芹沢 高士朗
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三宮エリサを嫌う男子生徒なんて、居ない。
仮に快く思っていなかったとしても、実際に彼女と接し、彼女に声をかけられれば、好意を持たざるを得ない。
愛らしい容姿は勿論、澄んだ声に、利発な視線、それでいて、どこか甘えたような笑顔。
子供じみたところのない、大人びた態度と一緒に、無邪気さが混在しているのだ。
芹沢高士朗は、これまで誰かに特別な好意を持った事のない少年だった。
だから、彼女のことも「接し易そうな子だな」ぐらいにしか思っていなかったのである。
何故、特別な感情を抱くようになったかといえば、彼女の読書感想文を読んだからだ。
中学一年生の頃、クラス全員の読書感想文をまとめる、という、生徒にとっては苦痛でしかない企画が行われた。
それも、同じ本に対しての感想、なのである。
エリサは、数学は得意であったが、国語は大の苦手科目だった。
テストの点数はなんとか平均以上をキープしていたが……自由に作成しなければならない、読書感想文は特別嫌いだった。
そんな彼女の読書感想文は……何と言うか、どこかシュールだった。
主人公の行動を無駄であった、と実証する為のデータを提示していたり、
ヒロインの感情について、効率化をはかるためのアドバイスをしたり…
芹沢のソレとは180度異なっていたのだ。
読書感想文等、真面目に読む人間は少ないのか、そんなエリサの文章を話題にする男子生徒は他にはいなかったが
芹沢はその頃からエリサが気になるようになった。

或る時、少しだけ近づいてみたくなり、感想文の事を話題にしてみると、顔を真っ赤にするエリサ。
「俺には絶対書けないから、凄いなって…思って」
「…………それ……本気で言ってるの」
「勿論!今度、違う本の感想も教えて欲しい」
「私………、小説とか…物語って、読むの苦手、なの。だから知らないわ」
やっぱり苦手なのか…芹沢はエリサの文章を思い出し、思わず笑ってしまいそうになるのをこらえる。
それでも、あのリアクションを見る限り、他人の真似をしたり、誰か別の人に手伝って貰ったりしないで自分で書き上げているのだ。
芹沢はそんなところにも好感を持った。
「……芹沢は、どーいう本が好きなのよ。教えて」
「え…俺は、…小説とか、好きだからなあ…エリサちゃんが苦手だと思う」
「ふーん……。どうしてああいうのが面白いのか……解らないのよね」
そんなエリサが持っていた本は、パズル問題集だった。
そうか、こういう本が好きなのか。
学校の帰り、芹沢も同じものを買ってみたが、酷く難解で、逆にどうしてこれを面白いと思えるのか疑問だった。
どうやら、大人向にどこぞの大学教授が作ったものらしい。
この頃から、芹沢はすっかりエリサの事が気になってたまらなくなっていた。
同時に…それは、自惚れでなければエリサも同じかもしれない、と思うようになっていく。

サッカー部のキャプテンを務めている芹沢は、ある日一人で朝練をしていた。
が、よろけた拍子にフェンスにぶつかり、腿から血が流れてしまったのだ。
すると…、
「…芹沢!大丈夫?!」
偶然グラウンドを横切ったエリサが駆けよってきてくれたのだ。
「エリサちゃん…」
「待ってて、手当してあげるわ」
「ええ?!」
エリサはてきぱきとハンカチを濡らし、血をぬぐい…グラウンドに常備されている救急道具をもってきた。
(えっエリサちゃんの手が……俺の……そ、そんなに撫でられたら……!)
その時は、エリサの手が自身の体に触れる驚きで気が付かなかったが、
あの時間、グラウンドを偶然に横切る事など有り得ない訳で……
つまり……
(俺の事……見てた、のかなあ……)
想像を巡らせると、ドキドキと心臓が早鳴る。
心臓だけでなく、体のどこもかしこも強く脈打って、熱い。
熱は欲望を孕んでいたが、それを芹沢が慰める事はなかった。
ただ、自分ではコントロールしきれない熱情に胸をときめかせ、眠れない夜を過ごすのだ。

そんな風に、ただ、想像だけで甘酸っぱい気持ちになっていた日々のことが、今は懐かしく思われる。
―三宮の屋敷へ足を踏み入れてからの変化は……そう簡単に受け入れられるものではなかった。
エリサと、三宮万里に跪き、愛を請い、罰とも褒美ともつかない痛みを甘受する。
肉体的な悦びと感情面での驚きがうまくリンクしない。
けれど、アンナコトがあった後でも、愛らしく想えて叶わない。
寧ろ、一層愛しさが募ってしまった気がする。
実の兄に寄せた想いを捨てる事も忘れる事も出来ない。
そんな事を実感する出来事だったのか、元々病弱なのか学校を休みがちだったエリサだが―一層、具合が悪そうな様子で登校してくるようになった。
一歩も歩けないで、痛みに耐える彼女を、守りたい。
あんな扱いを受けて、馬鹿げた事を…とも思うのに、
その使命感は消える事なく、今も当たり前に、自分の中心に坐している。
何から彼女を守る必要があるのか―
屋敷で彼女や、万里を観察しているうちに
以前ならば解らなかった事が輪郭をなしてくる。
万里は、エリサとの会話を避けているように見える。
妹が、兄に恋をしている異常な状態を抜け出すためなのかもしれない。
けれど万里もエリサを手放す事が怖いのだろう。
自分の知らないところで、自分の知らない感覚で、自分の知らない場所へ歩みだしてしまう事が
芹沢は、自分も妹が居る為に、全く解らない感情ではなかった。
しかし、家族間で持つ愛情にしては、それは切迫し過ぎており、違和感を覚えずにはいられない。
その違和感の正体は、孤独だった。
エリサと万里に流れる孤独の奔流―
それらから、エリサを守らなければならないのかもしれなかった。
そんな事を、芹沢が明確に理解出来ようもない。
ただ、本能的に想うのだ。そうした違和感から、守る必要があるのだ、と。

通学路―
「エリサちゃん」
芹沢は、連れ立っていた女性徒と分かれて一人歩きだしたエリサに声をかける。
「……なに」
「一緒に帰ろう」
「ふん。あんた、今私のこと尾けてたの?」
「あ、あー…いや、尾けてた訳じゃないけど、見送ってるうちにここまで」
「尾けてた、っていうのよ!そういうの!」
「ごめん」
「何かあんた…どんどん図々しくなってない?」
「い、痛いよエリサちゃん!」
エリサは、嫌悪感以外の色を浮かべて、芹沢の脛を軽く蹴るのだった。
fin
仮に快く思っていなかったとしても、実際に彼女と接し、彼女に声をかけられれば、好意を持たざるを得ない。
愛らしい容姿は勿論、澄んだ声に、利発な視線、それでいて、どこか甘えたような笑顔。
子供じみたところのない、大人びた態度と一緒に、無邪気さが混在しているのだ。
芹沢高士朗は、これまで誰かに特別な好意を持った事のない少年だった。
だから、彼女のことも「接し易そうな子だな」ぐらいにしか思っていなかったのである。
何故、特別な感情を抱くようになったかといえば、彼女の読書感想文を読んだからだ。
中学一年生の頃、クラス全員の読書感想文をまとめる、という、生徒にとっては苦痛でしかない企画が行われた。
それも、同じ本に対しての感想、なのである。
エリサは、数学は得意であったが、国語は大の苦手科目だった。
テストの点数はなんとか平均以上をキープしていたが……自由に作成しなければならない、読書感想文は特別嫌いだった。
そんな彼女の読書感想文は……何と言うか、どこかシュールだった。
主人公の行動を無駄であった、と実証する為のデータを提示していたり、
ヒロインの感情について、効率化をはかるためのアドバイスをしたり…
芹沢のソレとは180度異なっていたのだ。
読書感想文等、真面目に読む人間は少ないのか、そんなエリサの文章を話題にする男子生徒は他にはいなかったが
芹沢はその頃からエリサが気になるようになった。

或る時、少しだけ近づいてみたくなり、感想文の事を話題にしてみると、顔を真っ赤にするエリサ。
「俺には絶対書けないから、凄いなって…思って」
「…………それ……本気で言ってるの」
「勿論!今度、違う本の感想も教えて欲しい」
「私………、小説とか…物語って、読むの苦手、なの。だから知らないわ」
やっぱり苦手なのか…芹沢はエリサの文章を思い出し、思わず笑ってしまいそうになるのをこらえる。
それでも、あのリアクションを見る限り、他人の真似をしたり、誰か別の人に手伝って貰ったりしないで自分で書き上げているのだ。
芹沢はそんなところにも好感を持った。
「……芹沢は、どーいう本が好きなのよ。教えて」
「え…俺は、…小説とか、好きだからなあ…エリサちゃんが苦手だと思う」
「ふーん……。どうしてああいうのが面白いのか……解らないのよね」
そんなエリサが持っていた本は、パズル問題集だった。
そうか、こういう本が好きなのか。
学校の帰り、芹沢も同じものを買ってみたが、酷く難解で、逆にどうしてこれを面白いと思えるのか疑問だった。
どうやら、大人向にどこぞの大学教授が作ったものらしい。
この頃から、芹沢はすっかりエリサの事が気になってたまらなくなっていた。
同時に…それは、自惚れでなければエリサも同じかもしれない、と思うようになっていく。

サッカー部のキャプテンを務めている芹沢は、ある日一人で朝練をしていた。
が、よろけた拍子にフェンスにぶつかり、腿から血が流れてしまったのだ。
すると…、
「…芹沢!大丈夫?!」
偶然グラウンドを横切ったエリサが駆けよってきてくれたのだ。
「エリサちゃん…」
「待ってて、手当してあげるわ」
「ええ?!」
エリサはてきぱきとハンカチを濡らし、血をぬぐい…グラウンドに常備されている救急道具をもってきた。
(えっエリサちゃんの手が……俺の……そ、そんなに撫でられたら……!)
その時は、エリサの手が自身の体に触れる驚きで気が付かなかったが、
あの時間、グラウンドを偶然に横切る事など有り得ない訳で……
つまり……
(俺の事……見てた、のかなあ……)
想像を巡らせると、ドキドキと心臓が早鳴る。
心臓だけでなく、体のどこもかしこも強く脈打って、熱い。
熱は欲望を孕んでいたが、それを芹沢が慰める事はなかった。
ただ、自分ではコントロールしきれない熱情に胸をときめかせ、眠れない夜を過ごすのだ。

そんな風に、ただ、想像だけで甘酸っぱい気持ちになっていた日々のことが、今は懐かしく思われる。
―三宮の屋敷へ足を踏み入れてからの変化は……そう簡単に受け入れられるものではなかった。
エリサと、三宮万里に跪き、愛を請い、罰とも褒美ともつかない痛みを甘受する。
肉体的な悦びと感情面での驚きがうまくリンクしない。
けれど、アンナコトがあった後でも、愛らしく想えて叶わない。
寧ろ、一層愛しさが募ってしまった気がする。
実の兄に寄せた想いを捨てる事も忘れる事も出来ない。
そんな事を実感する出来事だったのか、元々病弱なのか学校を休みがちだったエリサだが―一層、具合が悪そうな様子で登校してくるようになった。
一歩も歩けないで、痛みに耐える彼女を、守りたい。
あんな扱いを受けて、馬鹿げた事を…とも思うのに、
その使命感は消える事なく、今も当たり前に、自分の中心に坐している。
何から彼女を守る必要があるのか―
屋敷で彼女や、万里を観察しているうちに
以前ならば解らなかった事が輪郭をなしてくる。
万里は、エリサとの会話を避けているように見える。
妹が、兄に恋をしている異常な状態を抜け出すためなのかもしれない。
けれど万里もエリサを手放す事が怖いのだろう。
自分の知らないところで、自分の知らない感覚で、自分の知らない場所へ歩みだしてしまう事が
芹沢は、自分も妹が居る為に、全く解らない感情ではなかった。
しかし、家族間で持つ愛情にしては、それは切迫し過ぎており、違和感を覚えずにはいられない。
その違和感の正体は、孤独だった。
エリサと万里に流れる孤独の奔流―
それらから、エリサを守らなければならないのかもしれなかった。
そんな事を、芹沢が明確に理解出来ようもない。
ただ、本能的に想うのだ。そうした違和感から、守る必要があるのだ、と。

通学路―
「エリサちゃん」
芹沢は、連れ立っていた女性徒と分かれて一人歩きだしたエリサに声をかける。
「……なに」
「一緒に帰ろう」
「ふん。あんた、今私のこと尾けてたの?」
「あ、あー…いや、尾けてた訳じゃないけど、見送ってるうちにここまで」
「尾けてた、っていうのよ!そういうの!」
「ごめん」
「何かあんた…どんどん図々しくなってない?」
「い、痛いよエリサちゃん!」
エリサは、嫌悪感以外の色を浮かべて、芹沢の脛を軽く蹴るのだった。
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