浮世事変
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あの昆虫たちの勇者が現れてからというもの、われわれ人間の世界は天地をひっくり返したような大騒動が起こってしまった。
当然、学校や会社なんかも機能してるはずもなく、私はあのセミ……もとい『セル』に荒らされたこのジンジャータウンでひとり ぼーっと暮らしているのだった。
加速する興味
コンコンコン。
ノックする音が聞こえた。
もちろん外には人っ子ひとりいないはず。
誰か来たのかな? 救世主?
危ない人……といっても彼以外の危険生物なんているわけないけど。
それでもその『危ないセミ』を警戒して ゆっくりとドアを開ける。
「こんにちは、***。いかがお過ごしかな?」
ばたん。
……いやいやいや、やっぱ危ない『ヒト』じゃん。イケメンだけど。
なにあれ、誰? すごい親しげに話しかけてくるじゃん。イケメンなのに。
なんで私の名前知ってんの? 怖い怖い。イケメンだから余計に!!
「開けてくれ。***、」
「誰ですかあなた!! 私にはあなたみたいなイケメンの知り合いはいませんから!! 帰ってください!!」
「わかるだろう、わたしだよ」
「あれですか、最近流行りの『わたしわたし詐欺』ですか!! 甘いマスクを売りにした詐欺ですか!! いくらカッコよくても課金なんかしませんよ!! 帰ってください!!」
「わたしだ、『セル』だ」
「私の知ってるセルはもっとこう昆虫昆虫してます!! 帰ってください!!」
「君がこのドアを開けてくれんのなら 壊してしまってもいいのだが」
「どうぞ! 散らかってますけど!!」
負けた。
仕方なく開いたドアの向こうには、にっこり笑ったイケメンが立っていた。
……この強引さ、確かにセルだ。
「あなた、本当にあのセルなの?」
「そうだと言ったではないか。お邪魔するよ」
うろたえる私をよそにセルは紳士的な口調とは裏腹に ずかずかと入り込む。
そしてダイニングの椅子に座り、私の飲みかけのお茶をくいっと飲み干す……うん、あの図々しさはやっぱり間違いなく絶対にセルだ。
「なにをぼさっと突っ立っている?座れよ、***」
まるでこの家の主かのように振る舞う彼。
イケメンだというだけでこの強引キャラも許せるような気がしてきた。
「座る、けどさあ……なんでそんなフォルムチェンジしてるの?びっくりしたんだけど……」
「だから言っただろう、『完全体になったらまた会おう』とな」
あー……言ってた気がする。
仕方なく正面に腰掛ける。
「その『完全体』とやらがその姿なの?」
「そうだ。いい男になっただろう」
「クワガタの次くらいにカッコいいと思う」
「ではこの世のクワガタをすべて殺せば わたしが一番だな」
「うそ、うそです」
本当にそれは冗談だけど。
こんな大量虐殺をおこなった相手に こんなこと言いたくない。
けど、正直……彼は私が今まで出会った中で、一番 素敵な『生物』だと思う。
……ってなに考えてんだ私。
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