middle/あまいなみだ
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翌日。
「もしもーし。聞こえる?」
「はい、聞こえてます。お疲れ様です」
帰宅してしばらくして、また例の2人きりのコミュニティから通知が入った。ログインすると、音声通信がしたいと言い出した陣内さん。
映像はなんとか断ったものの、押しに押されて音声通信が始まってしまった。
昨日も少し思ったのだけれど、陣内さんは確かに、私に少なからず好意を持っているのだと思う。これまでもそれなりに経験して来た訳だし、そこまで鈍感ではない。しかし、まだ核心には絶対に触れては来ない。
知りたい。話がしたい。でもそう思う理由は話してはくれない。
今日は家族のことを聞かれた。けれど残念ながら、話すことがほとんどない。
「父も母も祖父母ももう他界してまして。父の兄…叔父夫婦と従兄弟が1人いるくらいです」
わりと天涯孤独に近いんですよね~と軽い口調で言う。
家族の話は苦手だった。どう頑張っても明るい話ではない。
「そうだったんだ…寂しかったね」
「どうでしょうね、もう慣れて、」
「そっか、慣れたふりして来たんだね」
「っ……もう、それ以上言わないでください」
泣いてしまいそうだから。やめてください。
確かに、自分をごまかしながら生きて来た。彼氏がいるときは良かった。寂しさも、どうしようもない孤独感も埋められた。
パソコンに音声が入らないよう、画面に背を向けて深呼吸をしていると、陣内さんがさも今思い出したと言うように話しかけて来た。
「そうだ、五十嵐さん、今度の休み空いてる?デートしようよ」
五十嵐さんのココロを引っ掻き回したお詫びに奢るよ、ごめんね。とつけたす。
「……でーと」
「やだ?」
「いや、では、ないです」
「じゃ、決まり!」
いたずらっぽい笑顔が、脳裏に浮かぶ。
「楽しみだな。おしゃれして来てね」
じゃあおやすみ、と、そのまま通信が切れて。取り残されたように、そこに表示されているペンギンがぼうっと白い空を眺めていた。