曼珠沙華の花束を貴方に
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「しばらくリコリスを見ていてくれないか?」
ぐったりしたリコリスをつれて帰ってきたパパはそう言った。
パパもやっぱりつかれてるみたいで、オレはあんまりきかないほうがいいかもって思った。
「リコリスをまもるのはオレたちっ!」
オレがそう言ったらパパはあたまをなでてくれた。
「頼んだぞ、一号」
パパがそんなことするなんてめずらしいんだ。
それだけリコリスをたいせつに思ってるんだってオレは思った。
五号がリコリスをパパからうけとると、パパはどこかに行っちゃった。
わるものをころしに行くのかな?
「……リコリス、しんでるのかな」
「やだ!そんなの……」
ぽつりと三号がつぶやいたら、七号がぐすんってはなをならした。
「しんでないぞ、ねてるだけ!」
いちばん上はしっかりするもんだってターレスが言ってたから、オレはつよがった。
ほんとうにしんだみたいにねてるリコリスを五号がじめんにねかせて、オレたちはみんなでリコリスのかおを見てた。
いつおきるかなってそわそわしながら。
そしたらリコリスが言ったんだ。
たぶん、ねごと。
「……り、彼岸花畑……だ……」
ヒガンバナ畑?パパがそだてたあの花畑のことかな?
きになったけど今はまだいっか。
リコリスが目をさますまでガマン。
「リコリス、いきてた!!」
「バカ!おきちゃうだろ!」
六号と三号がおっきな声をだすから、リコリスがゆっくり目をあけた。
おこしちゃったかな?もっとねかせてあげたかったのに。
「ん……ジュニア……くん、たち?」
びっくりしたみたいにリコリスが言った。
「おどろかせた?リコリス」
しんぱいになってオレが声をかけると、リコリスはいつもみたいに笑った。
オレたちがスキな瞳がほそくなる。
ずっと見てたいけど、えがおもいいと思った。
「うん、白雪姫になったかと思った」
へへって笑ってリコリスは言ったけど、『しらゆきひめ』ってなんだろう。
おひめさまのことかな?だったらリコリスはオレたちの……
「そうだよ!リコリスはぼくたちのおひめさま!」
二号がリコリスがおきあがるのをてつだいながら言う。
あいつ、いつもいいところをもってくんだ。
よく気がつくからしょうがないかも。
「きひひっ、じゃあぼくはリコリスのおーじさまだ!」
「四号がおーじさまなんて、よもすえだぜ」
「なんだとー!!」
四号と三号はギャーギャー言ってさわぎだした。
リコリスがこまってるんじゃないかなってちらって見てみたけど、リコリスはたのしそうに笑ってるから、こんかいのところはおおめにみてやるとする。
「仲がいいんだね、みんな」
あったかい目でリコリスはオレを見る。オレの大スキな目。
じっとながめてたら、なんだかからだがビリビリしてきて、うごけなくなった。
「う、うん」
でも、なんだろう。
ポカポカしてきもちいい。
こんなのパパにもかんじなかったし、たたかっててもかんじなかったのに。
「どうしたんだよ、一号っ」
ばんって二号がせなかを叩いてきた。
ちょっといたかった。
「えっと、リコリスの目、よく見るとすっごくおもしろいんだ」
なんて言えばいいかよくわかんないけど、アオいみたいなさみしい色?
きいろみたいなまぶしい色?
けど、オレがそう言ったら三号とか四号もケンカするのをやめてあつまった。
「あの……あ、あんまり見ない方がいいよ……?」
リコリスはこまってるみたいだったけど、どうしても気になって、みんなでじっと見つめてた。
「ムラサキっぽい!」
「バーカ!ミドリだろー!」
「いや!ぜったいピンク!!」
「オレンジにも見えるぞ!」
よけいにうるさくなったみんなよりも、七号はおっきな声をあげた。
「ヒガンバナみたいなアカ色だっ!」
「あ!」
そうだ、思いだした。
あの『ねごと』のこと、きかなきゃ。
「ねぇ、リコリス。ねてるときに『ヒガンバナ畑』って言ってたけど、どんなユメ見てたの?」
「えぇ、本当?……うーん、夢なんか見てたかなぁ」
オレたちにながめられたままのリコリスはこまったように笑った。おぼえてないのかな?
「パパのヒガンバナ畑のユメかなあ」
「パパの彼岸花畑?」
ふしぎそうにリコリスは首をかしげた。
そういえば、知らなかったっけ。
「いろんなところから うえかえてきて、大きな花畑にしたんだ!」
なんでそんなことするのって聞いたらパパは言ったんだ。
「『寂しくないように、花畑にしたんだ』って!」
「へぇー……『お花』が寂しくないようにだなんて、パパは優しいんだね」
オレはこないだ花畑でパパとリコリスが会ったとき、『花』がさみしがるんじゃなくて、パパはリコリスがここに来ることをわかってたのかなって思った。
だから、しんであっちをさみしがる『リコリス』のために、って。
……かんがえすぎかな?
「ねぇ、せっかくリコリスがおきたんだからあそぼーよー」
七号がリコリスにぎゅーってする。
まったく、七号はあまえんぼだな!
うらやましいとか、そんなんじゃないけどな!
……オレはいちばん上だから。
「そうだね!……あ、でも、ひとりいないかも」
「あれ?ほんとだ、五号がいない!」
さっきまでいたのに……
と思ったら、むこうのほうからびゅーんってとんできた。
「なんだよ、起きてんじゃねーか。五号は心配性すぎんだよ」
「だってこわかったんだもん!」
ターレスをよんできたんだ。
リコリスがあんまりしずかにねてたから。
五号とターレスはオレたちのちかくに ちゃくちした。
「まぁ、ちょうどいいか。
少しリコリスと話がしたかったんだ……ふたりでな」
ターレスはあやしく笑った。リコリスはちょっとこわがってるみたい。
……ほんとはいいヤツなんだけど。
「悪いがお前らちょっとどっか行っててくれねーか?」
うーん、いくらターレスでも今はあんまりわたしたくないなぁ。
「オレのリコリスだぞっ!!」
「四号のじゃねーだろっ!オレ『たちの』だ!!」
言いあらそいしてる四号と五号はほっといて。
「でも、オレたち、パパに見ててくれって言われたんだ」
「目が覚めたなら別にいいじゃねーか。なぁ、リコリス?」
ターレスがそう言うとリコリスも、ちょっとなやんで言った。
「ターレスさんがそう言うなら……
……ごめんね、ジュニアくんたち」
「リコリスはきにしないで!
わるいのはワガママなターレス!!」
ぶんぶんと首をよこにふって、二号がおっきな声で言った。
それに六号がうんうんってうなずく。
「はいはい、悪い悪い」
がりがりあたまをかいてターレスは笑った。
……まぁ、あいつがいっしょならリコリスもあんぜんかな?
「リコリスッ、ぜっったいあとであそんでね?」
「やくそくだよっ!」
七号と三号がとびながらさけんだ。
「もちろんだよーーーっ!」
リコリスもまけないくらいおっきな声でへんじして、手をふってくれた。
げんきになったみたいでよかった。
オレは、ターレスとリコリスを見つめながらじめんをけった。
……でもやっぱり、ちゃんときけばよかったかも。
リコリスはたしかにこう言ってた。
『やっぱり彼岸花畑にいたんだ……』
続く