一目見ただけで分かった。彼に似た容姿に、あの子の纏っていたルフに似た輝きに

アラジン……私達の愛し子。はじめまして、生まれてきてくれてありがとう。ウーゴ、アラジンを立派に育ててくれてありがとう
こんなに、近くにいるのにあなたを抱きしめられない他人行儀になってしまうのをどうか許して…………









シンドリア王国へ逃げて何年かの月日が流れた、アルバたちの追っ手は今のところない。生活は安定したけれど、不安要素は沢山ある
ファーランたちの側を離れたこと、白雄たちはどうなったのか？
予言の書がこの世界の迷宮攻略者の手に渡っていることによる、異世界の認識、知識の悪用。

文明が飛躍することはいいことだけれど、飛躍しすぎるのも考えもの…それにあれを造るのは絶対にあってはならない。時代を傍観していただけで詳しい造り方は、映っていないけれどアルバたちが模造品のモンスターを造ったようになっては世界が枯れ果ててしまう。そうでなくても、アルバたちが今度こそイル・イラーを降ろし、計画を遂行させようと動いている。

「あれは…………煌帝国の船？もしかして、居場所がバレたの？それとも」

「大丈夫だ、安心しろあれにアイツらはいない。しかし見つかると厄介だ、帰るぞナラ」

「うん」

どうにも八方塞がりになりながら、ソロモンと港付近を歩いているとシンドバット王と8人将、愛し子たちがゾロゾロと勢揃いし一隻の船を迎えた。
その船は、煌とかかれた旗を靡かせておりその一群の中に一瞬、白雄に似た人と目が合ったような気がしながら、ソロモンの言う通りに港を後にした。















それからも、何事もなく………１つ変化があるとすればそれは

「こんにちは。ナラお姉さん！」

「はい。こんにちはアラジン様、本日の勉強はもう終わったのですか？」

「勿論さ！お姉さんは、今日は何をしていたんだい？」

「私は、散歩ですよ」

時々、愛し子が訪ねて来る様になったといっても家に招待することは出来ない為こうしてシンドリア内を散歩している

「お姉さんは散歩が大好きなんだね！なら、旅は………好きかい？」

「えぇ、出来ることなら旅をしたいくらいに……私はもう叶うことはないでしょうがアラジン様は、沢山旅をして沢山素敵な物や人に出会ってくださいね」

「うん！僕、沢山旅をするよ」

会話は核心をつくことはなく、進む。私達が親子らしく振る舞うことはできないのだ
心の中でただ、愛し子に謝ることしかできない

「またね！ナラお姉さん」

「また……」

ひとしきり話すと、アラジンは空を見て、名残惜しそうに別れをつげるそれに、精一杯の笑顔で見送り自分も家路につく

「お帰り 」

「ただいま、ソロ。あの子は……本当にいい子に育ってる」

「あぁ。まぁ、少し女好きなのが気になるが、概ねいい子に育ってる」

「容姿はまさしく、小さき時の貴方にそっくり」

「笑った顔は、ナラに似てるぜ？」

アラジンと会って帰って来た時の会話は、いつもそうだ。アラジンとの会話を思い出してソロに話したり、ここが私達に似てるとか………
それから、しばらくアラジンはお友達と一緒にザガンの迷宮攻略へ出掛けたのを人混みに紛れてこっそりと二人で見送った

「いってらっしゃい、私達の愛し子」

どうか無事元気に帰って来ることを祈って………