曼珠沙華の花束を貴方に
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父と母、そして数人の友達に囲まれて、毎日を過ごして。
生前はそんな日々を送っていた。
大きな問題もない、静かな日常。
こんなに賑やかな日々が訪れるなんて、想像もしてなかった。
「リコリスはオレたちとあそぶんだ!!」
「リコリスと遊ぶのは俺たちだもんねーっ!!!」
「ギャギャッ!!よわむしどもはひっこんでろよーっだ!!」
「なんだと!?地獄一のエリート軍団、ギニュー特戦隊に逆らうものはガキだろーが許さんぞ!!」
地獄に来て、一週間ほどが経った。
今現在、右を向けば五人の男たちと六人の子どもたちによる空中での肉弾戦が繰り広げられている。
「下等なサルどもが俺様に敵うとでも思っているのか!!
見てますかリコリスさん!私の地獄一の強さを!!」
「どこ見てんだ?よそ見しながらこのターレス様に勝てると思うなよ!!」
「サイヤ人の底力ぁこんなもんじゃねーぞ!!」
「ラディッツ、お前じゃそのセリフ信憑性ねぇぞ!くたばりやがれフリーザ!!」
そして左を見ればトカゲと三人のサイヤ人(という宇宙人だそう)による空中でのエネルギー弾の撃ち合いが繰り広げられていた。
私はというと……
「リコリスはだれがつよいとおもう?」
セルジュニア二号に抱えられてそのふたつの対決を眺めていた。
だって私は飛べないし。
落ち着かせるのが目的でここに来たけど、この規模のバトルなんか私に止められるはずがないし。
「そうだなぁ……わかんないけど、ジュニアくんたちに勝ってほしいな」
私がそう言うと二号は嬉しそうに笑う。
こういう笑顔は本当に子どもらしくて可愛いのに、性格は意外と残虐な様子。
……そういえば、まだセルジュニアのパパかママにまだ会ったことがない。
こんな大乱闘が起こっていればジュニアたちの親なら来るはずなのに。
「ねぇ二号くん、君たちの……」
「ぼくもたたかってくるね!
リコリスは下でまってて、すぐおわらせるから!」
すーっと二号は地面に着地して、私を降ろしたかと思うと他のジュニアたちの元に一目散に飛んでいった。
……結局聞けなかった。
「お前らみたいなガキはあの戦闘バカのサルどもと遊んでいやがれ!!」
「あんだぁ!?だっせぇナントカレンジャーもどきが調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
「おまえらこそあのきもちわるいオカマトカゲとあそんでろよーーー!!」
「子どもだからって容赦せんぞ!クソガキどもが!!」
あぁ、ふたつの乱闘がひとつにくっついてしまった。
なんとかして止めたいけどどうすればいいんだろう、そう思った時だった。
目の前に人影が現れた。
「でぇじょぶか、リコリス?」
「悟空っ!」
救世主登場って感じ!?
好戦的な人が多かったから、温厚な悟空が来てくれてやっとほっとできる。……と思ったのに。
「いっやぁ~、めちゃくちゃ楽しそーじゃねぇか!!」
意外とあなたもそうなのね……
バーダックさんの血を引いてるだけあるなぁ……ってことは悟空もサイヤ人ってことじゃないか。
「リコリスはもっと離れてろよ、オラちっと混ざって……じゃなかった止めてくっからよ!」
「ちょっ……悟空!?」
今確実に、混ざってくるって言いかけたよね?聞こえてましたけど。
悟空はとばっちりを受けないように私を近くの岩場に避難させてくれた。
「はあっ!!」
気合いの掛け声を上げる悟空。
直後、悟空は赤い光?オーラ?みたいなものに包まれた。
そしてそのまま大乱闘の中に一直線に飛んでいった。
「リコリスを困らせてんじゃねぇぞおめぇら!!」
「孫悟空!?貴様がなぜここに!!」
フリーザさんはジュニアたちへの攻撃を止めて悟空に反応した。
悟空って結構顔が広いんだなぁ……
「リコリスッ!」
みんなが悟空に気を取られてる隙に、私のそばにはセルジュニアたちが集まっていた。
「キヒヒ……リコリス、いまのうちに行っちゃおー」
「ナイショのばしょ、おしえてあげる!」
「内緒の場所……?」
「リコリスだけ、とくべつだよ!」
だいたい地獄のスポットはラディちゃんが案内してくれたはずなんだけど……
何号かわからないけど、ジュニアのひとりが私を抱えて飛び立つ。
「二号っ!おまえばっかずるいぞ!」
「しーっ!あいつらにきこえちゃうだろ!」
あとの六人も後ろからついてくる。
一体どこに連れて行かれるんだろう?
「リコリスの気が遠く……?
……あっ!待てーっ!!セルジュニア!!」
遠くで悟空の叫び声が聞こえる。
「皆さんっ!追いなさい!!」
「ほら!きづかれただろっ!」
「ギキャーッ!!」
ジュニアたち六人がみんなに向かって一斉に大きなエネルギー弾を放つ。
その隙に二号は目一杯スピードを上げた。
「リコリス、だいじょうぶ?」
「わ、私は大丈夫だけど……他の子たちは?」
「あとからくるよ!」
二号はそのままのスピードで飛び続けた。
しばらく経つとみんなも追いついてきて、やっとスピードを落としてくれた。
「どこに行くの?」
「んー、まだ先かなぁ」
「もっと行かないと つかないんだー」
キキッと嬉しそうに笑うジュニアたち。
そんな場所に案内してもらえるなんて、私も認めてもらえた証拠かな?
オニとしてはまだまだ全然だけど……
会話をしながら飛ぶこと、時間にして30分程度。
地上に赤い絨毯が見えてきた。
「ここだよー!!」
ジュニアたちはその手前あたりで着地して、私を下ろしてくれた。
ようやく気がついた。
彼岸花の花畑だった。
「すごい……」
見渡す限り一面の彼岸花。
ここに来て初めて『美しい』と、そう思えるものに出会った。
「ひひっ、きにいった?」
「うん。すごいね、すごく綺麗。
ありがとう、みんな……!」
「パパのおきにいりのばしょなんだ!」
ジュニアのひとりがすっと右の方を指差す。
花畑の中の遠くの方に花に向き合う人影が見えた。
ジュニアを大きくした感じの見た目だけど彼らとは違う、緑色の身体をしている。
「パパーーーッ!!」
大きな声で『パパ』を呼ぶジュニア。
彼は静かにこちらに振り返った。
続く