曼珠沙華の花束を貴方に
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あの光、強い人にしかできないやつなのかな?
それともやっぱりトリック?
ラディちゃんのダブルサンデーはどうやって出したんだろう。
そんなことを考えながらラディちゃんの死体(死んでない)を前に立ち尽くしている時だった。
つんつん。
後ろから誰かに肩をつつかれる。
ここには人の背後に現れたがる人が多いなぁ……
振り返ると、そこには小さな男の子?がいた。
「おねぇちゃん、なにしてるの?」
整った顔立ちで黒と青の身体。
青い部分には斑点がある小さいながらも筋肉質の少年が、人差し指をくわえて不思議そうな顔をしながら浮いていた。
「……か」
「?」
「かわいいぃぃぃ!!!!!」
彼は私の叫び声にきょとんとしていたが、すぐにニコッとあどけない笑顔を見せてくれた。
なにこの笑顔!天使!!
「きひひっ!ありがと!」
少年は口に両手を当ててそう言った。
でもなんで地獄にこんな少年がいるんだろう。
昆虫とかの大量虐殺?
「君ひとり?お名前は?」
「ぼく、セルジュニア四号」
彼がそう言った瞬間、私の周りにおんなじ少年がたくさん降り立った。
1、2、3、4……7人!?
「ぼくたち、みーんな兄弟なんだぁ」
大きく腕を広げて四号くんは言った。
ということはみんな一号、二号、みたいな名前なんだ。
セル『ジュニア』ってことは……
きっと『セル』っていう人もここにいるに違いない。
面倒な人じゃなければいいなぁ。
「おねぇちゃんのおなまえは?」
「私はリコリスっていうの。
よろしくね、セルジュニアくんたち!」
よくわからない人たちばかりかと思っていたけど、こんなに可愛い子もいるんだ。
それにみんな行儀がよくていい子だし。
私の心のオアシスになりそうだ。
「う、うぅ……リコリス……大丈夫か?」
「あ!ラディちゃん、気がついた!?
大丈夫かはこっちのセリフなんだけど!!」
むく、とラディちゃんは起き上がったけど、もうフリーザさんも特戦隊の人たちもどっか行っちゃったよ!
「ウキキキ……もじゃもじゃがおきたぞ」
ジュニアくんがニヤリと笑ってラディちゃんを見る。
初めて見た、彼らの子どもらしからぬ邪悪な笑顔……
ほ、本当にみんな行儀がよくていい子たちなのかな……?
「お、お前ら!!
……リコリス、離れてろ!こいつらはな……」
「え?え??」
ばっと立ち上がってジュニアくんたちから距離をとるラディちゃん。
子ども相手にそんな警戒しなくても……
「おまえこそリコリスからはなれろよー!」
「あつくるしいんだよー!」
「うしろからみたらミノムシにしか見えねーんだよー!!」
ジュニアくんたちの言葉に思わず吹き出す。
子どもは思ったことをそのまま言えていいなぁ……
「こいつらは悪戯好きのクソガキどもなんだよ!」
「なんだよー!
よわむしもじゃもじゃのくせに!」
「なかせちゃうぞ!」
「ギャギャッ!しんじゃえーーー!!」
ジュニアくんたちは口々に叫びながらラディちゃんに光の玉を浴びせまくる。
あの子たちも強そうだし、あのトリックはやっぱり強い人の特権なんだ。
しばらく光の玉の撃ち合いを眺めてると、誰かが飛んできた。
「騒がしいと思ったら……うちのバカ息子がガキどもに遊んでもらってんのか」
がりがりと頭をかきながらバーダックさんが降りてきた。
「あ、バーダックさん」
「あんまり近寄んなよリコリス。巻き込まれんぞ」
私をお姫様だっこして再びバーダックさんは地上から飛び上がった。
彼のこの動作にラディちゃんのような照れはまったく見えない。
大人だなぁ……
「チッ、うるせーガキどもだぜ。
誰か身体があるやつを見つけるとすぐ、あぁやって絡みにいくんだよ」
バーダックさんは疎ましげにそう言うが、彼は子どもが嫌いなんだろうか……
まぁ、あんまり好きそうには見えないけど。
「おさまるまで待つぞ、じきにあいつが来る」
「どういうこと?」
あいつって誰だろう。
もしかして『セル』って人かな?
そう考えていたら遠くに人影が見えた。
その人はぐんぐん近づいてきて、爆心地付近に降下した。
彼に気がついたジュニアくんたちはピタリと手を止めた。
「あ!ターレス!!」
「ターレスだ!」
「おいおいお前ら……弱いモンいじめはほどほどにしとけよ?」
「誰が弱いモンだって!?」
ボロボロになったラディちゃんが吠えるが、ジュニアくんたちはもうすっかり興味をなくしたようで、みな一斉にターレスさんの周りに集まった。
「ターレス~~~!!」
「おら、やんちゃ坊主どもめ。
お前らどこに行ってたんだよ?」
「こっちのセリフだぞバーカ!」
その様子はさながら幼稚園の先生と園児たちのよう。
バーダックさんはそれを見てやっと私を地上に下ろしてくれた。
「……こういうことだ。
意外だろ?あいつがガキを好きだなんてよ」
確かに、意外だ。
私に向けたニヒルな笑みとはまた違った微笑みを見せていた。
なんだ、結構優しそうな人じゃん。
「ターレスターレス!リコリスがオレたちのことかわいいって!」
「そうか、そいつはよかったな」
「ターレス、きょうはリコリスもいっしょにあそぼー!!」
ぴったり私の身体にくっついてジュニアくんが言う。
この『能力』なしでここまで好いてくれるなんてうれしいなぁ。
「いいでしょ、リコリス!」
「うーん……」
「おねがいっ!」
残念ながら私には君たちについていけるほどの体力はなさそうだよ。
でもせっかく誘ってくれてるんだし……
「簡単な遊びならなんとか……」
「だってよ……お前らは何がしたい?」
「くみて!かんたんだよ!」
絶対無理。
「バーカ!リコリスにこうげきなんかできないだろ!」
「そうだよ、いっぱつでころしちゃうもん!」
「キャキャキャ!そっかー!!」
こ、殺しちゃうもんって……
……でもさっきのラディちゃんへの攻撃を見るに、この子たちも本当に強そうだもんなぁ。
「じゃあおにごっこ!」
「なら鬼はリコリスだな」
「なんで私!?」
ターレスさんはニヤリと笑った。
「そりゃあお前は『地獄の鬼』なんだからな……そら、逃げろお前ら!!」
「ギャキャーーーッ!!!」
蜘蛛の子を散らすように飛んで逃げていくジュニアくんたち。
だから私は飛べないんだってばー!!
「ターレス、お前も悪い奴だな。
リコリスが飛べないとわかっていてジュニアをけしかけるんだからな」
「フッ、なんのための鬼だと思ってるんだ?
こんくれーで音ェあげてりゃ世話ねーぜ」
フワッとターレスさんも飛び上がる。
ジュニアくんたちも楽しそうだし、それにターレスさんの言う通りだ。
しょうがない、走って追いかけるしかないか。
「もー!!みんな捕まえてやる!!」
気合いを入れたその時、私の身体が宙に浮いた。
バーダックさんが私の腕を掴んで引き上げてくれていた。
「バーダックさん!」
「しょうがねぇから手伝ってやるよ」
ふっと笑ってバーダックさんは私を抱え直す。
ちょっと裏技っぽいけど、ありがたく好意を受け取ることにした。
「おい親父、そりゃ反則……」
「俺に反則もクソもねぇよ。
お前も来るなら来い、でなけりゃ置いてくぜ」
バーダックさんはヒュンッとすごい勢いで飛び始めた。
その先には退屈そうに私を待っているジュニアくんが見える。
「げーっ!バーダックだ!!
リコリスだっこしてずるい!!」
後ろには追いかけてくるラディちゃんが見えた。
「飛ばすぜ、リコリス」
「え?……う、うわああっ!!」
「ハッ!色気のねぇ声出すなよ」
言うや否や一気にスピードが上がる。
前にいたジュニアくんは慌てて逃げ出した。
思ってた地獄とは違うけど……だからこそ、なんだかんだでうまくやっていけそうな気がした。
……今は。
続く