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『わたしが***を養ってやる』
泡に託された誓い
ありがたく思え、と続きそうなやたら上から目線の告白を受け入れたあの日から、彼……セルは柄にもなく勉強を始めたようだった。
強い人と戦うこと以外に興味を持つとは驚きだったが、私はとりあえず見守ることにした。
そんな彼が今となっては資格を取得し、ものすごい勢いで職務遂行に励んでいる。
頭の回転が速そうだとは思っていたけど、まさかここまでとは。
「ね、ねぇセル……詳しく聞いてなかったけど、何の仕事してるの?」
部屋一面に散らばった書類を踏まないようにおそるおそるセルに近づく。
彼のデスクに置いてあるパソコンの画面には私にはよくわからない専門用語や計算式?が並んでいた。
「書類作成の仕事だ。まだ終わらんが、すぐに区切りをつけて相手をしてやろう」
そう言ったセルの手元には綺麗に整えられた書類の束。
2センチほどの分厚さはあるが……まだ途中なの?
「ちなみにあと何ページくらい?」
「これの倍だな」
さらっと言ってのけるセル。
思うことはいっぱいあるけど……男の仕事に口は出すまい、黙っていた。
それなのに。
「***が話しかけてくるから何を調べるか忘れてしまったではないか。
責任を取ってわたしの相手をしろ」
気分屋なセルは足元の書類を蹴って私の歩く道を作る。
最初は面白半分に付き合うことを決めた私も、飄々とした彼になぜか惹かれてしまって、今では逆らうことはできなくなっていた。
「……本当、気まぐれだよね」
「そこが好きなんだろう」
すべてお見通し、みたいな態度。
当たってるから尚更ムカつく。
仕方なく、組んだセルの脚の上に彼を跨ぐ形で腰を下ろした。
「期限は?」
「一週間後だ。
それが終われば一ヶ月ほど休みができる。どこか行くか?」
まったく何の仕事をしているのか、甚だ疑問である。
「家でいい」
別に、セルがいればどこでもいい。
口には絶対に出してやらないけど。
それでも彼は見透かしてるんだろう。
「そうか、では一ヶ月間休みなくたっぷりと可愛がってやろうじゃないか」
「ウミガメが産卵するときの涙ってさ、」
「……冗談だ、そんなあからさまに話を変えるな」
くつくつと笑いながらセルは私のあごを持ち上げて、顔を近づけた。
目を瞑ろうとした瞬間だった。
「そうだ、調べる内容を思い出した」
突然お預けをくらう。
……本っ当に、気まぐれなんだから!
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