浮世事変
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そう問うとセミは答えて曰く、
「時間はたっぷりとある、人類を絶滅させる前にこうやってお前のように
おかしな思考回路を持つ人間と会話をするのも……待て、自分から聞いておいて どこへ行く。蝶を追いかけるな」
と。
「あの蝶もあなたの仲間かなあ、と思って……
でも話はちゃんと聞いてたから!」
「ならばわたしが なにを喋っていたか、言ってみろ」
「『ヤシの実じゃないようですね』」
「まったく聞いてないじゃないか」
っていうのは嘘で全部 聞いてたけど。
「しかし、お前はおもしろい女だ。気に入ったぞ」
見ず知らずの未知のセミから よく見知った言葉が飛び出した。
「殺人犯のあなたに気に入られても……」
「しばらく生かしておいてやる。ありがたく思え」
しばらく生かしておいて なにをするつもりなんだろう。
意図がわからない。
「そういえば名前を聞いていなかったな。
わたしの名前は『セル』という。
君の名を教えてくれるかな?」
「あ、そうだっけ? 私、***」
最初会ったとき ぎらりと光ってた目が嘘みたい。
セルからは敵意というか、殺気というか……とにかくそういう雰囲気は消えていた。
「そうか。『よろしく』、***」
「あ、うん……よろしく? セル」
なにがよろしくなのかサッパリだけど、私は当初の目的とはかけ離れた よくわからないものを拾ってしまったようだった。
……殺すつもりの私に名乗って、しかも『よろしく』だなんて、セルとやらは本当に なにを考えているんだろう。
「わたしは生体エキスをより多く吸収するため ここより南のジンジャータウンへ向かう。
『完全体』になったらまた会おう」
そう言ってセルは ふわりと浮いた。
羽ばたかなくても飛べるんだ……
それとも肉眼では あの羽は止まって見えるだけ?
というか『完全体』ってなに。
そんな知ってて当たり前のように言われても。
「ジンジャータウンって私の住んでる街なんだけど」
「だから どうした」
人でなしか。人でなかった。
「それに、『また会おう』って どうやって?」
「***の『気』は覚えた」
『気』?
セルに出会って わけのわからないことばかりだ。
世の中にはわからないことがいっぱいあるもんだなあ。
「では失礼」
結局 多くの謎を残したままセルは飛び去ってしまった。
この出会いが私の人生を大きく変えることになるなんて、このときの私には想像もできなかった……
……なんちゃって。
.