浮世事変
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「しかし、お前はおもしろい女だ。
気に入ったぞ」
見ず知らずの未知のセミから よく見知った言葉が飛び出した。
浮世事変
私は今日も日課の『彼氏探し』をするために ほっつき歩いていた。
『探し』といっても別にどこかに『落としてきた』わけじゃない。
どこかに『落ちてないか探しに』歩いているだけだ。
あてもなく歩いているといつの間にか住んでいるジンジャータウンよりも もっと北の方までやってきていた。
結構歩いてきたもんだ。
……あれ? なんだろう。
服が落ちてる……というか置いてある?
まるで抜け殻みたいに帽子、シャツ、ズボン、靴ってちゃんと並んでる。
なんか湿ってるっぽいけど。
「わあ、靴下まで」
しゃがんで、落ちている? 置いてある?スニーカーの中の靴下を確認しているときだった。
「貴様……なにをしている?」
呆れたような声が降ってきた。
いい声だった。
「人間の抜け殻観察」
顔を上げるとセミみたいな奴がいた。
なんだこいつは。
「あなたの抜け殻?」
突然現れた目の前の生き物に混乱して変なこと聞いちゃった。
セミは なにを言っている、みたいな顔。
うん、なにを言っているんだろう。
「それはわたしが殺した人間のものだ」
「? 殺して服だけ並べたの?」
「そんなことをして何の意味がある?」
ですよね。
「わたしの この尾を突き刺し その者の『生体エキス』を吸収した、
だから服だけがその場に残ったのだ」
「ちょっと なにを言ってるのかわからないけど わかった」
「……」
セミは顔をしかめた。
そうか、セミにも感情があるんだ。
新たな発見だ。
今度から昆虫は大切にしよう。
「あなたが殺したってことは、あなたは悪い人……いや、悪いセミ?
いや、むしろ気持ち悪いと無慈悲に虫を殺してしまう人間どもに復讐をすべく立ち上がった昆虫たちの中から選ばれし勇者なの?」
「……ちょっと 何を言ってるのかわからんが、違う」
私のセリフをパクってニヤリと笑ったセミ。
人間から見れば殺人犯なんだけど、こいつ結構おもしろい。
「私も殺すの?」
「そうだ」
そうか。私も殺されるのか。
せっかく変な生き物に出会えたのに残念だ。
……でも。
「なんですぐ殺さないの?」
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