clap
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
暑い。
肌を流れ落ちる汗が鬱陶しい。
地面に落ちて溶けてしまったアイスクリームみたいに床でぐったりしていると、蝉しぐれが追い打ちをかけるように降ってきた。
くらくらしちゃう
うつ伏せに寝返りを打ってみる。
すでに私の体温を吸収したフローリングはぬるくなってしまって どうにも居心地が悪い。
体をよじって少し横に移動する。
ああ、気持ちいい。
と、突然上から伸びてきた腕が、お腹のあたりにぐいっと入り込んできた。
「つかまえたぞ、可愛らしいヘビめ」
持ち上げられたままリビングに連れて行かれてソファの上に降ろされる。
どっかりと隣に腰を下ろしたセルに絡みつく。
「ねえセル暑い、なんとかしてよ」
「あとで神になんとかしろと言っておいてやろう」
子どもをあやすように頭をなでてセルは言った。
「あとでじゃダメなの。今、暑いんだもん。暑すぎてくらくらしちゃう。
今、神様に電話して!」
ちょっとわがままを言ってみる。
意外とこれが効くんだ、セルにだって。
「ふむ、仕方がないな……ならば直接『神殿』まで行くとするか」
?
『シンデン』……なにそれ涼しいの?
なんて考えてる間に視界がブラックアウトした。
「わっ!!」
パッと風景が変わって広い場所に出た。
突然広場に放り出されたせいで転げそうになったけど、セルが支えてくれたので なんとか回避。
体制を立て直したところで、目の前にいる人たちに気がついた。
驚いて固まった緑の……ヒト?と緑の子ども。
そして黒いヒト?
突然すぎて何が何だかわからない。
「ここが『神殿』だ。
……久しぶりだな、ピッコロ」
あ、この緑のヒトがピッコロなんだ。
黒いヒトが一歩、緑の子どもを守るように前に出た。
「……貴様、なにしにここへ来た」
「彼女が暑い暑いと駄々をこねるものでな、ここへ涼みに来たのだ」
言われてピッコロは私に視線を向けたので、なんとなく会釈をしておいた。
「あぁ、紹介が遅れたな。彼女はわたしの『妻』だ」
「はじめまして……***っていいます」
少しの沈黙。
「はぁ!?」
「えっ!?」
「!!」
の後に三人は素っ頓狂な声を上げた。
再び固まる彼らをよそに、セルはこちらに向き直った。
「***、まだ暑いか」
「ううん、大丈夫だけど……ここ、って神様のおうち?
私たちがいても大丈夫なのかな?」
「なにも言わんだろう。***の気の済むまでいればいい」
そんな自分の家みたいに……
さっきのピッコロさんたちは こっちを見てなにか話し合ってるみたいだし、目下には街並みやら森やらが広がってるし……
……怖いし落ち着かない。
「セル、やっぱり私、暑くても家がいい。帰ろう?」
「なんだ、もう満足したのか?」
「まさかセルが本当に神様と知り合いだったなんて思わなかったから、冗談だったの」
そうか、と ひとことだけ言って私を抱え上げたセル。
「邪魔したな」
彼はピッコロさんたちにそう告げて、神殿のはしっこをトンッと蹴って『下界』へ飛び降りた。
不思議そうに私たちに視線を送る三人の顔が遠ざかる。
そんなとき、耳元で声が聞こえた。
「本当のことを言うと、***を奴らに見せびらかしてやりたかっただけだ」
!!
「み、みみみみ見せびらかすだなんてそんな大それたもんじゃ……!」
「わたしにとっては***は『見せびらかしたい大切な宝物』さ」
その言葉だけで脳まで溶かされてしまいそう。
アイスクリームがどうのと呟いていた呑気なセルのセリフも、まるで頭に入ってこなかった。
.