私に息子が生まれた。800年間、子孫を残したいと願ったことは一度も無かったが、私がこの瞬間に子を授かるということは必然であり、抗えるものではないのである。すべては運命である。運命。私の目の前に広がるこの世界の道筋、事象の積み重ね。この子も誕生もその中の一つの事象にすぎない。
だが、そこに運命に縛られない、抗える子供がごく普通の魔導士夫婦の所に生まれた

「ダビデ様。この子は神子なのでしょうか？それとも、忌子なのでしょうか？」

どんな原理なのかこの私でもわからない 未来を見る力を持つ子供。私と同じ〃特異点〃。私は、神が救いを差しのべたのだと思った実際私は、絶望的孤独から脱した。この子供を利用すれば世界の道筋に抗えるかもしれない、今まで誰も成し遂げたことのない境地に達するのだと……

だか、現実はそうはいかないその子供は私のための救いではなく、息子のための救いであった。子供が見せたのだ自ら遠い未来の出来事を息子と手を取り合い運命に抗う様を

「ナラ、例え未来がそうだとしても今しばらく私の元で私を救っておくれ」

「なら、運命に抗って？消してその行為は無駄ではないのだから、絶望しないで前だけを見て」

「いいだろう。小さき神子よ」

できれば、私の元でいてほしかった。その運命をねじ曲げたかった。

「親父、あんたは間違っている！」

「ついにこの時が来たか、ここでやっと中間地点だ。そうであろう、ユール？」

「ダビデ……私は」

「いい。息子と行くがいい、これより先は私が抗っても仕方がない……ユールよ次はお前が抗う番だ。覆して見せろこれから起こる道筋を」

麗しくそして、聡明に育った子供は息子とその仲間と旅立った。結局変えられたのは、あったのだろうか？次に会うときは恐らくわかるだろう

そうして、私は息子の率いる抵抗軍の進行を沈黙をもって見届け、最終決戦の日攻めてくる息子を道筋通り偽物で向かいうち、本物はユールの待つ抵抗軍の基地へ向かった。
久しぶりに会ったユールに会った瞬間、その顔を見て悟った。本当に無駄ではなかったのだと少しでも抗えたのだと…………
言葉では伝えられないが、これほどの嬉しいことはないだろう。

「ユールは、本当にお前にはもったいない娘だ。だが、私は最早この世から退場せねばならん。彼と一つになるのだ」

「…………！？何！！？」

「さらばだ、ソロモン！我が愛し息子よ！」

「………………！？」

「いや、むしろお前が羨ましかったユールと並べるお前が…………」

また、会おうユール。真の理想郷の果てで…………