middle/英雄の仕立て屋
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テーラー・ネーベルへアスターを送り届けてカジノへ戻ると、葉巻をふかすクロコダイルが裏口で待っていた。
「帰ったのか」
「ただいま戻りました」
きっと私のことではない、と思ったけれど、きちんと主語を言ってくれないと答えるつもりはない。
クロコダイルはギロリと私を睨みつけた後、さっさと建物の中へ入って行った。
まあ、随分と機嫌が悪そうね。
その背中の後を追う。
「サー、あの子に何をしたのか知らないけれど代金は「黙れ」……お店に届けて欲しいって言ってたわよ」
突きつけられた鉤爪に臆することなく続きを話せば、眉間のシワが一本増えた。
「急がない、とも言ってたわね」
「……それだけか」
「あら、言って欲しいコトでもあったの?」
口元に微笑をたたえれば、クロコダイルは面白いように舌打ちして鉤爪を首筋から離した。
苛立ちを隠すことなく足音を立てて執務室へ向かうその背中に、人知れず笑みをこぼす。
「本当に、ばかなひと」
アスターが泣いたことも、その理由も、今の彼にはとても分からないだろう。いや、分かろうともしないだろう。
それにクロコダイルが彼女に抱いている感情も、自覚などないのだろう。
自身に好意を持つ女に触ってやったのになぜ拒むのかと、そんなところかしら。あるいは、宝石か何かのように自分のものにしたいという独占欲としては、自覚しているかもしれない。
きっと、彼女の方がそういう面ではオトナだ。
私の胸で声を上げて泣いた、童顔だけれど歳上のアスターの心境を思って、小さくため息をついた。