑む。
二人で過ごすこのひとときが、なんだかしっくりくる感じがして俺はすごく好きだった。
……リュウがヤクザだってことを再認識させられる出来事もあった。
二人で暮らし始めてから、俺はリュウは思ってたよりも早く帰って来てくれることに気付く。
もしかして俺と一緒に夕飯を食べるためかな、とか自惚れてみたりもしていた。
今思うと、同居がそれなりに上手くいってることでかなり浮かれていた。
ある日、俺はリュウが玄関に脱ぎ散らかしたジャケットをみつけた。
【ハク】
(リュウのやつ……こんなことしてると皺になるんだから)
【ハク】
(そりゃ、俺だってサラリーマンの頃はたまに面倒になって投げてたけどさ)
【ハク】
(ちゃんとハンガーに掛けないと……)
仕方ないやつだな、なんて。
そんなことを口には出さず思いながら持ち上げた瞬間、ゴトッと重たい音がしてジャケットの内ポケットから思いがけないものが転げ落ちる。
知らず背筋が寒くなり、血の気が引いてゆくのを感じた。
……ドラマや映画の中でしか見たことがなかったはずの、黒光りする銃身。
それは俺が生まれて初めて目にした本物の拳銃だった。
【ハク】
「う、うわああああ!!」
【赤屋】
「ハク、どうした……!」
【赤屋】
「っ……!」
思わず声をあげた俺にリュウが気付いた。
そして、俺の落とした拳銃と床にへたり込む俺の姿を見てリュウの顔色が変わる。
焦った様子で、そのまま何も言わずに拳銃を取り上げた。
【赤屋】
「……すまない。俺の不注意だ、忘れてくれ」
【ハク】
「…………」
リュウの言葉も、最初は意味を理解するのに少し時間がかかった。
同性同士で気兼ねがないとはいえ、それまで別々に暮らしていた男が一緒に暮らすのだから、もちろん楽なことばかりじゃなかった。
その中でも、俺が一番慣れなかったのは睡眠だ。
リュウの部屋にベッドは一つしかない。
それなので、俺は最初は床に寝るつもりだった。
俺は案外どこでも眠れる体質なのでちゃんとした布団がなくてもどうとでもなると思ったし、文句もない。
だが、リュウが床で寝るのは体に良くないと言うので、結局一つしかないベッドを二人で使うことになった。
アラサーの男が二人並んでベッドで寝るのは、個人的には床で寝るよりも問題がある気もするのだが……。
唯一の救いはそのベッドがゆったりしたクイーンサイズで、高校時代とは違い、2人で寝ても苦にならない広さということだろうか……。
そういうわけで、俺は今日もリュウと同じベッドで寝ている。
【ハク】
(リュウってほんと、こういうとこ子供扱いっていうか……)
【ハク】
(過保護っていうか……高校時代から変わってないよな)
【ハク】
(俺もそろそろ三十路だってのに)
【ハク】
(っていうか、リュウはもう34歳なのか!)
リュウに気づかれないように苦笑しながら考える。
リュウの家に住むようになって数日が経つが、俺はまだ二人で一つのベッドを使うことに慣れる気配がない。
今日も、寝ているリュウの横で眠れない時間を持て余している。
【ハク】
(そんなに簡単に慣れるわけないよな……)
【ハク】
(でも、そのうち慣れるもんなのかな……)
反面、リュウの部屋の天井にはもう慣れた。
なぜならベッドでリュウの隣に寝転ぶと、俺はもう天井を見つめるか、目を閉じるしかないからだ。
電気は消してあるから部屋は暗いが、そのうちに闇に目が馴染んで見えてくる。
また俺は、いつかのようにぼーっと天井を見ていた。
俺が前に住んでたアパートとは違った天井。
ふと、懐かしくなってその天井を思い出す。
【ハク】
(もう…ないんだよな)
そう思うとなんだか切なくなる。
決していい物件ではなかったが、俺なりな愛着はあった。
が、今はもう火事で焼けてしまって、跡形もないのだ。
【ハク】
(……本当に誰の仕業だったのだろうか)
夜になると必ず思い出す。
考えても考えても、答えはでないはずなのに。
警察は犯人を探してくれているとは言っていたが、それも当てにはならない。
やっぱり、自分で探さなきゃならない…のか。
俺は、ふと大きなため息をついた。
【ハク】
(さて、……そろそろ寝るか)
慣れないとはいえ、いつまでもこうしていても仕方ない。
寝てしまおうとしたそのとき、リュウがこっちに向けて寝返りを打った。
【赤屋】
「ん……」
【ハク】
(うわ……)
どきんと、胸が鳴る。
俺がなかなか二人で寝るのに慣れることのできない理由のひとつが、ここにあった。
つい、あの日……
リュウと再会した翌日のことを思い出す。
リュウの部屋、このベッドで起き上がったその時、たまたま見てしまったリュウの裸体。
今はもちろんパジャマ代わりのTシャツは着ているが、きれいに筋肉がついていることが服の上からでも見てわかる。
【ハク】
(やっぱり、いい体してるよなぁ……)
彫刻のように引き締まった身体……厚い胸板に、均等に割れた腹筋。
そんな細部まで覚えていないはずなのに、俺はこの薄い布地の下を思い描かずにいられない。
そして、その身体にある無数の傷跡も……。
あの時俺には、リュウの傷が逞しく見えた。
【ハク】
(今思えば、仕事の関係でついた傷なのかな……)
相変わらず、リュウは仕事でどんなことをしているのかは俺に話してくれない。
俺には何をしたらあそこまで傷だらけになるのかはわからなかったが、何か危険なことをしているのはわかる。
【ハク】
(……リュウは毎日普通にしてるけど)
【ハク】
(もう、寝よう……)
俺は目を瞑り、リュウとは逆の方向に寝返りを打った。
とはいえ、生活の面では二人暮らしはなかなか快調だ。
リュウには何から何まで世話になっているので、せめてと思って家事は俺が進んでやるようになった。
会社をクビになったことはもうリュウも知っているから、掃除に洗濯、食事も俺が作る。
もともと結構長いこと一人暮らしだったし、自炊もしていた。
そりゃ店に出すような料理は無理だが、それなりに食えるものは作れると思っている。
【赤屋】
「ただいま……お、なんか良い匂いすんな」
【ハク】
「リュウ、おかえり」
今日も夕食を作っていると、リュウが帰ってきた。
ただいまとおかえりの挨拶もすっかり習慣になっている。
【ハク】
「そろそろ帰ってくると思って、夕飯作ってたんだ」
【ハク】
「卵が余ってたから、オムライスにしちゃったけど……」
【赤屋】
「うん、美味そうだ」
一人分の料理をするのも二人分の料理をするのも、手間はほとんど変わらない。
むしろ、俺の向かいでリュウが美味しそうに食べてくれるのが嬉しくて、一人で作っていたときより楽しいくらいだ。
【赤屋】
「いただきます」
【ハク】
「……いただきます」
行儀よく手を合わせるリュウに続いて、俺も手を合わせてからオムライスを頬張る。
……うん、悪くない味だ。
【赤屋】
「……美味い。オムライスも、このスープも」
【赤屋】
「ホント悪いな、いつもメシ作ってもらって」
【ハク】
「ううん。置いてもらってるのは俺だし……それに、一人で食べるよりも二人の方が美味いしさ」
【赤屋】
「そうだな。俺も、ハクが料理上手くて助かる」
そう言ってリュウは微笑む。
二人で過ごすこのひとときが、なんだかしっくりくる感じがして俺はすごく好きだった。
……リュウがヤクザだってことを再認識させられる出来事もあった。
二人で暮らし始めてから、俺はリュウは思ってたよりも早く帰って来てくれることに気付く。
もしかして俺と一緒に夕飯を食べるためかな、とか自惚れてみたりもしていた。
今思うと、同居がそれなりに上手くいってることでかなり浮かれていた。
ある日、俺はリュウが玄関に脱ぎ散らかしたジャケットをみつけた。
【ハク】
(リュウのやつ……こんなことしてると皺になるんだから)
【ハク】
(そりゃ、俺だってサラリーマンの頃はたまに面倒になって投げてたけどさ)
【ハク】
(ちゃんとハンガーに掛けないと……)
仕方ないやつだな、なんて。
そんなことを口には出さず思いながら持ち上げた瞬間、ゴトッと重たい音がしてジャケットの内ポケットから思いがけないものが転げ落ちる。
知らず背筋が寒くなり、血の気が引いてゆくのを感じた。
……ドラマや映画の中でしか見たことがなかったはずの、黒光りする銃身。
それは俺が生まれて初めて目にした本物の拳銃だった。
【ハク】
「う、うわああああ!!」
【赤屋】
「ハク、どうした……!」
【赤屋】
「っ……!」
思わず声をあげた俺にリュウが気付いた。
そして、俺の落とした拳銃と床にへたり込む俺の姿を見てリュウの顔色が変わる。
焦った様子で、そのまま何も言わずに拳銃を取り上げた。
【赤屋】
「……すまない。俺の不注意だ、忘れてくれ」
【ハク】
「…………」
リュウの言葉も、最初は意味を理解するのに少し時間がかかった。
