曼珠沙華の花束を貴方に
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頭を捻ってもまったく思い出せない。
「名はリコリスだな」
なんでこんなことになってしまったんだろう。
「ふむ、悪事は働いていないようだ」
やりたいことだっていっぱいあったのに。
「リコリスの判決は……」
せめてあっちでは花畑でゆっくりしたいなぁ……
「『地獄のオニ』に任命する!」
「……はい?」
私がいるのは閻魔の間。
どうやら死んでしまったようなのです。
数時間前までお父さんとお母さんとご飯を食べて、趣味を楽しんで、普通に生活してたはずなのに。
しかもこの人、今なんと?
「何ですかそれ!?地獄の鬼!?
天国か地獄じゃないの!!?」
「リコリスの特殊能力を買った結果だ」
私に能力?
まったく意味がわからない。
「能力なんてないもん!普通の女の子だから!!
どうせ死んだんだったら天国に行かせてよ!!」
「なんだ、気付いとらんかったのか。
まぁそう焦るな、ちょっと待っとれ。
ええと、」
再び手元の書類に目を落とす閻魔様。
というか閻魔様ってこんなスーツとか着てカジュアルな感じなんだ。
思ってたのと大違い。
びっくりするほど大きいってところは想像通りだけど。
「あぁ、あった。なかなか裏技みたいな能力だな……
端的に言うと『目を合わせた者を魅了する能力』だ」
何ですかそれ、本当にチートみたいな能力。
ぽかーんとしている私を差し置いて閻魔様は続ける。
「一応条件があるようで、三秒間は目を合わせ続けねばダメなようだがなぁ。
記憶にないか?人や動物にやたら好かれた、とか」
「……あー」
そういえば、ある。
幼い頃から人間であろうが野生動物であろうが関係なく好かれた記憶が。
さっきから閻魔様があんまり目を合わせてくれないのも合点がいく。
「そこで、だ。
最近地獄に極悪人どもが増えてなぁ、オニ達が手こずってるようなんだ。
力を貸してくれないか?」
そんな『能力』しか持たない善良な人間を極悪人の巣窟に放り込むなんて、この方こそ本当の極悪人ではなかろうか。
「イヤです」
「じゃあ地獄ゆきだ」
「なんで!」
ますます意味がわからない!
虫も殺せない私が地獄行きならそれはもう地獄は人でごった返してるでしょうね!!
「自分の死因も覚えとらんのか?
……まぁ稀にある一時的な記憶喪失だろうが……」
地獄行きに死因が関係してる?
ってどういうことだろう。
「とにかく、地獄を落ち着かせることができれば天国へ行かせてやってもいいだろう。
どうだ?悪い条件じゃないだろう」
「うぅ……」
確かに悪くはない。
むしろ魅力的だ。
だって他の鬼たちもいるだろうし、危険になったら助けてくれるはず。
それにもう死んでるんだから殺されるなんてこともないだろうし……
……でも、それでも。
「私で大丈夫でしょうか……?」
あと一押し、とでも思ったのか、閻魔様はにこっと微笑んだ。
「お前だから頼んでいるんだ、頼りにしているぞ?」
頼られるのに弱いのは私の悪いところだ。
それも知っての上で閻魔様はそう言っているんだろう。
「……頑張ってみます」
あーあ、言っちゃった。
「よし!そうと決まれば早速行ってもらおう!
最初だから護衛のために『孫悟空』を呼んでやろう、ちょっと待っとれ」
と閻魔様が言うと、さっと傍に待機していた青鬼さんがやってきた。
「今から別室に案内するオニ、ついてくるオニ」
……オニ?
地獄のオニということは私も語尾につけるオニ?
青鬼さんを追いかけて行くと背後から電話機のダイヤルを回す音と、閻魔様の大きな「天国!」「天国!」「地獄!」「天国!」という声が聞こえてきた。
「よかったオニ、リコリスさんのおかげで今日は一日閻魔様のご機嫌も良さそうオニ」
それはよかった。
あぁでも本当に、なんでこんなことになってしまったんだろう。
……あ、私の死因聞くの忘れてた……
続く
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