イル・イラーがすべての人間に「魔法」を与えて800年余ーーーー

「理想郷」の建設計画は頓挫していた。崇高な志を魔導士たちは忘れ……………

圧倒的な魔法の力を背景に異種族たちに圧政をしいていた。

魔導士たちは、異種族の領土に「愚々塔」という巨大な魔法装置を建造し、そこから思考能力を奪う精神感応系魔法を発し、人間以外の知的生命体から知能を奪い去り、意のままに従わせ搾取していた。

「ーで、俺達はそんな魔導士正教連に嫌気がさして大聖堂府を飛び出してきた……『抵抗軍』ってわけさ！」

少女を救いだし、神杖を奪取した私達は、空飛ぶターバンに乗り込み破壊した塔を後にする

「今日は、帰ったら宴ね。」

「ナラ様は、程々にしてくださいね」

「何をいうアルか、ナラは私に付き合って貰うアルよ！」

ソロモンは、少女への説明をしており、私はファーランにがっちりと捕まえられていた










「飯じゃ、飯！飯もってこんかい！！腹が減りすぎて、正教連の犬どもを焼いて食っちまうところじゃった。ワハハハハ！！」

「クールじゃないな、君の暴食ぶりは。そんなんだから、君の筋肉は美しい均衡をたもてないんだ」

「ウーゴ～～～てめぇなんで毎回自分で戦わねーんだよ～～俺やソロモンのうしろにかくれてばっかりでよ～～」

「それはホラ…俺って開発専門だし……それにイスナーンの雷魔法ってかっこいいし！ねっ！」

「どいつもこいつも同じアル。汗臭くて汚い男どもアルなーナラ？」

「いいじゃない。賑やかで、私は楽しいわ」

いつも通り自由に寛ぐ仲間に、微笑み見守る。

私という存在がこの世界に生まれて、もう何年だろうか………物心ついた頃には、１人高い塔に捕らわれており混乱したこともあったが今はこうして、沢山の仲間や大切な人に囲まれて……使命にしばられず生きるのはとてもとても幸せだ。

お姉ちゃんも彼も元気だといいのだけれど

「お嬢様、お嬢様！」

「………アルバ、どうしたの？」

「大丈夫？久しぶりの戦闘だったから、疲れちゃった？？あ、それでさっきの子なんだけど、名前はシバ。そしてこちらの方はナラお嬢様。坊っちゃんの許嫁さ」

「ありがとうアルバ。でも、お嬢様はやめて？それに、許嫁というのも彼処にいた時のもの。今は関係ないわ」

塔攻略後からずっと、ファーランにつかまっていて、新しい仲間になるであろう少女に、話しかけていたアルバが私を紹介する。
私は、よろしくね？とシバに手を差し出すが

「……………私、塔に帰る」

「えっ、何でだい？」

「神から授かった神聖な務めを果たさないといけないから」

シバは、立ち上がり先の塔に帰ると言い出しこれまで賑やかだった周りがシンーっと静かになる

「でも、シバ、あの塔で、無理やり魔法を使い続けさせられていたら、君は死んでしまうところだったんだよ？」

「無理やりなどではないわ、バカめ。私は命を賭して不浄を統制していたのだ！不浄なるものの王、ダエーフの手の者の侵略により、善と邪悪が混ざりあってしまっているこの世界において、これは使命！」

使命………どの世界でもその言葉は、つきまとうのね

差し出していた手を下げ、尚も語る少女を見ていると頭に彼の手がのり、優しく撫でてくれるそれに、視界を閉ざし続きを聞く

「不浄の統制ねぇ…………でもそのご立派なお役目は、『塔』の上から人間以外のみんなをバカにする魔法を垂れ流すことだぜ、お嬢ちゃん」

「そうだ。奴らはこの世界の膿だ。異種族どもは、畏れ多くも我らが父イル・イラー様の使者たる神聖な我々魔導士を……かつては虐げ、頭からボリボリむさぼり喰っていたと『聖典』第2章4節から8節にしっかりと記されているではないか！！！！」

「「「……………………」」」
「ハハッ、イッちゃってるアルよ。口調まで変わってるアル」

「そう言うなよ。使命のため死ぬのは栄誉、そのお迎えが来るのを待つような教えだぜ」

「残念じゃのう、わしらの目標は、その異種族たちを魔導士の支配から全員解放することじゃ」

「使命があるのは、確かにいいことだけれど、ある意味それは重荷。せっかくだから、使命なく生きてみない？」

「！！！！不浄だ！不浄だ！不浄だ！神罰よくだれ！我らが父よこの『不浄の者』どもに死罰を与えたまえ！！！」

「！？待って！」

不浄だ！といった少女は、外へと飛び出してしまったのを咄嗟に追いかける

「ナラ待て、俺も行く」

「わかった。」

それを、ソロモンが呼び止め二人で飛び出した少女を追うことになった。

「どうか、無事でいて」