[本編] 桃島 光彦 編
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……俺は、緑川さんに全てを相談しようと決めた。
(俺一人で悩んでいたって……きっと何も解決しない)
【ハク】
(緑川さんに桃島さんのことを相談するのは気が引けるけど……)
【ハク】
(でも……桃島さんだってずっとあのままでいいわけがない!)
―――閉店後、俺はグラスを磨いている緑川さんに近寄って行った。
【緑川】
「あぁ、お疲れ、ユキ」
【ハク】
「すみません、緑川さん……今日ってちょっと時間ありますか?」
【緑川】
「ん? なに、相談? 乗る乗る。何でも話して」
【ハク】
(……まさか、あんな話するなんて思ってないよな……)
他のホスト達がすっかり店を出て行ったあと、二人きりになって俺は全てを緑川さんに話した。
俺が……無理やり身体を触られたことも。
桃島さんが借金の肩代わりに香月さんの愛人をやっていることも。
―――俺の前で、香月さんを抱いたことも、全て。
【ハク】
「……と、いうわけなんです」
最初こそ、うん、うんと頷きながら話を聞いていた緑川さん。
けれど、後半の生々しい展開に話が及ぶと愕然として、……ある種の絶望のような表情を見せていた。
【緑川】
「何だよ、それ……」
【緑川】
「……ハハ、冗談にしちゃヘヴィじゃないか、ユキ」
【ハク】
「……冗談だったら……どんなに良かったことか……」
あれから……俺は自分のそれを見ることさえおぞましかった。
まさかあんな形でああいうことをされるとは思っていなかった。
【ハク】
(それに……桃島さん……)
……最中、俺は耳も塞がなかったし、目も閉じなかった。
そんなことをする気力は残っていなかった。
……でも、あまり覚えていない。
たぶん目も耳もあの事実を受け入れることを拒否していた。
あんなにショックなことを覚えていたくないからだと思う。
……衝撃を受けすぎて記憶も曖昧だ。
ただ、あの行為が、出来事があったということだけが現実として存在しているだけ。
【ハク】
「幻じゃないかって思うんです。……でも、本当で」
【緑川】
「……」
俺を避ける桃島さんは見ているだけで痛々しくて、苦しい。
【緑川】
「信じられない……」
【ハク】
「俺も、信じたくないんです」
【ハク】
「桃島さんも……あんな目に遭う必要なんかないのに!」
【緑川】
「……ユキ、俺を嗤ってくれ」
【緑川】
「俺……テルがそんな目に遭ってるなんて……考えたこともなかった」
【緑川】
「一言も相談しないで……」
【緑川】
「普段通りに笑って、接客して……」
【緑川】
「俺、店の中じゃ誰よりもテルの近くにいたはずなのにな」
【ハク】
「緑川さんは悪くないです!」
緑川さんがその秘密を知る由もないのは当然だ。
【ハク】
(だって……桃島さんが、このことを一番知られたくないのが、緑川さんのはずだから……)
【緑川】
「……俺が中途半端にしてたから、よけいテルを苦しめてたのかな」
【ハク】
「そんな! ……桃島さんも、秘密にしておいてほしいみたいだったので……」
【緑川】
「……ありがとう、ユキ」
【緑川】
「俺をかばってくれるんだね」
【緑川】
「……あいつらしいな。誰よりも脆いくせに人一倍強がって」
【ハク】
(確かに……桃島さんはきっと、そんなに強くない)
強かったら……あんな風にお金の代わりと言われてめちゃくちゃな関係を受け入れたりしない。
たぶん……ずっともう、ボロボロなんだ。
縋り方もきっとわからなくなっているくらい。
【ハク】
(桃島さん……)
【緑川】
「とりあえず、この件は俺がいったん預かる」
【緑川】
「オーナーがホストを買ってるなんて……それもテルだけじゃない」
【緑川】
「次はユキにだって手を出しているんだ」
【緑川】
「他にもこういう目に遭っているヤツがいるかもしれない」
【ハク】
「緑川さん、でも……」
【緑川】
「大丈夫。ユキも……テルも、これ以上苦しまない結果になるようにするよ」
【ハク】
「ありがとうございます!」
【緑川】
「大事な仲間だからな。お前たちは」
そう言って微笑みかける緑川さんの笑顔は、やはり王子様のようだった。
【ハク】
(……緑川さんは……)
【ハク】
(桃島さんの気持ちに応えてあげないのかな……?)
あんな風になっている桃島さんを救えるのは、……彼が恋する緑川さんただ一人だ。
【ハク】
(確かに男同士だけど、でも……)
俺だったらあんな風になっている桃島さんはほっとけないと思う。
【ハク】
(桃島さんにとっては、緑川さんじゃないと意味ないんだけど……)
そう考えたところで、チクリと胸が痛む。
【ハク】
(って! 何考えてんだ俺は!)
―――翌日。
【緑川】
「……テル、ちょっと」
【桃島】
「何ですか、緑川さん」
【緑川】
「……ここではできない話がある。ちょっと奥においで」
【桃島】
「何スか?」
緑川さんは、桃島さんを奥の休憩室に呼び出していた。
ふたりはずいぶんと長い間、店の方には戻ってこなかった。
【先輩ホスト】
「モモたち、戻ってこねえなー」
そんな先輩達の問いかけにこう答えた。
【ハク】
「何の話なんでしょう?」
【先輩ホスト】
「さぁ?」
その日、桃島さんは結局接客をしないで、ずっと奥の部屋にこもっていた。
帰りがけに、緑川さんが何やら只者ではない雰囲気の男と話をしている姿も見かけた。
(俺一人で悩んでいたって……きっと何も解決しない)
【ハク】
(緑川さんに桃島さんのことを相談するのは気が引けるけど……)
【ハク】
(でも……桃島さんだってずっとあのままでいいわけがない!)
―――閉店後、俺はグラスを磨いている緑川さんに近寄って行った。
【緑川】
「あぁ、お疲れ、ユキ」
【ハク】
「すみません、緑川さん……今日ってちょっと時間ありますか?」
【緑川】
「ん? なに、相談? 乗る乗る。何でも話して」
【ハク】
(……まさか、あんな話するなんて思ってないよな……)
他のホスト達がすっかり店を出て行ったあと、二人きりになって俺は全てを緑川さんに話した。
俺が……無理やり身体を触られたことも。
桃島さんが借金の肩代わりに香月さんの愛人をやっていることも。
―――俺の前で、香月さんを抱いたことも、全て。
【ハク】
「……と、いうわけなんです」
最初こそ、うん、うんと頷きながら話を聞いていた緑川さん。
けれど、後半の生々しい展開に話が及ぶと愕然として、……ある種の絶望のような表情を見せていた。
【緑川】
「何だよ、それ……」
【緑川】
「……ハハ、冗談にしちゃヘヴィじゃないか、ユキ」
【ハク】
「……冗談だったら……どんなに良かったことか……」
あれから……俺は自分のそれを見ることさえおぞましかった。
まさかあんな形でああいうことをされるとは思っていなかった。
【ハク】
(それに……桃島さん……)
……最中、俺は耳も塞がなかったし、目も閉じなかった。
そんなことをする気力は残っていなかった。
……でも、あまり覚えていない。
たぶん目も耳もあの事実を受け入れることを拒否していた。
あんなにショックなことを覚えていたくないからだと思う。
……衝撃を受けすぎて記憶も曖昧だ。
ただ、あの行為が、出来事があったということだけが現実として存在しているだけ。
【ハク】
「幻じゃないかって思うんです。……でも、本当で」
【緑川】
「……」
俺を避ける桃島さんは見ているだけで痛々しくて、苦しい。
【緑川】
「信じられない……」
【ハク】
「俺も、信じたくないんです」
【ハク】
「桃島さんも……あんな目に遭う必要なんかないのに!」
【緑川】
「……ユキ、俺を嗤ってくれ」
【緑川】
「俺……テルがそんな目に遭ってるなんて……考えたこともなかった」
【緑川】
「一言も相談しないで……」
【緑川】
「普段通りに笑って、接客して……」
【緑川】
「俺、店の中じゃ誰よりもテルの近くにいたはずなのにな」
【ハク】
「緑川さんは悪くないです!」
緑川さんがその秘密を知る由もないのは当然だ。
【ハク】
(だって……桃島さんが、このことを一番知られたくないのが、緑川さんのはずだから……)
【緑川】
「……俺が中途半端にしてたから、よけいテルを苦しめてたのかな」
【ハク】
「そんな! ……桃島さんも、秘密にしておいてほしいみたいだったので……」
【緑川】
「……ありがとう、ユキ」
【緑川】
「俺をかばってくれるんだね」
【緑川】
「……あいつらしいな。誰よりも脆いくせに人一倍強がって」
【ハク】
(確かに……桃島さんはきっと、そんなに強くない)
強かったら……あんな風にお金の代わりと言われてめちゃくちゃな関係を受け入れたりしない。
たぶん……ずっともう、ボロボロなんだ。
縋り方もきっとわからなくなっているくらい。
【ハク】
(桃島さん……)
【緑川】
「とりあえず、この件は俺がいったん預かる」
【緑川】
「オーナーがホストを買ってるなんて……それもテルだけじゃない」
【緑川】
「次はユキにだって手を出しているんだ」
【緑川】
「他にもこういう目に遭っているヤツがいるかもしれない」
【ハク】
「緑川さん、でも……」
【緑川】
「大丈夫。ユキも……テルも、これ以上苦しまない結果になるようにするよ」
【ハク】
「ありがとうございます!」
【緑川】
「大事な仲間だからな。お前たちは」
そう言って微笑みかける緑川さんの笑顔は、やはり王子様のようだった。
【ハク】
(……緑川さんは……)
【ハク】
(桃島さんの気持ちに応えてあげないのかな……?)
あんな風になっている桃島さんを救えるのは、……彼が恋する緑川さんただ一人だ。
【ハク】
(確かに男同士だけど、でも……)
俺だったらあんな風になっている桃島さんはほっとけないと思う。
【ハク】
(桃島さんにとっては、緑川さんじゃないと意味ないんだけど……)
そう考えたところで、チクリと胸が痛む。
【ハク】
(って! 何考えてんだ俺は!)
―――翌日。
【緑川】
「……テル、ちょっと」
【桃島】
「何ですか、緑川さん」
【緑川】
「……ここではできない話がある。ちょっと奥においで」
【桃島】
「何スか?」
緑川さんは、桃島さんを奥の休憩室に呼び出していた。
ふたりはずいぶんと長い間、店の方には戻ってこなかった。
【先輩ホスト】
「モモたち、戻ってこねえなー」
そんな先輩達の問いかけにこう答えた。
【ハク】
「何の話なんでしょう?」
【先輩ホスト】
「さぁ?」
その日、桃島さんは結局接客をしないで、ずっと奥の部屋にこもっていた。
帰りがけに、緑川さんが何やら只者ではない雰囲気の男と話をしている姿も見かけた。