護衛任務
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星漿体護衛任務2日目。
午前9時、沖縄に無事到着。
その2時間後、私たちは拉致犯が待つ建物へ突入。黒井さんを無事救出。そして、拉致犯を捕縛。
目の良い悟が調べたところ男たちは非術師だった。そして、彼らの持ち物からは盤星教信者である証拠も発見された。
正直、ドラマや漫画等の様な交渉や戦闘があるのかと想像していた。しかし、実際は悟が一蹴りして終了。罠を疑い、周囲を探索したが呪詛師が潜んでいる形跡もない。黒井さんが何者かにすり替わっているのでは?とも思ったが御本人に間違いなかった。
「なあ?この拉致犯使って盤星教に交渉出来んじゃね?呪詛師サイトの書き込みの削除と今後一切の妨害を止めさせんの」
「誘拐の件に盤星教が絡んでいるのは確実だけど、書き込みに関与している証拠がない」
「たぶん、盤星教の代表は誘拐の件もサイトの書き込みの件も関与を否定するよ。『信者が勝手にやりました』って。どうせ証拠も残してない」
盤星教に限らず、大きい組織内でのトカゲの尻尾切りなど茶飯事だ。証拠を消すことなど造作もない。それに交渉したところで無駄足となるのも目に見えているし、盤星教側が“非術師“という立場を利用し『脅された』などと訴えてくる可能性も大きい。
兎にも角にも、私たちは護衛の任務を続けるしかない。
現在12時。
予定では15時の飛行機で東京に帰り、その後は天内さんの賞金が取り下げられるまで高専内に避難をすることにしている。
「コレはどうじゃ??」
「理子様、私にコレはちょっと…」
「傑くーん!コレなんかどうかしら?」
「あー、いいんじゃない(※適当)」
「コッチ見て言ってくんね?」
なんでっ、皆で楽しく水着選んでんの??
夜蛾先生に連絡をし終え、4人を探しに行けば衣料品店の中で水着選びに夢中になっていた。旅行に来たんじゃないんだけど…。
「朔耶、海行くぞ!!」
「はぁ?」
沖縄と言ったら海だろ、とドヤ顔で言う悟に唖然としてしまう。
「おい」
「はい?え?」
「妾と黒井とで選んでおいたぞ!」
振り返り見れば、此処にもドヤ顔の人がいた。ズイッと突き出された一着の黒い水着。選んで欲しいと頼んだ覚えは一切ない。
「フッ、妾の要望に応えてくれるじゃろ?」
「・・・」
今、無性に東京へ帰りたくなった。
「「めんそーれー!!!!」」
海へと走る悟と天内さんに色々と突っ込みたくなったけれど楽しそうに笑う彼女を見たら、そんなことは言えなくなってしまった。結局、私は彼女たちが選んだミニワンピースの様な水着を着た。けれど背中が異様なくらい大きく開いていたのでラッシュガードを着て前のファスナーはしっかりと上まで上げている。
「まさか、盤星教信者…非術師にやられるとは。自分が情けない」
「不意打ちなら仕方ないですよ。私の責任でもある」
波打ち際で燥いでいる2人を傍観しながら黒井さんは肩を落としていた。傑から聞いたところ、彼女は呪詛師を圧倒するほど強いとのこと。けれども、『Q』や呪詛師たちの襲撃を経て、周囲をより一層警戒していたというのに彼女は連れ去られた。それも、その際の記憶がないと言う彼女に私は疑問を抱く。さっき捕縛した盤星教信者に彼女を拉致する力量はない。相当腕の立つ者がいるか、人を攫うことに長けた術式を持つ者がいるのか…。この件は謎が多過ぎる。
「それより私は沖縄を指定してきたことが気になります」
「時間稼ぎじゃないんですか?理子様を殺められなくても明日の満月に間に合わないよう」
「それなら交通インフラの整っていない地方を選びます」
「!!まさか奴ら空港を占拠する気じゃ」
「かもしれません。でも大丈夫。沖縄に来たのは私達だけじゃない」
那覇空港は現在、灰原と七海の1年生コンビが見張りをしてくれている。念の為、空港の外に雷虎を配置しているので何かあればすぐに対応は可能。暫し雷虎の視覚に集中していると波打ち際にいた悟と天内さんがわーぎゃーと盛り上がり始めた。そして、此方に向けて大きく手を振ってくる。
「ナマコがいたぞー!!」
「ナマコじゃー!!」
「ナマコであんなにテンション上がるんですね」
「間近で見られて楽しいんだと思います」
「悟ー、生き物で遊ぶな」
ナマコを手に持った悟はあろうことか天内さんの方へぽいっと投げた。悲鳴を上げた彼女の反応を面白がって海水の中からまたもナマコを拾い上げる。それに気付いた天内さんは一目散に逃げ出し、悟はナマコを持って彼女を追い掛けた。
「アイツは小学生か」
「低レベルな…」
悟の行動に私と傑が呆れていると、黒井さんは苦笑いを浮かべていた。
「いいんでしょうか、観光なんて…」
「言い出したのは悟ですよ。アイツなりに理子ちゃんのことを考えてのことでしょう。でも、そろそろ。悟!!時間だよ」
帰りの飛行機の時間があるため、ぼちぼち移動しなければならない。
「帰るのは明日の朝にしよう」
海から上がって来た悟の提案に傑も私も戸惑った。
「天気も安定してんだろ。それに東京より沖縄の方が呪詛人の数は少ない。飛行中に天内の賞金期限が切れた方がいいっしょ」
「確かに呪詛師は少ないだろうけど…」
「悟。昨日から術式を解いてないな」
傑の指摘に僅かに目を開いて見せた悟に私は口から、は?と溢れそうになるのを押し留めた。
「もしかして一睡もしてないの?」
「一徹なんて大したことないって」
「今晩も寝るつもりないだろ。本当に高専に戻らなくて大丈夫か?」
「問題ねぇよ。桃鉄99年やった時の方がしんどかったわ。それに、お前も朔耶もいる」
傑の胸を拳で突いた悟はニッと笑った。傑は仕方ないな、という表情で笑い返している。余裕そうな顔をしている悟だけれど、本当に大丈夫だろうか。二徹で術式フル稼働なんて想像以上にしんどいに決まっている。
「先生にスケジュール変更の電話しないと」
「灰原たちには私から連絡しておくよ」
「うん。…ねえ。本当に悟、大丈夫?」
「本人がああ言ってるんだ。悟を信じよう」
最強コンビの片割れがそういうのだから、信じてみよう。
それから私たちは海から上がり沖縄観光をした。郷土料理を食べ、カヌーで自然を堪能し、人気スポットの水族館へも足を運んだ。特大の水槽の中を泳ぐジンベエザメに迫力を感じながらその姿の美しさに任務のことを忘れて目を奪われる。今度は硝子も一緒に来れたら良いな、なんて思っていると天内さんも足を止めて悠々と泳ぐ魚たちを眺めていた。けれども、彼女の眼は水槽の中ではなく、もっとずっと遠くを見ている様な気がして私は歩み寄るのを止める。
この子は一体、何処を見て、何を思っているのだろうか。
この日の夕食は、空港に居た灰原と七海も呼んでホテルから程近い飲食店で皆一緒に摂った。空港に灰原と七海、雷虎を1日配置したけれど、これといった異変はなかった。やはり明日、東京に帰ってから高専に帰るまでが正念場かもしれない。
「明日、朝一の便で先に帰ろうと思う」
夕食を終え、2年生で最後尾を歩きながら私は提案する。
「東京に帰って来たところを狙われるかもしれないから。賞金目当ての呪詛師は諦めるだろうけど、盤星教が何か仕掛けてくるかもしれない」
「確かに、高専に戻るまでの間に襲撃してくる可能性は高い」
「朔耶、1人で大丈夫か?」
1年生のどちらか或いは両方を私に付けようかと2人は言うが、私はそれを断った。
「私には頼もしい式神がいるから大丈夫」
「だったら、今晩は空港にいる式神解けよ。バテんぞ」
「最終便が到着したら解くつもり」
本当は一晩中、雷虎を見張りに付けようかと思っていたけれど釘を刺されてしまった。
「ねえ」
「ん?」
「どうかした?」
もう間もなくホテルに着こうかというタイミングで私はずっと気になっていたことを切り出す。
「あの子が同化を拒否したら、どうするの?」
「ああ、それなら」
「もう話し合ってあるよ」
「…?」
此方が真剣に聞いているというのに、悟と傑は顔を見合わせて笑っていた。
「「同化なし」」
天元様と戦うことになるかもー、などと笑って2人は言う。しかし、続け様に『自分たちは最強だからなんとかなるだろう』と、はっきり言うものだから私は気が抜けてしまった。
「なら良いや」
「お?」
「反対、しないのかい?」
「反対なんてしないよ」
私たちは天内さんの要望には全て応えないといけないんだから。
「「!!!!」」
今度は私が笑って言えば、2人して驚いた表情で顔を見合わせている。
「もう1日、沖縄観光するか」
「それはダメなんじゃない?」
「先生に言われただろう。理子ちゃんを天元様の元へ送り届けるように」
「あー、そうか」
各々が部屋へと戻って行き、私は明日の予定を先生に伝えた。再度、サイトの書き込みについて尋ねてみたが盤星教が関係しているかどうかは依然として不明のまま。
雷虎を解き、明日の準備を全て済ませてふかふかのベッドに横になっても思考がぐるぐると巡ってしまう。
嫌な気分だ。
明日は長い1日になるやもしれない。
2024.3.9