曼珠沙華の花束を貴方に
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会ったこと、というか見たことある気がするんだよなぁ……金髪の悟空に。
……うーん、まぁ今はいいか、特戦隊の方が気になるし。
ぐったりと横たわるみんなに近づく。
ボロボロだけど、本当に生きてるよね?
「ギニューさん、みんな……大丈夫?」
……
返事はない。もう少しそっとしといた方がいいかな?
針まんじゅう食べて待ってよっかな。
せっかくターレスさんがくれたんだし。
簡素な箱を開くと六つ入ってるおまんじゅう。
ひとつかじってみる。
「あ、おいしいかも……」
死んでも味は感じるんだ。新しい発見だ。
なにか食べたのなんて久しぶりだなぁ。
私の最後の晩餐ってなんだっけ?
えっと……目玉焼きとかウインナーとかだったような気がする。
あんまり思い出せない。
……お父さんもお母さんも元気かな?
突然私が死んじゃってびっくりしてるんじゃないかな……
「ぐ、うぅ……」
「ぅ……リコリス……?」
「!……み、みんな、気がついた!?」
よかった、五人ともとりあえず大丈夫そうだ。
怪我は酷そうだけど、もう死んでるんだしそのうち治るよね。
「リコリス……あいつらは?」
「悟空もバーダックさんも行っちゃったよ!
あ、悟空がみんなにわりぃって伝えといてくれって……」
「ふん……こんだけボコボコにしといてそれだけかよ……」
グルドさんは仰向けになり悪態をついた。
あの『かめはめ波』を食らってこの様子なら平気そうだ。
比較的軽傷そうなジースさんとバータさんはすでに起き上がっていた。
「くそっ……あの野郎、あんなに強かったとは……」
「あぁ、初めて会ったときよりパワーアップしてやがる……」
気がついてまず相手を考察するあたりやっぱりファイターなんだなぁ……
それとも宇宙人だから考えることも地球人とは違うのかな?
どっちにしろ元気そうだしいっか。
「リクームさんは大丈夫かな……」
「あいつはタフだし大丈夫だろう」
私のひとり言にジースさんが反応する。
それでも気になるから見に行くと……
「……いちばん酷そう」
服も髪もボロボロだし、歯も何本もなくなってるし……
悟空、本気でやりすぎ……
「うぅ~ん……」
「あ!リクームさん、気がついた!?」
抱き起こそうかと思ったけど……重すぎて無理。
おとなしく座って見守ることにした。
「あぁ……リコリスちゃんじゃない……
大丈夫? ケガ、してない?」
こんなボロボロなのに、どう見ても無傷の私の方を心配してくれるなんて……
彼の優しさと止められなかった自分の無力さに涙が出てきた。
「……あれ、リコリスちゃん?」
「……わ、私よりも……っリクームさんの方がぁ……!」
「やだなぁ……俺はヘーキだって!」
ほらほら、とリクームさんは私の肩を叩いて慰めてくれる。
そんなとき、グルドさんとバータさんが茶化すように叫んだ。
「リクームがセクハラしてリコリスを泣かしてる!!」
「リクーム サイテー!隊長に言ってやろーっと!!」
「バーカ、俺のあまりのカッコよさに泣いてんだよ!」
ケラケラと笑う特戦隊のみんな。
それを見てたら私も笑えてきて……涙は引っ込んでしまった。
けど……ギニューさんがまだ気を失ったままだ。
「そうだ、隊長がまだ起きねぇじゃねーか!!」
ギニューさんに、私とバータさんが同時に駆け寄る。
あとからグルドさん、ジースさんとリクームさんも来て、みんなでギニューさんの顔を覗き込んでいた。
「ギニューさん、悟空の元気玉見て、みんなを掴んで逃げようとしてたんだよ」
地面を抉る大きい穴を差して言うと誰かが唾を飲む音が聞こえた。
「隊長……」
「俺らを庇おうとしたのか……」
「……惜しい人をなくしてしまった」
しんみりした空気の中リクームさんが呟くと、ジースさんが吹き出した。
「まだ死んでねぇから!!」
「……もう、死んでるけどな」
ジースさんのツッコミに被せて突っ込んだのは……
「隊長!!」
「ギニューさん!よかった、目を覚まして……」
頭を押さえて起き上がり、ギニューさんはにやりと笑った。
「俺は隊長だからな、他のメンバーを遺して死ぬわけにはゆくまい」
「たいちょお~~~!!」
「ふっふっふ……俺は優しいだろ?」
「おぉーっ!最高っすよーーーっ!!」
四人全員がそう答える。
仲間っていいもんだなぁ……羨ましい。
と、思っているとギニューさんが思い出した、と手を叩いた。
「そうだ、リコリスよ。孫悟空が『リコリスに攻撃するとはいい度胸だ』などと言っていたが……もしかして、お前に当ててしまったか?」
「私なら全然……」
言いかけたところで私の声はバータさんの声にかき消された。
「なに!?それは大変だ!!」
「どこかケガしてないか!?」
「ちょっと服脱いでごらん!!」
「バカ、脱がしてどーする気だ!」
突然元気になったみんなは やいのやいのと騒ぎ出す。
みんな、私のケガの心配なんかしてる場合じゃないのに……
やっぱりみんな地獄送りなんておかしいほどいい人たちばっかりじゃん。
「ふふっ……私は大丈夫、みんな心配してくれてありがとうね!」
元気なことをアピールするために笑いながら手をぶんぶん振ってみる。
「いや……リコリスは健気だからな、強がっているのかもしれん」
「本当は大変なケガを負ってるんじゃ……」
どこを見てそう思った!!
ギニューさんとグルドさんは訝しげに腕を組んだ。
「いや、だからさ……」
「リコリス!ヒッヒッフー!だ!!」
「お、俺が心臓マッサージを……!」
「し、死ぬんじゃないぞリコリス!!」
だめだ、ツッコミが追いつかない!
悟空、バーダックさん、戻ってきて!!
「本当に大丈夫!無傷だから!!
ほらっ!全然なんともないしっ!!」
「そ、そうか? リコリスがそこまで言うなら信じよう」
ギニューさんは私にたじろいで、やっと信じてくれた。
みんな心配性なんだなぁ……
「けどよぉ、本当に大丈夫なのか?」
「リクームさん!話をふりだしに戻すのはやめて!!」
「いや、ケガのことじゃねぇんだ。
リコリスちゃんが記憶喪失って聞いたもんだからよ」
あ、そっちね……
確かセルさんとの会話を聞いてたのは特戦隊の人たちだって、フリーザさんも言ってたもんね。
「うん、そうなんだ。
セルさんは私のこと知ってるみたいだし、教えてもらおうと思ってたんだけど……」
悟空は思い出さない方がいいって言ってたけど、なにが起こってたって構わない。過去のことだもん。
なにがあったか知っときたいし。
「フリーザ様も気にしておられたし、聞きに行くのもいいんじゃないの?」
「このままなぜ死んだかもわからんまま過ごすのもモヤモヤするしな」
「やっぱりそうだよね?」
リクームさんとジースさんに背中を押されて、私はまたセルさんに会いに行く気になった。
正直今までは、覚えてないのが申し訳なくてあんまり会いたくなかったんだ。
「けど、セルの奴がどこにいるかわかんねぇぞ」
「あの花畑に行けば会えるだろう。
地獄一のスピードを誇るバータに連れて行ってもらえばいい」
「任せてください!」
とんとん拍子で話が進むけど、傷だらけのバータさんをこき使うわけにはいかない。ひとりで行かなくちゃ。
「悪いからひとりで行くよ。
みんなはこれ食べて身体休めてて!」
バータさんにターレスさんからもらったおまんじゅうを渡す。
あと五個入ってるからみんなに食べてもらおう。
なにか食べればちょっとは体力も回復するだろうし。
「距離が結構あるが、本当の本当に大丈夫か?」
「もう、本当の本当に大丈夫だって!
じゃまたね、パフェはまた今度おごってね!」
「ああ、そうだったな!」
「気をつけて行けよ! 花畑はあっちだからな!」
みんなに手を振ってその場をあとにする。
走って転けたらまた囲まれて動けなくなるから歩いていこう。
「リコリス、本当にひとりで行くつもりなのか」
「今回は内容が内容だ、尾けてくのも悪いだろ」
リコリスに手を振りながら呟いたジースにグルドが答えた。
「現世で言う二、三日くれぇかかるぜ、あそこまで。
ラディッツでも捕まえりゃタクシーがわりに……あ、うめぇわコレ」
針まんじゅうを頬張るバータ。
その身体を柔らかい光が包んで、怪我を瞬く間に治していった。
「ちょ、なんだこれ!リクーム、お前も食ってみろ!」
「ちょーだいちょーだい!歯ぁ生えてくるかな?」
リクームは饅頭を放り込んで咀嚼する。
彼の身体も光が包むが、治ったものは怪我だけだった。
「髪すら生えねーじゃん!」
「当たり前だろ!」
和気あいあいと笑っている隊員たちの輪の中に混ざらない者がひとり。
彼はリコリスの姿をいつまでも見送りながら立っていた。
「隊長も食べましょうよ、せっかくリコリスがくれたんだし」
「さっきのこと気にしてるんすか?」
「あぁ……」
リクームが声をかけると、ギニューは振り返らずにひとことだけ答えた。
「バーダックやあの孫悟空相手に一対一で戦うことなんて難しいっすよ。
あれでよかったんですって」
「俺のまんじゅう!」
どさくさに紛れて二つ目に手をつけようとするバータの手をジースがはじく。
「いつも通りそうしていれば……リコリスに恐怖を与えることもなかっただろう」
ギニューの言葉に隊員たちは静まり返る。
自分たちは常に前線で戦っていたが、リコリスはただの地球人だ。
それをやっと思い出した皆は、なにも言えずに黙っていた。
そんな中、ギニューが再び口を開く。
「しかし……」
「?」
「今回はタイトルと全く関係なかった」
「隊長!そういうメタ発言はやめてくださいっ!」
続く