【桃島】
「……俺は、緑川さんのこと……」

【桃島】
「いや、これは今どうでもいい」

【桃島】
「はっきりしてるのは……」

【桃島】
「お前のことが大っ嫌いで、憎くて憎くてたまらないってことだよ！」

そう言ってナイフを持っているのにも構わず、香月さんに殴りかかる。

【香月】
「ぅわっ！」

身体が揺れた衝撃でナイフが音を立てて床に落ちる。

【桃島】
「……殺したいくらい、憎いんだよ」

そう言って桃島さんは落ちたナイフを拾い上げた。

【ハク】
「桃島さん、待って！」

【緑川】
「テル！」

俺たちの絶叫も届かず。

【香月】
「何すん……ふざけるなっ！」

【ハク】
「桃島さん！」

桃島さんの手にあるナイフを香月さんは力ずくで奪い取る。

【香月】
「なんで俺のことをそんな目で見るんだ！」

その勢いのまま、香月さんは手にあるナイフで桃島さんの脇腹を刺した。

【桃島】
「ぐっ……！」

【緑川】
「おい！！」

さすがの事態に動揺して緑川さんも声を上げる。

【香月】
「……あ……ぁ……！」

香月さんはガクガクと震えていて、血まみれのナイフは床に落ちた。

【ハク】
「桃島さんっ……！」

【緑川】
「救急車を呼べ！」

緑川さんの声が店中に響き渡った。

【香月】
「ど、どうしよう……俺……俺っ……！」

へなへなと座り込む香月さんと、脇腹をおさえて屈み込む桃島さん。

【ハク】
「大丈夫ですか、桃島さん！」

桃島さんの傷は浅いみたいで、座り込んでいるものの意識はしっかりしている。
ただ出血量はおびただしいもので、辺り一面が赤黒く染まっていく。

【緑川】
「止血できるか……」

【香月】
「モモ……モモ……」

震えながら、香月さんは桃島さんに近寄って行った。
桃島さんは香月さんを追い払うような動作をしたがほとんど動けず、香月さんは構わず桃島さんを抱きかかえる。