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毎度毎度思ってたんだけど、セルってお風呂に入る必要あるの?
私は今、セルに抱きかかえられる形で湯船に浸かっている。
かぽーん、という音がよく似合うシュールな光景だと思う。
「……これ、入れていい?」
私はまだ濡れていない左手でバスボムを持っていた。
本当はあんまり入れたくないけど。
だって、セルが初めてくれた『物』。
「どうぞ」
消えちゃうなんて嫌だったけど、「早く入れろ」と言いたげなオーラが背中からひしひしと伝わってくる。
私は手にそれを持ったまま、ゆっくりお湯に沈めた。
「もったいないなぁ……」
呟いて恨めしげにセルを見遣るが彼はそんなの気にしない様子で。
「これは溶かしてこそ意味があるのだ」
なるほど意味がわからない。
私の左手の上でしゅわしゅわと、プレゼントがほどけていく。
「……せ、セル……これ……?」
手の上で泡が生まれては消えていく。
その中央に残った確かな感覚。
それが消えてしまわないように、お湯の中から救い出した。
「え、うそ。え……え?」
「溶かして良かっただろう?」
セルは『それ』を手に取り、未だ泡を遊ばせている私の左手をひっくり返して薬指にはめた。
「……結婚しようか、***」
その言葉に薬指のダイヤが光った。
光がぼやけて、指輪も、まるで幻みたいにぼやけて。
「……な、にそれ」
「なんだ、泣いているのか?
……本当に***は可愛らしいな」
私のおでこにキスを落とすセル。
いつもみたいに憎まれ口のひとつでも叩いてやりたかったけど、言葉が出てこない。
「返事は?」
応えて当然だろう、とでも言うかのような声音。
本っ当にムカつく。
だから私は力強く言ってやった。
「……はい」
そうやって笑うセルの顔も、自信家でいつも私を振り回す気まぐれでワガママなエセ紳士なところも、ちょっと変態なところも、
「大好き、セル」
「……知ってるさ」
セルは満足気に目を細めた。
リングケースは溶けてなくなっちゃったけど、それでいい。
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