short
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
雨は嫌いだ。
いつも賑やかな外界の音を全部飲み込んでしまう。
静かな空間にただ時計の音だけが響いて、時間だけが過ぎていくような気がする。
雨に忍んで
雨粒が窓を伝う。
くっついてひとつになる。
速度を増して、落ちてった。
「よほど雨がお好きなんですねぇ、***さん」
ぼーっと雨粒を眺めてたら、突然声をかけられた。
隣には、フリーザ様。
「なっ……え……え!?」
ここは彼の基地とは程遠い、私の家だ。
それに、お供もつけずに雨の中ひとりでこんなところに来るなんて……
なにか重大なお話でも……?
「驚かせてしまいましたか、すみませんね」
フリーザ様は特に悪びれる様子もなく、むしろ楽しそうに笑っていた。
まるでドッキリ大成功、とでも言いたげに。
「あ!そ、そうだ。お茶出しますっ」
せっかく上司、というかボスが突然とはいえ来てくれたのに、ぼさっとしてるなんて。私の馬鹿。
「かまいませんよ、すぐに帰ります」
「へ……?」
再び呆ける私を見たあと、フリーザ様は窓の外に目をやった。
「雨は嫌いなのであまり出かけたくはないのですが……音を吸い込んでしまうので」
つう、と落ちていく雨をなぞって。
「お忍びで来るにはちょうどよかったんです」
彼はいたずらっぽく笑った。
初めて見た、こんな笑顔。
いつも澄ましたような顔をしてるから。
「でも、なんでこんなところまで……」
「***さんに会うために決まってるじゃないですか」
決まってるじゃないですか、と言われましても。
なぜ私に会うために?
わざわざお休みの日に家まで来てくれるなんて??
軽くパニック状態になる私を見て、嬉しそうにフリーザ様は私の耳元に顔を近づけて。
「……だから、コルド大王には内緒にしていてくださいね」
ちゅ
「ひあっ!」
囁いたあと私の耳に軽く口付けて、フリーザ様は機嫌よさげに出て行ってしまった。
……な、なんだったんだ、一体……
雨はいよいよ、土砂降りになってきた。
そんな中をびしょ濡れで飛んでいくフリーザ様。
あぁ、それでもやっぱり……
雨は嫌いだ。
.