[本編] 桃島 光彦 編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【久々津】
「……そうか」
【緑川】
「……よろしくお願いします」
【久々津】
「確かにそれは、目に余るな」
―――その日以降、香月さんから俺に連絡が入ることはなくなった。
【緑川】
「ユキ、いい報告があるよ」
【ハク】
「何ですか?」
【緑川】
「お前のツケの分、あれ……チャラでいいってことになったんだ」
【緑川】
「黒字分で賄えるから、ナシにしろってオーナーから命令が下りてね」
【ハク】
「そうなんですか!?」
【ハク】
(オーナー……香月さんが……?)
【緑川】
「明日からも頑張って」
【ハク】
「はい、ありがとうございます!」
……後日、矢追が香月さんと一緒に歩いているところを見たという先輩ホストの話を聞いた。
どうやら、最初の指名から俺はハメられていたらしい。
ホストという裏社会の闇を垣間見たような気分だった―――。
【桃島】
「だから! 無理だって何度言えばわかるんスか!?」
めずらしく桃島さんの怒声が店内に響いた。
【ハク】
「桃島さん……どうしたんですかね?」
【緑川】
「さあ……テルが怒ることなんてそうそうないんだけど」
あの相談以来、緑川さんはなるべく俺に注意を払ってくれようとしていて、近くにいてもらうことが多くなった。
今日も、俺のそばにいたのは緑川さんだった。
【緑川】
「アイツは見た目こそキツいところあるけど、物腰は結構柔らかいから……」
【緑川】
「よっぽど迷惑な客に当たったか……」
【ハク】
「……どうしたんでしょうか……」
こういうことがあってすぐに他のホストが間に立ち入るのは相手を逆上させる危険がある。
耳を澄ませて桃島さんたちのやりとりをさらに聞いてみることにした。
【桃島】
「何考えてるんですか!」
【客】
「知らないわよ! だってこういうのって、女の子のためにあるサービスでしょ!?」
どうやらお客が桃島さんに無理を言っていることはわかる。
【客】
「信ッじらんない! なんなのこの店、二度と来ないわ!」
そう言ってお客が桃島さんにグラスの水をかけようとする―――!
【ハク】
(あれはまずいっ!)
とっさに俺は止めに入っていた。
【ハク】
「お客様!」
グラスを取り上げる。
お客の怒りが今度は俺の方に向いた。
【客】
「何よアンタ! アンタもアタシが悪いっていうの!? 何なのよこの店!」
【ハク】
「お待ちください、お客様」
【客】
「何よ、寄ってたかって……」
【ハク】
(あっ……!)
そこで俺はこの場を丸く収めるあることに気付いた。
【ハク】
(いける……!)
【客】
「……この男が悪いのよ!」
【ハク】
「そうではありません、お客様。ここで彼に水をかければ……ご覧ください」
俺は桃島さんの後ろ手にあるお客のブランドバッグを手の平で示した。
【客】
「あっ……」
【ハク】
「彼にもし不手際があったのでしたら謝罪いたします。ですが、ここでお水をかけますと」
【ハク】
「お客様の素敵なバッグが水浸しになってしまいます」
【客】
「……しょうがないわねっ!」
イライラした女性客は一万円札を数枚テーブルに叩きつけ、嫌味なほどにヒールの音を立てながら店を出て行った。
【ハク】
「……ふぅ」
【ハク】
(良かった……)
【緑川】
「どうしたの、テル?珍しいだろう、お前がお客とトラブルなんて」
【桃島】
「どーもこうも、フーゾクか何かと勘違いしてきたみたいだからあーなりました」
【ハク】
「なっ……」
【桃島】
「ベタベタ触ってきたんで、拒否したらあのザマですよ」
【緑川】
「……」
緑川さんは黙り込んでしまう。
悪いのは確実にお客だ。でも……。
【ハク】
「ま、まあ何事もなかったんですし……」
あのお客はもう二度と来ないけど、逆にお引き取り願えて良かったとも言える。
【緑川】
「テルはちょっと待ってて、それよりユキ」
【桃島】
「……ッ」
緑川さんの言い方に桃島さんが舌打ちしたのがわかる。
【ハク】
「何ですか?」
【緑川】
「さっきの対応は完璧だったよ」
【緑川】
「出て行ってしまったけれど、ユキの物言いのおかげで水をかけずに済んだ」
【ハク】
「はぁ……ありがとうございます」
【緑川】
「ああいうのは行動に出たあとの方がまずい」
【緑川】
「女性っていうのは起こした行動を自分の目で見て初めて自分の感情を知るんだ」
【緑川】
「怒鳴ったり、金切り声をあげている間は無意識。でも、水をかけたらもう歯止めが利かなくなる」
【ハク】
「そういうものですか?」
【緑川】
「ああ、自分の怒りを自覚してしまうからね。それを彼女のためにという言い回しで止めたのはさすがだよ」
【緑川】
「ユキの持ち味である素直な優しさから出た行動だよね。ホストとしてあれ以上はない」
【ハク】
「そんな……褒め過ぎです」
【桃島】
「……」
手放しで俺を褒めてくれる緑川さんと、対してだんまりを決め込む桃島さん。
「……そうか」
【緑川】
「……よろしくお願いします」
【久々津】
「確かにそれは、目に余るな」
―――その日以降、香月さんから俺に連絡が入ることはなくなった。
【緑川】
「ユキ、いい報告があるよ」
【ハク】
「何ですか?」
【緑川】
「お前のツケの分、あれ……チャラでいいってことになったんだ」
【緑川】
「黒字分で賄えるから、ナシにしろってオーナーから命令が下りてね」
【ハク】
「そうなんですか!?」
【ハク】
(オーナー……香月さんが……?)
【緑川】
「明日からも頑張って」
【ハク】
「はい、ありがとうございます!」
……後日、矢追が香月さんと一緒に歩いているところを見たという先輩ホストの話を聞いた。
どうやら、最初の指名から俺はハメられていたらしい。
ホストという裏社会の闇を垣間見たような気分だった―――。
【桃島】
「だから! 無理だって何度言えばわかるんスか!?」
めずらしく桃島さんの怒声が店内に響いた。
【ハク】
「桃島さん……どうしたんですかね?」
【緑川】
「さあ……テルが怒ることなんてそうそうないんだけど」
あの相談以来、緑川さんはなるべく俺に注意を払ってくれようとしていて、近くにいてもらうことが多くなった。
今日も、俺のそばにいたのは緑川さんだった。
【緑川】
「アイツは見た目こそキツいところあるけど、物腰は結構柔らかいから……」
【緑川】
「よっぽど迷惑な客に当たったか……」
【ハク】
「……どうしたんでしょうか……」
こういうことがあってすぐに他のホストが間に立ち入るのは相手を逆上させる危険がある。
耳を澄ませて桃島さんたちのやりとりをさらに聞いてみることにした。
【桃島】
「何考えてるんですか!」
【客】
「知らないわよ! だってこういうのって、女の子のためにあるサービスでしょ!?」
どうやらお客が桃島さんに無理を言っていることはわかる。
【客】
「信ッじらんない! なんなのこの店、二度と来ないわ!」
そう言ってお客が桃島さんにグラスの水をかけようとする―――!
【ハク】
(あれはまずいっ!)
とっさに俺は止めに入っていた。
【ハク】
「お客様!」
グラスを取り上げる。
お客の怒りが今度は俺の方に向いた。
【客】
「何よアンタ! アンタもアタシが悪いっていうの!? 何なのよこの店!」
【ハク】
「お待ちください、お客様」
【客】
「何よ、寄ってたかって……」
【ハク】
(あっ……!)
そこで俺はこの場を丸く収めるあることに気付いた。
【ハク】
(いける……!)
【客】
「……この男が悪いのよ!」
【ハク】
「そうではありません、お客様。ここで彼に水をかければ……ご覧ください」
俺は桃島さんの後ろ手にあるお客のブランドバッグを手の平で示した。
【客】
「あっ……」
【ハク】
「彼にもし不手際があったのでしたら謝罪いたします。ですが、ここでお水をかけますと」
【ハク】
「お客様の素敵なバッグが水浸しになってしまいます」
【客】
「……しょうがないわねっ!」
イライラした女性客は一万円札を数枚テーブルに叩きつけ、嫌味なほどにヒールの音を立てながら店を出て行った。
【ハク】
「……ふぅ」
【ハク】
(良かった……)
【緑川】
「どうしたの、テル?珍しいだろう、お前がお客とトラブルなんて」
【桃島】
「どーもこうも、フーゾクか何かと勘違いしてきたみたいだからあーなりました」
【ハク】
「なっ……」
【桃島】
「ベタベタ触ってきたんで、拒否したらあのザマですよ」
【緑川】
「……」
緑川さんは黙り込んでしまう。
悪いのは確実にお客だ。でも……。
【ハク】
「ま、まあ何事もなかったんですし……」
あのお客はもう二度と来ないけど、逆にお引き取り願えて良かったとも言える。
【緑川】
「テルはちょっと待ってて、それよりユキ」
【桃島】
「……ッ」
緑川さんの言い方に桃島さんが舌打ちしたのがわかる。
【ハク】
「何ですか?」
【緑川】
「さっきの対応は完璧だったよ」
【緑川】
「出て行ってしまったけれど、ユキの物言いのおかげで水をかけずに済んだ」
【ハク】
「はぁ……ありがとうございます」
【緑川】
「ああいうのは行動に出たあとの方がまずい」
【緑川】
「女性っていうのは起こした行動を自分の目で見て初めて自分の感情を知るんだ」
【緑川】
「怒鳴ったり、金切り声をあげている間は無意識。でも、水をかけたらもう歯止めが利かなくなる」
【ハク】
「そういうものですか?」
【緑川】
「ああ、自分の怒りを自覚してしまうからね。それを彼女のためにという言い回しで止めたのはさすがだよ」
【緑川】
「ユキの持ち味である素直な優しさから出た行動だよね。ホストとしてあれ以上はない」
【ハク】
「そんな……褒め過ぎです」
【桃島】
「……」
手放しで俺を褒めてくれる緑川さんと、対してだんまりを決め込む桃島さん。