曼珠沙華の花束を貴方に
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ラディちゃんが行ってしまってからも再び飛び続けるバーダックさん。
彼はどこかに向かってるのかな?
「あの、バーダックさん……」
言いかけたところで下から光線が飛んできた。
当てるつもりじゃなかったのか、それは私たちの少し前を通って行った。
「……チッ、あの野郎どもめ……」
と言って下を向いたバーダックさんの視線の先には特戦隊の人たちがいた。
バーダックさんはゆっくりと降下して彼らの前に降り立ち、様子を伺いながら私を隣に下ろしてくれた。
「何の用だ」
「フリーザ様に言われたのだ。リコリスをサイヤ人どもに近づけるな、ってな」
腕を組んでグルドさんが答える。
なんか可愛いなぁ……
「野蛮なのが感染るからだそーだぜ」
それにバータさんがニヤリと笑って付け足した。
「リコリスを置いてここから去れ。でなければ貴様を消し去って」
「やってみろよ。リコリスを巻き込んでもいいならな」
ギニューさんが静かに言い放つが、バーダックさんは挑発するように食い気味に返事した。
うーん……みんなひとりひとりはいい人なのに、なんで集まるとケンカになっちゃうんだろ。
「待って、待ってよみんな。
たまには穏便に……」
今こそ私の力の見せ所!……ってときなのに、みんな私の声なんか耳に入ってないみたい。
話の中心人物無視するってどういうことよ……
「リコリスはちょっと離れてろ」
「で、でも……」
バーダックさんはそう言うけど今回はそういう訳にもいかない。
だって、満身創痍ともいえる彼をこれ以上戦わせられないもん。
「リコリス、あとでチョコレートパフェをおごってやるから避難していろ」
「わかった!!」
「テメー!!饅頭だけで我慢しろ!!」
ジースさんの言葉に走り出した私の背中に、バーダックさんの鋭いツッコミが入った。
甘いモノには誰も勝てませんて!
「ここでいいーっ!?
チョコレートパフェ忘れないでね!!」
「おうっ!!
あとで一緒に食べよーねぇーんっ!!」
しばらく離れた位置に移動してみんなに声をかけるとリクームさんがぶんぶん手を振って答えてくれた。
それにしても……バーダックさんひとりで五人も相手して大丈夫かな?
「相手はリコリスじゃねぇだろ?」
「お?」
いつの間にかバーダックさんはリクームさんの目の前に立っていた。
至近距離でエネルギー波を発したもんだから砂埃が舞い上がる……って実況してる場合じゃなかった、リクームさん大丈夫かな……!?
「もー、バーダックさんったらせっかちなんだからんっ!」
「ギャハハ!気持ち悪ィぞリクーム!」
リクームさんは案外ケロッとしてる。
それを見ていたバータさんも余裕たっぷりみたい。
あの身体の大きさだし……やっぱりタフなのかも?
「フン……面倒だ、まとめてかかってこい!」
バーダックさんの言葉を合図に、特戦隊のみんなは一斉に襲いかかる。
肉弾戦で五人相手って厳しくないかな、特にバーダックさんなんてさっきまで責め苦受けたあとにターレスさんと戦ってたのに。
戦闘民族サイヤ人って言う(らしい)だけあってやっぱり戦いが好きなのかも。
……なんて呑気に考えてるあたり私もここに慣れてきたなぁ。
あ、バーダックさん平気かな……
ジースさんの放ったエネルギー弾が彼にぶつかって、突風が吹き付けた。
バーダックさんは無事そうだったけど、私は身構える準備もできず、よろけて尻餅をついてしまった。
突風とあまりの痛さに思わず目を瞑る。
「いっ……たぁ……」
ビックリした……
風もおさまってきて、立ち上がろうと目を開けたとき、私の前に立ちはだかる山吹色の胴着が目に入った。
「……リコリス……おめぇ今、攻撃されたんか……?」
「え?いや、あの違くて」
「許さねぇぞ、おめぇら……」
そう言った直後、悟空の髪の毛が逆立ち金髪になり、身体が金色のオーラに包まれた。
「ちょ、悟空?だよね。それは誤解で……」
「向こうの岩場まで逃げとけ、リコリス」
目線をこちらに寄越し、私の後ろの岩場を親指で刺して悟空は言った。
!?
目つきや瞳の色まで変わってる!?
というか誰ってくらい別人なんだけど!
人畜無害そうな悟空はどこ行ったの!?
「早く行け!!」
「はいっ!!」
私はおまんじゅうを抱えて弾かれたように走り出した。
しばらく全力で走るけど、息切れもしない。
うーん、死に体バンザイ?なんて、あはは……笑えないし。
どうでもいいことを考えながら岩場まで走っていると、後ろから普段と違った悟空の声が聞こえてきた。
「貴様ら……リコリスに攻撃するたぁいい度胸じゃねーか……覚悟しやがれ……!」
「あぁ~?俺らがリコリスちゃんに攻撃だと……ってぎゃぁああああ!!!」
最後まで言い終わる前にリクームさんが悟空の放ったエネルギー弾に飲み込まれた。
あの人今度こそ無事じゃない!!
「リクーム!!……待て、孫悟空!!
俺らがリコリスに攻撃などするわけ」
「やかましい!問答無用だ!!」
「話を聞けっつーの!!」
そして言い訳もできずにバータさんとジースさんが悟空の連続エネルギー弾の餌食になる。
「こっ、ここは金縛りの術で食い止め……」
「られりゃいいな?」
「!!」
瞬間移動でグルドさんの目の前に現れた悟空は、すでに構えた両手の中に光の玉を携えていた。
「かめはめ波ァーーーッ!!!」
どっかで聞いたことある技名!!
けど!技名以上に強烈な気弾を受け止めきれずにグルドさんは光の中に消えた。
元いた位置に目にも留まらぬ速さで戻った悟空はおもむろに両手を上げた。
な、なにしてるんだろう……
「な……ッ!我ら特戦隊のメンバーが四人も一気に……!!」
気を失って倒れた四人を見てギニューさんは狼狽していたが、彼は悟空を見て動きを止めた。
「は……はぁ、カカロットの野郎……マジで殺る気、じゃねぇかよ……」
「うわ、バーダックさん!?」
いつの間にか隣に座り込んでいたバーダックさん。
激しく息を切らしてるけど、どうやら力を振り絞ってここまで走ってきたようだった。
「どっから集めてきたんだか……見ろ、『元気玉』とやらだ……」
くい、とバーダックさんが顎で差した先を見る。
……なに、あれ。
悟空の両手の上空に、さっきターレスさんが放とうとしたものとは桁違いに大きい球体、『元気玉』が浮かんでいた。
「ち、チクショーッ!!」
「くたばりやがれーーーっ!!!」
ギニューさんは無理やり四人を掴んで逃げようとするが、悟空は彼に向かって両腕を振り下ろす。
恐ろしい勢いで襲いかかる元気玉。
……悟空が、みんなを殺す……?そんなの、見たくない。
固く目を閉じて、耳を塞いでしゃがみこむ。
ギャルギャルギャルッという物凄い音と断末魔のような悲鳴が聞こえる。
……断末魔……悲鳴?
いやだ、聞きたくない。身体がふるえる。こわい。
なんで?かは、わからない、けど。
けど。うまく空気をすえなくなる。はけなくなる。
……なんで?息切れなんか、するはずないのに。
バーダックさんにすがると、ぎゅっと抱きしめてくれた。
けど、あたまからはなぜか甲高い悲鳴がはりついてはなれない。息も、くるしいまま。
……
……どのくらいバーダックさんに抱きしめられていたのかわからない。
けど、辺りが静まり返って、バーダックさんが離れてしばらくしてからやっと、私は顔を上げることができた。
そこには申し訳なさそうに立っている黒髪の悟空がいた。
「……すまねぇ、リコリス。オラ……あいつらがおめぇを傷つけたもんだと『勘違い』して暴走しちまったみてぇだ……」
「みてぇじゃねぇ、そうだったんだよ。
……ったく、無駄にリコリスを怖がらせた挙句、あの辺一帯メチャクチャにしやがって」
『勘違い』……そっか、バーダックさんが状況説明してくれたんだ……けど、めちゃくちゃって……?
そう思い、岩場から顔をのぞかせると、先ほどとは変わり果てた荒地が眼前に広がった。
いくつものエネルギー弾を受けて大きく開いた穴。
地層をはっきりと見て取れるほど大きく地面を抉り取り、延々と続く穴。
その端に横たわる五つの屍……
……は、たぶん屍じゃない。
もう一度死んだ者はこの世からもあの世からもいなくなる、とか言われてるけどちゃんと確認できるし……
特戦隊のみんなが『生きてる』ことがわかって、やっと笑う元気が出てきた。
「悟空、やりすぎ……閻魔様に怒られちゃうよ」
へへっと笑うと悟空とバーダックさんもつられて笑った。
「フッ……カカロット、しばらく出禁になっても知らねぇぞ」
「げげっ!それは困るなぁ~、リコリスに会えなくなっちまうかんなぁ」
「心配するトコそこかよ」
よかった、普段の悟空に戻ってくれて……
言葉遣いも違うみたいだし、金髪の悟空はちょっとだけ、怖かったから。
「しかしテメェ、俺まで巻き込もうとしてただろ」
「わりぃな父ちゃん!いること気づかなくってよ!」
「チッ……嘘つけ、このクソガキが」
座り込んだまま悪態をついたバーダックさんに手を差し伸べてケラケラ笑う悟空。
バーダックさんはそれを無視して立ち上がり、そんな悟空に再び舌打ちをした。
「ラディッツはどこだ?あいつに八つ当たりしねぇと気が済まねぇ」
ラディちゃん……とんだとばっちりだ。
ぜひ超逃げてほしい。
「あぁ、あっちの方にいたぞ!
リコリスも一緒に行こーぜ、ラディッツも心配してっしよ!」
「えっと……私は特戦隊の人たちが気になるから、みんなが起きるまでここにいるよ」
「あー……うーん、そっか?リコリスは優しいなぁ。
じゃ、先行ってっからあとで来いよ?」
心配そうな顔をしつつ、悟空は浮き上がった。
「あとあいつらに、わりぃって伝えといてくれ!」
「う、うん……わかった」
相変わらずノリが軽いなぁ……
バーダックさんは前を見つめたまま、悟空は逆にこちらの様子を何度も何度も伺いながら飛んで行った。
私は彼らが見えなくなるまで手を振り続けていた。
……そういえば、あの金色の悟空……
初めて見た気がしないけど、どこかで会ったっけ……?
続く