clap
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「***ーーーっ!!
今日はなんの日だっ!?」
「ハッピーバレンタイン!!」
「トリック オア チョコレート!!」
「やっかましいなぁもう! 待つことを知らんのか!!」
チョコレートの魔法
粗熱が取れた頃合いを見計らったかのようにバータ、ジース、リクームがキッチンに転がり込んできたのでラッピングは断念。
遅れてやってきた隊長とグルドにも見つかってしまった。
グルドは興味がなさそうなフリをして、けど そわそわしながら私に尋ねた。
「それはなんだ? ケーキか?」
「ブッブー! これはフォンダンショコラです!」
「『フォンダンショコラ』?」
仲良し五人は息もぴったり、口を揃えてこう言った。
練習でもしてるんじゃないかってくらいぴったりすぎてなんか怖い。
「その『フォンダンショコラ』とやらは小さなケーキとなにが違うんだ」
ううむ、と顎に手をやって しげしげと眺める隊長。
隊員たちも私の後ろであーだこーだと議論している。
「色はチョコで間違いなさそうだ」
「しかし『フォンダンショコラ』という偉そうな名前からしてなにかあるんじゃねぇのか?」
「『フォンダン』はまあ置いとくとして、『ショコラ』ってのはなんだ?
『チョコ』の従兄弟かなにかか?」
「いやいや……よっ『しょこら』ー!
……的な なにかじゃ……」
ひとつずつお皿に乗せて、スプーンを準備して……ってあたりで議論は変な方向に白熱してきた。
真剣にくだらないことを話し合ってる様子が面白いのでしばらく聞いてみることにする。
「掛け声が必要ってことは……見かけに反して固いっつーこと、っすかね? 隊長」
「噛み砕く力が必要ってことだろうか」
「いやいや、そうじゃなくって重いってことじゃないすか?」
「胃もたれする重さってことか!」
「そっちの『重さ』じゃねーよ!
例えば あんなちっこいのに何千キロある、とか?」
残念ながらそっちの重さでもないわ。
大喜利になってしまう前にシンキングタイムを終了させなきゃ。
いつまで経っても食べてもらえないし。
「はいはいストップストップ!!
私がそんなものを あなたたちに食べさせるわけないでしょ!?」
「せっかくこれから楽しい大喜利の時間が」
「もういいからとにかく食べてみてよ! 美味しいんだから!」
自分で言うなよなあ、とかなんとか言いながらも おとなしくテーブルを囲む五人。
ひとり残らず甘いものに目がない彼らは馴染みのない言葉に怯えていたようだったが、粉砂糖をふりかけてバニラアイスを添えたフォンダンショコラを目の前に置いてやると歓声をあげた。
……テンション上がりすぎ。
「おお、むさ苦しい男所帯に舞い降りたオアシス!!」
「めちゃくちゃウマそうじゃねーか!」
「『ウマそう』じゃなくて本当に美味しいんだってば!」
「いただきまーす!」
「あ、待って……!」
私の制止も聞かずに五人はスプーンをぶっ刺して、一口で食べてしまった。
いや、たぶんある程度冷めてるだろうし、まだいっぱい用意してるから別にいいんだけど……
「!?」
よっつの目を見開いて、グルドが一時停止する。
あんたの能力は停止『させる』方じゃなかったのかい?
……けど、みんな気づいてくれたみたいだった。
「なんだこれは!? 中からなにか出てきたぞ!!」
「チョコレートだ! チョコレートが溶け出してきた!!
もしかして失敗したのか!?」
わいわいと騒ぎ出す隊長とジース。
失敗なんて失礼な。
「馬鹿め! それがこの『フォンダンショコラ』の真骨頂なのだよ!
チョコレートソースを中に閉じ込めてやったのだ!!」
胸を張ってそう言うと、みんなは珍しく私を尊敬の眼差しで見つめてきた。
「うおおすげえ! こんなの食ったことねえぞ!!」
「***ってば見かけによらず そんなことできんのかよ!!」
「ひとこと余計なんだけど!」
「***ちゃんっ!! なあコレ、どーやって作ったんだ!?」
きらきらと目を輝かせるリクームに にやりと笑って、
「ふふーん……私、実は魔法使いなんだよねー」
……と、答えてやる。
普段ボケ合戦を繰り広げているこの連中から どんなツッコミが入るのやら。
「……や」
や?
「やっぱりっ!!」
突っ込めよ。
「いや、薄々そんな気はしてたんだ!
てんで大したことねーのにフリーザ様のお気に入りになっちまったりなあ」
腕を組んでうんうんと頷くジース。
余計なことしか言ってないんだけど。
「こんなウマいんだったらもっとゆっくり食えばよかったぜ」
余韻に浸っているのか、バータは頬杖をついて うっとりと虚空を見つめる。
その言葉に何度も頷く隊長。
「……この私がバレンタインをこれで終わらせるとでも思ったか?」
「ま、まさか……***ッ!?
まだ隠し持っているんじゃ……!!」
おお、珍しくグルドが乗ってきた。
「ピンポーン! 今度は大正解!
まだいっぱいあるから食べてね!」
「うおおおおおお!!
***最高ーーー!!!」
うーん、こんな喜んでくれるなら作ってよかった。
「こんな料理上手な***ちゃんを嫁にもらえるなんて俺は幸せだなー!」
「え!?」
突然。
本当に突然、それがさも当然かのように満面の笑みでリクームは言う。
「馬鹿、お前みたいなちゃらんぽらんに***をやれるか!
***はイケメンである俺の嫁に来るべきだ」
「ほざけ、***は魔法使いだ。
超能力者の俺様となら きっと素晴らしい子どもが生まれる!」
「お前らみてーなチビよりタッパもあってスタイルのいいこのバータ様の方がいいに決まってんだろ!」
「いや、隊長である この俺にこそ***を幸せにする義務が」
ぎゃいぎゃい騒ぎ出す五人。
本人そっちのけで なんてこと言いだすんだ。
みんな冗談きついぜ。
……と思ったけど、冗談の雰囲気でもない。
面倒ごとに巻き込まれる前に こっそり退散するとしよう……
気配を消してそろりと食堂を後にする。
が。
「***! どこへ行く!?」
「お前に決めてもらわなきゃバレンタインは終わんねーだろ!」
まずい、見つかった。
「ば、バレンタインはもうおしまい!
私はこれにて失敬する! さらば!!」
「ちょっと待て ***!!
逃げるなら誰と結婚するか決めてから」
「待たぬ! 決めぬ!!」
私は全速力で基地を飛び出した。
ちらりと背後に視線をやると追いかけてくる五人と、引き気味に見守る他の兵士たちが見える。
見てるだけじゃなくて
「誰かこいつらを止めてくれーーー!」
「あいつ意外と逃げ足早えぞ!!
グルド! ***ちょっと止めろ!!」
「待て! 未来の花嫁ーーー!!!」
『この始末☆
はてさてこの先どうなりますことやら……』
.