曼珠沙華の花束を貴方に
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飛んで行ってしまったジュニアたちを見送るターレスさん。
私は彼の後姿を眺めていた。
だって、見れば見るほど悟空やバーダックさんに似てる。
……姿だけは。
「……あの、話って?」
ターレスさんは黙ってこちらを振り向いて、私の目をじっと見つめた。
「……別に、特別話題があるわけじゃねーよ。
ただちょっと気になることがあっただけだ」
それ話題っていうんじゃないの?
「まぁいいや、歩こうぜ。お前、飛べねーんだろ?」
「う、うん……」
参ったなぁ。クウラさんまではいかないにしてもこの人もちょっと苦手なんだよね。
初対面のときの『アレ』があったからかなぁ。
『ちゃんと俺の目を見ろよ、リコリス……ご褒美にキスしてやってもいいぜ?』
うわああああ!!今思い出しても照れる!!
……あの声、あの目……ダメだ、なんかゾクゾク?する。
「リコリス。おい、リコリス!」
「はい!!」
「お前な、人が話してるときにボサッとしてんじゃねーぞ」
完っ全に上の空だった。
なんの話してたんだろ。
「えーっと、おまんじゅうの話だったっけ?」
「馬鹿、リコリスのことについて聞いてたんだよ。
ちょっと噂で聞いたんだよ、お前が記憶喪失だってな」
なんだ、ターレスさんも知ってたんだ。
フリーザさんも知ってたし、特戦隊の人たちから聞いたのかな?
「あー、うん。ちょっとだけね」
「死ぬ間際のことなんにも覚えてねーんだって?」
「うん……なんで死んだのかとかも、わかんなくって」
私がそう言うと、ターレスさんは顔を背けた。
なんか変なこと言ったかな。
「……その、なんか……悪ィ。
気軽に立ち入りすぎた、か?」
意外。ターレスさんも
「……謝ったりするんだ」
「あぁ!?喧嘩売ってんのかてめー!」
すごい勢いで振り返るターレスさん。
心の声漏れてた!!
「ごめんなさいごめんなさい!!」
だってプライド高そうじゃん!!
そういう風に見えなかったんだもん!!
「……チッ、リコリスと話してっと調子狂うぜ」
そう言われましても……私の瞳に言ってくれ、瞳に。
たぶんターレスさんも、クウラさんの言う『瞳の毒』に犯されただけだろうし。
「それよりリコリス、お前 腹減ってんのか?
死人でそんな奴いねーとは思うが……」
「へ?なんで?」
「さっき饅頭がどうのっつってただろ。
もう忘れたのか?脳ミソ現世に置いてきたんじゃねーのか」
「失礼すぎなんだけど!」
「お前には負けるけどな」
そういえばさっき、そんなこと言ったような気がする。
お腹は空いてないけど……
ラディちゃんに案内してもらった針の山の近くにあった『元祖針まんじゅう』、気になってたんだよね。
「ねぇターレスさん、針まんじゅう食べに行こうよ」
「あ?俺は甘いもんなんか食わねーぞ」
「私が食べたいの!」
じーっ……と目を見る。
「……しょーがねー奴だな、ったく」
「やったあ!」
私ってば最強!!
ターレスさんに抱えられて飛んでいると、しばらくして目的の針の山が見えてきた。
そしてその近くを血塗れで歩く、見知った髪型を発見。
「ターレスさん!ちょっと下ろして!」
「あんだよ、我儘な女は嫌われんぞ」
「ターレスさんだからいいの!」
「どーゆー意味だよそれ」
私たちはその血塗れの人物の前に降り立った。
「……なんだ、おめーらか」
疲れ切ったような顔をしてバーダックさんが呟いた。
「どーしたの、その血!!」
見た感じどこも怪我してなさそうだけど……
頭からぐっしょり血を被った彼を見て、ターレスさんは鼻を鳴らした。
「よぉ、色男が形無しじゃねーか」
「ほざけ、思ってもねぇだろ。
しかしターレス、こーゆーのは『血も滴るいい男』っつーんだよ」
水です、それ。
「それを言うなら『血』じゃねーよ。
年寄りの冷や『水』、だ」
挑発するかのように笑うターレスさんと、引き攣った笑顔を見せるバーダックさん。
このふたり、仲がいいんだか悪いんだか……
「じゃなくて!なんでバーダックさん、そんな血塗れなの!?
また誰かと……」
喧嘩でもしたんじゃないの、を言いかけたところで、ターレスさんに遮られた。
「あのなぁ、リコリス。
よく考えてみ……なくてもわかるが、ここは地獄だ。
そしてあいつはいろんな奴らを殺してまわった。とてもとても悪い奴だ。あーいうのは極悪人っつーんだ」
「てめぇもおんなじよーなモンだろ」
バーダックさんが途中で口を挟むが気にせずターレスさんは続ける。
「そしてその極悪人がここで、血の池地獄で痛めつけられていてもなんの問題も疑いもない。
そうだろ?地獄の鬼さんよ」
こいつ……先生になれるんじゃないか。
馬鹿にされたような気もするけど、気のせいということにしとこ。
私は彼が再び見せた意外な一面にまた、感動していた。
しかしバーダックさんはそんな私を無視して話をぶった切る。
「で、俺が責め苦でヒーコラ言ってる間にお前らはデートって訳かよ。
ノーテンキで結構だな」
不機嫌そうに私とターレスさんを見やるバーダックさん。
血のおかげでいつもより二割り増しで怖いんだけど。
「羨ましいだろ?じゃあなジーサン」
ターレスさんは私の手を引いてさっさと行ってしまおうとする。
……が。
ドヒュン!!
鋭い光線が私とターレスさんの間を走った。
それはターレスさんの髪を掠めてどこかに飛んで行ってしまった。
「な……な……!」
驚きすぎて声が出ない。
「……誰が、耄碌クソジジイだって?」
「そこまで言ってな……」
久しぶりに感じた、死の恐怖にへたり込む。
死んでるけど。
……あれ、今までにそんなの感じたことあったっけ?
そんなことを考える私などお構いなしに、ターレスさんはバーダックさんを睨みつつ手のひらの上でエネルギー弾を作る。
「このターレス様に向かって……いい度胸してんじゃねーか……この耄碌クソジジイ!!」
うわ言っちゃったよこの人。
「勝った方がリコリスを連れてくぜ!いいな!?」
「ジジイに負けるわけねーだろ!!
すぐに貴様の墓をたててやる!!」
なんでそんな勝負になるの!!
できれば相打ちでお願いします!!
……というかジュニアくんたち、助けに来てーーー!!!
「オラオラオラァアッ!
どうだリコリス!俺様のパワーは!?」
「迫力ハンパないです!
是非よそでやってほしいほど!!」
いくつもの気弾を連続で発射するターレスさん。
バーダックさんはそれを弾き返して恐ろしい速さの気弾を撃って反撃に出る。
くるっと一回転して私から少し離れたところに着地したバーダックさん。
責め苦で疲れてるはずなのにこの身のこなし……凄い。
「ったく、年寄りを労われっての」
「自分で言ってるじゃん……」
「うるせぇ!お前はもっと離れてろ!」
ここで始めたのは誰よ。
「リコリスは誰にも渡さねぇ!!」
気がつくとターレスさんは大きな光の玉を作ってバーダックさんに向けていた。
「おらっ!避けてみやがれ!!」
「……ッチ!来い、リコリス!!」
「は!?」
バーダックさんは猫みたいに私の首根っこを捕まえて飛び立った。
ちょ、苦しい!!てか殺される!!
「な……ッ!?リコリスを放せ!本気でぶつけんぞ!!」
それを見て少し怯んだ様子でその玉を放つのを躊躇うターレスさん。
「やれるモンならやってみやがれ!!」
絶対やってみやがらないでください!
叫んだバーダックさんは私を抱え直して逃げ出した。
「汚ねぇぞ!バーダック!!
リコリスを返しやがれーーーッ!!」
「羨ましいだろ!じゃあなクソガキ!」
さっきのターレスさんと同じセリフを吐き捨てて、バーダックさんはスピードを上げた。
大きな光の玉を掲げたままのターレスさんを置いて。
あぁ……すごい早さで遠ざかっていく、私の針まんじゅう……
続く