気を付けましょう
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※未成年の飲酒表現がありますが、推奨しておりません。未成年の皆様はルールをお守り下さい。
これから、冷蔵庫を開けて最終確認を行う。
寮部屋に設置された小さな冷蔵庫には隙間無く酒類が並び、冷凍庫には業スーで買った氷が。先生にバレたら説教どころではない。扉を閉めた後、室内を確認する。基本、必要最低限の物しか置いてないので片付けも掃除も楽。テレビの正面に折り畳み式のローテーブルを出して準備は整った。ビッグサイズのビーズクッションに体を埋めて携帯を弄じっていると扉がノックされた。返事をするとナイロン袋を片手に硝子が来店。
「いらっしゃい、硝子」
「はい。ママにお土産」
「ありがとう」
彼女の中の『スナック如月』が既に始まっている。袋の中身は硝子が選んだお菓子とおつまみだった。冷蔵庫を開けると硝子は迷うことなく麦酒を手にし、早速プルタブに指を掛けてプシュッと良い音をさせている。そして、先程まで私が体を埋めていたクッションへと腰を下ろして一口。
「硝子、まだ傑来てない」
「あ、忘れてた」
笑いながら硝子は二口目を口にしている。
傑が『スナック如月』に来たいと言うので3人の予定を照らし合わせて今日となった。別に傑とサシ飲みしても気にしないのだけれど、硝子が「絶対にダメ。危ないから」と物凄く真剣に言うので反論するのは諦めた。
冷凍庫から冷酒を取り出してグラスと共に机へと運ぶと控え目なノック音が聞こえてくる。傑だ。私は扉へと向かう。ゆっくりと開けて見ると廊下に居た傑と目が合ったのだけれど、私は彼を凝視した。いつもはお団子に纏めているのに、今は髪が下ろされている。初めて見るその姿があまりにも新鮮で、私はつい見入った。そんな私に傑は声を潜めて、入ってもいいか尋ねてきた。そうだ、此処は女子寮の廊下だった。
来店した彼の手には硝子と同様に袋を提げていて、私が袋を見つめていることに気付いた傑は「お土産」と言ってコンビニスイーツを見せてくれた。
「夏油、おっつー」
「お疲れ。硝子はもう飲んでるんだ」
「傑は何がいい?麦酒?」
冷蔵庫の前で身を屈めて尋ねると、すぐ傍に彼がやって来て一緒に中を見始めた。その距離は今までにないくらい近かった。
「沢山あるね」
「あそこにいるお客さんが沢山飲むから」
「そうなんだ。じゃあ、麦酒貰うよ」
「500じゃなくていいの?」
内容量が少ない方の缶を選ぼうとするので、遠慮しなくていいよ、と伝えると「じゃあ、此方」と多い方を手にした。傑が動く度に目の前で長い黒髪が揺れて、つい視線がそちらへと行く。同じくらいの長さかな、と見ていたらその視線に気付いた傑は首を傾げている。
「どうかした?」
「傑がお団子にしてないから珍しくて」
「ああ、見慣れないからか」
「うん。でも、似合うね」
切れ長の目が僅かに丸く開いて少し間が空いてから、傑は「そうかな」と麦酒を持っていない方の手で後頭部の髪を撫で付ける。個人的に男性が髪を伸ばしていると暑苦しいイメージがあったけれど、目の前の傑にはそういった印象は無くどちらかと言うと爽やかな印象だった。
「ママ、おかわり頂戴」
早々に1本目を呑み終えた硝子が突然、後ろから抱き着いてきた。微かに麦酒の匂いもするけど、シャンプーなのかヘアオイルの香りなのかとても良い匂いがする。冷蔵庫から傑と同じ麦酒を手渡すと反対の手で手を握られ、テーブルまで一緒に移動した。その後からついて来た傑には用意していた丸座布団に座ってもらい3人での呑みがスタート。
「このクッション、『人をダメにする』てヤツ?」
「うん。お店で座らせて貰ったら凄く良くて」
「そんなに良いんだ。座ってみたいな」
「悪いね、此処は私の特等席なの」
「いや、朔耶のだろう」
硝子はクッションに身を委ねて麦酒を美味しそうに飲んで見せた。この子、譲る気ないな。
任務での話や買い物へ行った時の話をしている内に時間は流れ、お酒も進んで冷蔵庫内に空きが生まれ始めた頃、私は傑が持って来てくれたケーキに舌鼓を打っていた。硝子は日本酒、傑は檸檬サワーを口にしている。そんな時、携帯が鳴り始めた。反応したのは傑で、メールが受信されたらしく操作を始める。その様子に硝子はクッションから身を乗り出して画面を覗き見るかのように首を伸ばす。
「彼女?」
「彼女なんていないよ。悟からメール」
ケーキを堪能しながら、意外だと思った。傑は顔立ちも良いし高身長で物腰が柔らかだから彼女がいても不思議ではないと思っていた。悟と硝子も『あいつには絶対、女がいる』と、勝手な彼女像をあれこれと想像して語っていた。けれども、そのどれもが予想外れだったので硝子はつまらなそうな顔をしてグラスに入った日本酒をちびりと飲み干した後、煙草を吸いに出て行った。
「本当に彼女いないの?」
「いないよ。え、意外?」
「うん。だって傑、町で女の子に声掛けられたり、連絡先聞かれたり渡されたりしてるんでしょ?」
「それ、誰情報?」
「悟」
傑は額に手を置いて苦い表情をしている。
「モテるんだね」
「いや、そんなことないさ。私より悟の方がモテる」
「悟、顔だけは良いから」
私の言葉に同意するように傑は数回頷いた。悟の顔面偏差値はそれはそれは高い。傑と同様に背も高いし、頭だって良い。それなのに言動が何とも残念過ぎる。
「この前、他校の女の子たちが悟に声を掛けたんだけど、その子たちに失礼なことばかり言ってさ。 大変だった」
「悟、刺されて良いと思う」
「でも、無下限あるから」
それは残念。
大吟醸をちびりと口にすると机に放置していた携帯が着信を告げた。ディスプレイを見ると母からで、通話をするため外へ出ようと携帯を手にする。
「ちょっと外行ってくる」
「彼氏から?」
「いないよ彼氏なんて」
そこへ丁度、喫煙終わりの硝子が帰って来た。
「電話?」
「うん。お母さんから」
「私の部屋使いなよ。暑かったら冷房点けていいから」
「ありがとう」
硝子の厚意で部屋を借りることにした。普段の状態であればそんなに話すことは無いのだけれど、お酒が入るとどうも饒舌になるらしく思っていた以上に母と話し込んでしまう。電話を終えてからトイレに寄り、それから部屋へと戻ると状況が変わっていた。
「ごめん。朔耶のとっておきを飲ませたらこうなった」
テーブルに鎮座する緑白色の大瓶はアルコール度数高めの梅酒。私は普段、水割りやソーダ割りにして楽しんでいるのだが、どうやら傑はロックで飲んでしまったらしく、テーブルに突っ伏した状態で寝ている。おーい、と体を揺すっても肩を叩いても全く反応が無い。完全に酔い潰れているようで耳は真っ赤、頬は少し赤らんでいる。
「硝子。今日、お泊まりしていい?」
「良いけど、どうすんのコレ?」
「仕方ないから、このまま寝かせて明日早めに帰ってもらうしかないよ」
傑の部屋は知らないし、悟に回収に来てもらっても絶対騒ぎそうだ。硝子と共に片付けを済ませ、エアコンのタイマーを設定して『スナック如月』はこれにて閉店。
そして、午前4時半。
傑を起こしにこっそりと部屋へと行くと大きな体がベッドに横たわっていて唖然とした。テーブルで寝るのが苦になったのか寝惚けたのかは不明だけれど、早く起きて欲しいし、私の愛用枕を抱き締めるのはやめて頂きたい。肩を叩いて呼び掛けると昨晩と違って僅かに身動ぎをしたので、同様のことを繰り返してみる。
「傑、朝だよ」
「・・・ん、なんで、朔耶?」
「おはよう」
寝起きの傑は状況を飲み込めていないらしく怪訝な表情をして私を見つめてくる。それがだんだんと状況把握出来て来ると焦った表情でベッドから流れる様な動作で床へと下り、項垂れながら正座した。
「本当に申し訳ない」
「いや、あの梅酒について説明しなかった私も悪いと思うから気にしなくていいよ。それより、二日酔いなさそう?」
「・・・胃が重い」
念の為に胃薬を買っておいて良かった。コップにミネラルウォーターを注いで薬と共に渡せば、蚊の鳴くような声で再度謝罪された。
「最近、朔耶に世話になってばかりで格好がつかないな」
「世話、て言うほど何もしてないけど。それより、携帯が点滅してるよ」
「げっ、悟からの連絡が怖いくらい来てる」
「帰ったら質問攻めだね」
「うわー、嫌だ」
心底嫌そうな顔をする傑が面白くて、つい笑ってしまう。憂鬱そうな顔をしつつ胃薬と水を口にした傑はズボンのポケットに携帯を押し込んでそろりと立ち上がった。
「まだ時間早いから誰も出歩いてないと思うけど」
「うん、気を付けるよ。・・・あのさ、今回のことで出禁になったりする?」
「しないよ」
酔って寝ていただけなのに出禁にする理由がない、と告げれば傑はホッとしたような表情をしていた。女子寮の玄関で傑を見送った後、部屋の窓を全開にして空気を入れ換えながら、悟の質問攻めをどう対応するのかと心配になった。
その後、私のベッドで傑が寝ていたことを硝子に伝えると、
「夏油がケガして帰って来ても絶対治さないから」
と、今までに見たことないくらい怒っていたのだった。
(2023.11.23)
これから、冷蔵庫を開けて最終確認を行う。
寮部屋に設置された小さな冷蔵庫には隙間無く酒類が並び、冷凍庫には業スーで買った氷が。先生にバレたら説教どころではない。扉を閉めた後、室内を確認する。基本、必要最低限の物しか置いてないので片付けも掃除も楽。テレビの正面に折り畳み式のローテーブルを出して準備は整った。ビッグサイズのビーズクッションに体を埋めて携帯を弄じっていると扉がノックされた。返事をするとナイロン袋を片手に硝子が来店。
「いらっしゃい、硝子」
「はい。ママにお土産」
「ありがとう」
彼女の中の『スナック如月』が既に始まっている。袋の中身は硝子が選んだお菓子とおつまみだった。冷蔵庫を開けると硝子は迷うことなく麦酒を手にし、早速プルタブに指を掛けてプシュッと良い音をさせている。そして、先程まで私が体を埋めていたクッションへと腰を下ろして一口。
「硝子、まだ傑来てない」
「あ、忘れてた」
笑いながら硝子は二口目を口にしている。
傑が『スナック如月』に来たいと言うので3人の予定を照らし合わせて今日となった。別に傑とサシ飲みしても気にしないのだけれど、硝子が「絶対にダメ。危ないから」と物凄く真剣に言うので反論するのは諦めた。
冷凍庫から冷酒を取り出してグラスと共に机へと運ぶと控え目なノック音が聞こえてくる。傑だ。私は扉へと向かう。ゆっくりと開けて見ると廊下に居た傑と目が合ったのだけれど、私は彼を凝視した。いつもはお団子に纏めているのに、今は髪が下ろされている。初めて見るその姿があまりにも新鮮で、私はつい見入った。そんな私に傑は声を潜めて、入ってもいいか尋ねてきた。そうだ、此処は女子寮の廊下だった。
来店した彼の手には硝子と同様に袋を提げていて、私が袋を見つめていることに気付いた傑は「お土産」と言ってコンビニスイーツを見せてくれた。
「夏油、おっつー」
「お疲れ。硝子はもう飲んでるんだ」
「傑は何がいい?麦酒?」
冷蔵庫の前で身を屈めて尋ねると、すぐ傍に彼がやって来て一緒に中を見始めた。その距離は今までにないくらい近かった。
「沢山あるね」
「あそこにいるお客さんが沢山飲むから」
「そうなんだ。じゃあ、麦酒貰うよ」
「500じゃなくていいの?」
内容量が少ない方の缶を選ぼうとするので、遠慮しなくていいよ、と伝えると「じゃあ、此方」と多い方を手にした。傑が動く度に目の前で長い黒髪が揺れて、つい視線がそちらへと行く。同じくらいの長さかな、と見ていたらその視線に気付いた傑は首を傾げている。
「どうかした?」
「傑がお団子にしてないから珍しくて」
「ああ、見慣れないからか」
「うん。でも、似合うね」
切れ長の目が僅かに丸く開いて少し間が空いてから、傑は「そうかな」と麦酒を持っていない方の手で後頭部の髪を撫で付ける。個人的に男性が髪を伸ばしていると暑苦しいイメージがあったけれど、目の前の傑にはそういった印象は無くどちらかと言うと爽やかな印象だった。
「ママ、おかわり頂戴」
早々に1本目を呑み終えた硝子が突然、後ろから抱き着いてきた。微かに麦酒の匂いもするけど、シャンプーなのかヘアオイルの香りなのかとても良い匂いがする。冷蔵庫から傑と同じ麦酒を手渡すと反対の手で手を握られ、テーブルまで一緒に移動した。その後からついて来た傑には用意していた丸座布団に座ってもらい3人での呑みがスタート。
「このクッション、『人をダメにする』てヤツ?」
「うん。お店で座らせて貰ったら凄く良くて」
「そんなに良いんだ。座ってみたいな」
「悪いね、此処は私の特等席なの」
「いや、朔耶のだろう」
硝子はクッションに身を委ねて麦酒を美味しそうに飲んで見せた。この子、譲る気ないな。
任務での話や買い物へ行った時の話をしている内に時間は流れ、お酒も進んで冷蔵庫内に空きが生まれ始めた頃、私は傑が持って来てくれたケーキに舌鼓を打っていた。硝子は日本酒、傑は檸檬サワーを口にしている。そんな時、携帯が鳴り始めた。反応したのは傑で、メールが受信されたらしく操作を始める。その様子に硝子はクッションから身を乗り出して画面を覗き見るかのように首を伸ばす。
「彼女?」
「彼女なんていないよ。悟からメール」
ケーキを堪能しながら、意外だと思った。傑は顔立ちも良いし高身長で物腰が柔らかだから彼女がいても不思議ではないと思っていた。悟と硝子も『あいつには絶対、女がいる』と、勝手な彼女像をあれこれと想像して語っていた。けれども、そのどれもが予想外れだったので硝子はつまらなそうな顔をしてグラスに入った日本酒をちびりと飲み干した後、煙草を吸いに出て行った。
「本当に彼女いないの?」
「いないよ。え、意外?」
「うん。だって傑、町で女の子に声掛けられたり、連絡先聞かれたり渡されたりしてるんでしょ?」
「それ、誰情報?」
「悟」
傑は額に手を置いて苦い表情をしている。
「モテるんだね」
「いや、そんなことないさ。私より悟の方がモテる」
「悟、顔だけは良いから」
私の言葉に同意するように傑は数回頷いた。悟の顔面偏差値はそれはそれは高い。傑と同様に背も高いし、頭だって良い。それなのに言動が何とも残念過ぎる。
「この前、他校の女の子たちが悟に声を掛けたんだけど、その子たちに失礼なことばかり言ってさ。 大変だった」
「悟、刺されて良いと思う」
「でも、無下限あるから」
それは残念。
大吟醸をちびりと口にすると机に放置していた携帯が着信を告げた。ディスプレイを見ると母からで、通話をするため外へ出ようと携帯を手にする。
「ちょっと外行ってくる」
「彼氏から?」
「いないよ彼氏なんて」
そこへ丁度、喫煙終わりの硝子が帰って来た。
「電話?」
「うん。お母さんから」
「私の部屋使いなよ。暑かったら冷房点けていいから」
「ありがとう」
硝子の厚意で部屋を借りることにした。普段の状態であればそんなに話すことは無いのだけれど、お酒が入るとどうも饒舌になるらしく思っていた以上に母と話し込んでしまう。電話を終えてからトイレに寄り、それから部屋へと戻ると状況が変わっていた。
「ごめん。朔耶のとっておきを飲ませたらこうなった」
テーブルに鎮座する緑白色の大瓶はアルコール度数高めの梅酒。私は普段、水割りやソーダ割りにして楽しんでいるのだが、どうやら傑はロックで飲んでしまったらしく、テーブルに突っ伏した状態で寝ている。おーい、と体を揺すっても肩を叩いても全く反応が無い。完全に酔い潰れているようで耳は真っ赤、頬は少し赤らんでいる。
「硝子。今日、お泊まりしていい?」
「良いけど、どうすんのコレ?」
「仕方ないから、このまま寝かせて明日早めに帰ってもらうしかないよ」
傑の部屋は知らないし、悟に回収に来てもらっても絶対騒ぎそうだ。硝子と共に片付けを済ませ、エアコンのタイマーを設定して『スナック如月』はこれにて閉店。
そして、午前4時半。
傑を起こしにこっそりと部屋へと行くと大きな体がベッドに横たわっていて唖然とした。テーブルで寝るのが苦になったのか寝惚けたのかは不明だけれど、早く起きて欲しいし、私の愛用枕を抱き締めるのはやめて頂きたい。肩を叩いて呼び掛けると昨晩と違って僅かに身動ぎをしたので、同様のことを繰り返してみる。
「傑、朝だよ」
「・・・ん、なんで、朔耶?」
「おはよう」
寝起きの傑は状況を飲み込めていないらしく怪訝な表情をして私を見つめてくる。それがだんだんと状況把握出来て来ると焦った表情でベッドから流れる様な動作で床へと下り、項垂れながら正座した。
「本当に申し訳ない」
「いや、あの梅酒について説明しなかった私も悪いと思うから気にしなくていいよ。それより、二日酔いなさそう?」
「・・・胃が重い」
念の為に胃薬を買っておいて良かった。コップにミネラルウォーターを注いで薬と共に渡せば、蚊の鳴くような声で再度謝罪された。
「最近、朔耶に世話になってばかりで格好がつかないな」
「世話、て言うほど何もしてないけど。それより、携帯が点滅してるよ」
「げっ、悟からの連絡が怖いくらい来てる」
「帰ったら質問攻めだね」
「うわー、嫌だ」
心底嫌そうな顔をする傑が面白くて、つい笑ってしまう。憂鬱そうな顔をしつつ胃薬と水を口にした傑はズボンのポケットに携帯を押し込んでそろりと立ち上がった。
「まだ時間早いから誰も出歩いてないと思うけど」
「うん、気を付けるよ。・・・あのさ、今回のことで出禁になったりする?」
「しないよ」
酔って寝ていただけなのに出禁にする理由がない、と告げれば傑はホッとしたような表情をしていた。女子寮の玄関で傑を見送った後、部屋の窓を全開にして空気を入れ換えながら、悟の質問攻めをどう対応するのかと心配になった。
その後、私のベッドで傑が寝ていたことを硝子に伝えると、
「夏油がケガして帰って来ても絶対治さないから」
と、今までに見たことないくらい怒っていたのだった。
(2023.11.23)