第8章 "ボス"
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突然僕の部屋──もとい、医務室を訪れたのは、航海初日から倒れて大騒ぎだったアスター。その目元には立派なクマができていて、診察などしなくとも明らかに寝不足だった。
「あんまり寝心地は良くないけど、少し寝て行く?」
ベッドの方へ誘導すれば、アスターは小さく頷いて倒れこんだ。
「2時間くらいしたら起こすよ」
毛布の向こうから、なにやらくぐもった返事の声が聞こえた。
あれだけボスに過保護に守られておきながら、一体なにがあって眠れなかったのだろう。
2人の仲を邪推する声もあるが、僕にはとてもそんな風には見えない。多少、スキンシップが多いと感じることはあるけれど。
あの2人を形容する言葉はどれもしっくりこない。ただ、師弟だとか、信頼あつい上司と部下だとか、そういうもののほうが、恋人だというよりはまだ的確な気がする。
すっかり日課となっている植物図鑑と薬草図鑑の読み比べも、そんな考え事のせいでちっとも進まない。30分ほど粘ってみたが諦めて、少し海風にでも当たろうと腰を上げた。
甲板の上をウロウロ歩き回り、ぼうっと空を眺め、それにも飽きて医務室に戻ってくると。
「あれ、ボス……」
「あァ、もう戻る」
眉間に深いしわを寄せたボスが、僕と入れ替わりに部屋を出て行った。
その大きな背中が角を曲がって見えなくなると、小さく首をかしげる。
昨日までのボスと、少し違う空気をまとっている、ような。少し棘のある感じがした。
ただ、気のせいかもしれないと思うくらいには微々たるもので。医務室の机に向かい、自分がやるべきことをやらねばと作業を始めて、ボスの小さな変化のことは頭の片隅へと追いやった。
「あんまり寝心地は良くないけど、少し寝て行く?」
ベッドの方へ誘導すれば、アスターは小さく頷いて倒れこんだ。
「2時間くらいしたら起こすよ」
毛布の向こうから、なにやらくぐもった返事の声が聞こえた。
あれだけボスに過保護に守られておきながら、一体なにがあって眠れなかったのだろう。
2人の仲を邪推する声もあるが、僕にはとてもそんな風には見えない。多少、スキンシップが多いと感じることはあるけれど。
あの2人を形容する言葉はどれもしっくりこない。ただ、師弟だとか、信頼あつい上司と部下だとか、そういうもののほうが、恋人だというよりはまだ的確な気がする。
すっかり日課となっている植物図鑑と薬草図鑑の読み比べも、そんな考え事のせいでちっとも進まない。30分ほど粘ってみたが諦めて、少し海風にでも当たろうと腰を上げた。
甲板の上をウロウロ歩き回り、ぼうっと空を眺め、それにも飽きて医務室に戻ってくると。
「あれ、ボス……」
「あァ、もう戻る」
眉間に深いしわを寄せたボスが、僕と入れ替わりに部屋を出て行った。
その大きな背中が角を曲がって見えなくなると、小さく首をかしげる。
昨日までのボスと、少し違う空気をまとっている、ような。少し棘のある感じがした。
ただ、気のせいかもしれないと思うくらいには微々たるもので。医務室の机に向かい、自分がやるべきことをやらねばと作業を始めて、ボスの小さな変化のことは頭の片隅へと追いやった。