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いつもの鍛錬の場であるこの荒野も、陽が昇り切れば地面への照り返しで暑いほどに気温が上がっている。
この間まで冷たい風が吹いていたのが嘘のようだ。
じっとりと身体に滲む汗に不快感を感じながら地面を蹴る。
浮き上がって柔らかい空気を裂いて、眼下に地上を見ながら飛んでいると心地がいい。
寒いからと外出を嫌がっていた***にも丁度好いだろう。
いい季節になったものだ。
君の勢いは凄まじい
「おい***、帰ったぞ」
玄関ドアを後ろ手に閉める。
声をかけても返事はない。
いつもなら犬のように駆け寄ってきて抱きついてくるはずなのに、気配すら感じない。
「……チッ」
そうだった。
あいつは明後日まで両親の家へ行くと言って出かけて行ったのだった。
わたしとしたことが すっかり忘れていた。
「***がいないと この家も静かなものだ」
我が家はこんなにも広かっただろうか。
「ふむ……少し寂しいな」
……待て、わたしは今 何と言った?
『寂しい』だと?
なぜそう感じるのだ。
***と出会う前までは ひとりだったじゃないか。
思案に暮れつつテーブルに目を移すとメモが目に入った。
『大好きなセルへ♡♡♡
明後日には帰るからおとなしく待っててね!
セルはさみしがり屋だけど…私がいないからって浮気したら許さないから!!(笑)』
誰がさみしがり屋だ。
……しかしいつの間にこんなものを書いていたのか。
「浮気など……」
右下に書かれた下手くそな、怒った***の自画像に思わず笑みがこぼれる。
眺めていると自分でも馬鹿じゃないかと思うが……***の顔が浮かんで、紙切れすらも愛おしく感じる。
わたしは変わってしまったのだろうか。
***の優しさに触れて、二人でいることの甘さを教えられて。
いつの間に『孤高』は『孤独』に変わってしまったのだろう。
まるで身体が欠けてしまった気分だ。
わたしらしくないことはわかっている。
だが……耐えられん。
「……二日早いが、連れて帰るか」
無理やり連れて帰れば***はきっと ぎゃあぎゃあと喚くだろう。
けれど仕方がない。
お前が悪いのだ。
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