[本編] 桃島 光彦 編
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―――そんな、ある日。
【ハク】
(あれ……めずらしい。緑川さんがお客に絡まれてる……)
【緑川】
「お願いしますって」
【客】
「だから、払わないとは言ってないでしょう?」
【緑川】
「決まりなので……楽しいお酒にもきまりは必要でしょう?」
【客】
「決まりを破るとは言ってないでしょ!」
【ハク】
「桃島さん!」
偶然通りかかった桃島さんを呼び止める。
【桃島】
「……ユキか。どうした?」
【ハク】
「あれ……どうしたんですか?」
俺は緑川さんとお客が揉めている方を向いて尋ねた。
【桃島】
「ああ、あれか。ツケにしてくれって頼まれてんだろ」
【ハク】
「ツケ?」
【桃島】
「そ。……次来たときにまとめて払いますーってヤツ」
【ハク】
「そういうの、ダメなんですか?」
テレビドラマなんかだとよくあるシーンのように思えるが……。
【桃島】
「完全にダメってわけじゃないけど、トラブル多いし、基本NG」
【桃島】
「俺も前に結構モメた。」
【桃島】
「それから絶対ツケにはしてない」
俺は桃島さんに向かってこう答えた。
【ハク】
「気をつけます」
緑川さんたちの方を見ていると、客はしぶしぶ当日払いに応じたようだった。
【緑川】
「……ふぅ」
【桃島】
「大変でしたね」
【緑川】
「まあね。……あ、ユキにも教えておくね」
【ハク】
「今桃島さんにもちょっと聞きました。ツケのこと……ですよね?」
【緑川】
「禁止ってわけじゃないけど……」
【緑川】
「気をつけなきゃいけないことのひとつだよ」
【緑川】
「ホストクラブっていう性質上、警察呼んでもらって取り立て……っていうのも難しいしね」
【緑川】
「ツケにするときは十分気を付けて」
【ハク】
「わかりました」
【ハク】
(たしかに……支払いも安くないもんな)
会社員のひと月分の給料ぐらいなら軽く一晩で飛んでしまう世界。
【ハク】
(まあ……そういう世界だから仕方ないけど)
ゼロの数が今まで生きてきた場所とひとつ、ひどい時はふたつ違う。
【ハク】
(お金のトラブル……気をつけないとな)
【ハク】
「あれ、矢追さん!」
【矢追】
「今日も来ちゃったワ~。ユキくん、空いてるんでしょ?」
【ハク】
「もちろんです!」
俺は矢追という男……というか、オネエ系のおじさま?をテーブルに案内する。
【桃島】
「おい、ユキ。今日も指名入ったのか?」
桃島さんに裏手で止められる。
【ハク】
「矢追さんですよ。いつも指名入れてくださるんです」
【桃島】
「お前に指名入れてるのって、あのマダムだけじゃねえのか?」
【ハク】
「矢追さんも最近よく入れてくださるんですよ」
【桃島】
「ふうん……」
【矢追】
「ユキく~ん? 今日はどのフルーツがいいー?」
【ハク】
「ちょっと待ってください!」
【ハク】
「すみません、桃島さん。俺、行かないと」
【桃島】
「……ああ」
【矢追】
「パイナップルはこの間食べたわよねぇ?」
【ハク】
「そうですねぇ、じゃあ今日はオレンジにしましょうか?」
【矢追】
「アラッ、遠慮しなくていいのよォ~」
……ホストクラブのフルーツというのは、実は一番値の張る商品でもある。
時価であり、サービス料などが散々上乗せされているため、これを頼んでもらえると売り上げにかなり貢献できる。
【桃島】
「……」
ひととおり酒を楽しんだあと、時計を確認した矢追さんが帰りの支度を始め、切り出した。
【矢追】
「じゃあユキくん、名残惜しいけど……おあいそ、お願いするわ」
【ハク】
「はいっ」
伝票を差し出し、現金をはさんでもらう。
【ハク】
「……6、7……はい、10万2500円、ちょうどいただきます」
【矢追】
「また空けといてよォ、ユキくんと飲むのが楽しみなんだからァ!」
【ハク】
「ありがとうございます!」
そう言って矢追さんは店を出ていった。
―――その日の、閉店前ミーティング。
【緑川】
「明日からランキングを入れ替えるから、それぞれ自分の課題を見つけて頑張っていくこと」
【ハク】
「はい!」
ランキングは人気や指名の数、そして貢献した売上額で決まる。
店の前にはランキング順に顔写真が貼られるシステムでもある。
【緑川】
「それから……ユキ。今回ナンバー5に入ったよ。大躍進だ、おめでとう」
【ハク】
「えっ、俺が!?」
【緑川】
「よく頑張ってるね。常連のお客様の心をしっかりつかんでいる証拠だよ」
【ハク】
「ありがとうございます!」
俺は圏外からの大躍進だ。
翌日から俺の写真は、ナンバー1の緑川さんやナンバー2の桃島さんに引けを取らない位置に飾られることになった。
―――二日後。
【ハク】
(あれ……めずらしい。緑川さんがお客に絡まれてる……)
【緑川】
「お願いしますって」
【客】
「だから、払わないとは言ってないでしょう?」
【緑川】
「決まりなので……楽しいお酒にもきまりは必要でしょう?」
【客】
「決まりを破るとは言ってないでしょ!」
【ハク】
「桃島さん!」
偶然通りかかった桃島さんを呼び止める。
【桃島】
「……ユキか。どうした?」
【ハク】
「あれ……どうしたんですか?」
俺は緑川さんとお客が揉めている方を向いて尋ねた。
【桃島】
「ああ、あれか。ツケにしてくれって頼まれてんだろ」
【ハク】
「ツケ?」
【桃島】
「そ。……次来たときにまとめて払いますーってヤツ」
【ハク】
「そういうの、ダメなんですか?」
テレビドラマなんかだとよくあるシーンのように思えるが……。
【桃島】
「完全にダメってわけじゃないけど、トラブル多いし、基本NG」
【桃島】
「俺も前に結構モメた。」
【桃島】
「それから絶対ツケにはしてない」
俺は桃島さんに向かってこう答えた。
【ハク】
「気をつけます」
緑川さんたちの方を見ていると、客はしぶしぶ当日払いに応じたようだった。
【緑川】
「……ふぅ」
【桃島】
「大変でしたね」
【緑川】
「まあね。……あ、ユキにも教えておくね」
【ハク】
「今桃島さんにもちょっと聞きました。ツケのこと……ですよね?」
【緑川】
「禁止ってわけじゃないけど……」
【緑川】
「気をつけなきゃいけないことのひとつだよ」
【緑川】
「ホストクラブっていう性質上、警察呼んでもらって取り立て……っていうのも難しいしね」
【緑川】
「ツケにするときは十分気を付けて」
【ハク】
「わかりました」
【ハク】
(たしかに……支払いも安くないもんな)
会社員のひと月分の給料ぐらいなら軽く一晩で飛んでしまう世界。
【ハク】
(まあ……そういう世界だから仕方ないけど)
ゼロの数が今まで生きてきた場所とひとつ、ひどい時はふたつ違う。
【ハク】
(お金のトラブル……気をつけないとな)
【ハク】
「あれ、矢追さん!」
【矢追】
「今日も来ちゃったワ~。ユキくん、空いてるんでしょ?」
【ハク】
「もちろんです!」
俺は矢追という男……というか、オネエ系のおじさま?をテーブルに案内する。
【桃島】
「おい、ユキ。今日も指名入ったのか?」
桃島さんに裏手で止められる。
【ハク】
「矢追さんですよ。いつも指名入れてくださるんです」
【桃島】
「お前に指名入れてるのって、あのマダムだけじゃねえのか?」
【ハク】
「矢追さんも最近よく入れてくださるんですよ」
【桃島】
「ふうん……」
【矢追】
「ユキく~ん? 今日はどのフルーツがいいー?」
【ハク】
「ちょっと待ってください!」
【ハク】
「すみません、桃島さん。俺、行かないと」
【桃島】
「……ああ」
【矢追】
「パイナップルはこの間食べたわよねぇ?」
【ハク】
「そうですねぇ、じゃあ今日はオレンジにしましょうか?」
【矢追】
「アラッ、遠慮しなくていいのよォ~」
……ホストクラブのフルーツというのは、実は一番値の張る商品でもある。
時価であり、サービス料などが散々上乗せされているため、これを頼んでもらえると売り上げにかなり貢献できる。
【桃島】
「……」
ひととおり酒を楽しんだあと、時計を確認した矢追さんが帰りの支度を始め、切り出した。
【矢追】
「じゃあユキくん、名残惜しいけど……おあいそ、お願いするわ」
【ハク】
「はいっ」
伝票を差し出し、現金をはさんでもらう。
【ハク】
「……6、7……はい、10万2500円、ちょうどいただきます」
【矢追】
「また空けといてよォ、ユキくんと飲むのが楽しみなんだからァ!」
【ハク】
「ありがとうございます!」
そう言って矢追さんは店を出ていった。
―――その日の、閉店前ミーティング。
【緑川】
「明日からランキングを入れ替えるから、それぞれ自分の課題を見つけて頑張っていくこと」
【ハク】
「はい!」
ランキングは人気や指名の数、そして貢献した売上額で決まる。
店の前にはランキング順に顔写真が貼られるシステムでもある。
【緑川】
「それから……ユキ。今回ナンバー5に入ったよ。大躍進だ、おめでとう」
【ハク】
「えっ、俺が!?」
【緑川】
「よく頑張ってるね。常連のお客様の心をしっかりつかんでいる証拠だよ」
【ハク】
「ありがとうございます!」
俺は圏外からの大躍進だ。
翌日から俺の写真は、ナンバー1の緑川さんやナンバー2の桃島さんに引けを取らない位置に飾られることになった。
―――二日後。