第7章 駆け引き未満
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敵の人数は明らかに減っていた。クロコダイルと戦っているのは今3人だけだ。
その3人はどうやら覇気が使えるらしく、少しずつタイミングをずらしてクロコダイルに攻撃を仕掛けている。あのどれか1人だけでも崩せれば、きっとすぐに決着がつく。
通りには他の人影は見えず、周囲の建物にも人の気配はあれど窓はかたく閉ざされている。
人影に向かって、銃を構える。
もし誤ってクロコダイルに当たったとしても、自然系能力者だからノーダメージのはず。不規則に動き回る敵を少しの間観察する。
──いいかい。狙撃は一発勝負だ。ようく観察して止まるタイミングを見極めて撃つこと。止まらないのであれば、動きを予測すること。
こんなに早く、実戦経験を積むことになるとは思わなかったけれど。
「ふー……」
クロコダイルに襲いかかる男たちは、攻撃しては避け、を繰り返しながらジワジワと遠ざかって行く。その状況に、何か、引っかかる。
何かを、忘れているような。
「……あ」
そうだ、鞄。
おそらく大金の入った、クロコダイルが持っていたはずの鞄がない。
照準から目を離し、肉眼で通りを見渡す。
「いた、」
店内で私に殴りかかって来た男と思われる人影が、鞄を担いで足を引きずりながら歩いていた。
男に照準を合わせる。この距離ならまだ大丈夫、訓練でも命中率は8割を超えていた。
徐々に遠ざかる背中、その下の腿あたりに照準を合わせる。大丈夫、死にはしない、はずだ。
引き金に置いた人差し指に、力を込める。
サイレンサーはついていないので乾いた発砲音がして、反動の衝撃が肩に響く。
「は、は……ッ」
うまく呼吸ができず、意図的に深呼吸しようと試みる。手のひらも、背中も、どっと汗をかいていた。
私は、人を、撃った。
狙撃位置が分からないよう、頭を下げていたが、クロコダイルが戦っていた方から男たちの悲鳴が聞こえてゆっくり顔を上げる。
「よくやった、ずらかるぞ」
目の前に砂化したクロコダイルがいて、固まる私はあっという間にコートにくるまれ脇に抱えられる。次に気付いた時には、もうホテルの部屋の中にいた。
縛られた店員の存在を思い出したのは、眠りに着く寸前のことだった。
その3人はどうやら覇気が使えるらしく、少しずつタイミングをずらしてクロコダイルに攻撃を仕掛けている。あのどれか1人だけでも崩せれば、きっとすぐに決着がつく。
通りには他の人影は見えず、周囲の建物にも人の気配はあれど窓はかたく閉ざされている。
人影に向かって、銃を構える。
もし誤ってクロコダイルに当たったとしても、自然系能力者だからノーダメージのはず。不規則に動き回る敵を少しの間観察する。
──いいかい。狙撃は一発勝負だ。ようく観察して止まるタイミングを見極めて撃つこと。止まらないのであれば、動きを予測すること。
こんなに早く、実戦経験を積むことになるとは思わなかったけれど。
「ふー……」
クロコダイルに襲いかかる男たちは、攻撃しては避け、を繰り返しながらジワジワと遠ざかって行く。その状況に、何か、引っかかる。
何かを、忘れているような。
「……あ」
そうだ、鞄。
おそらく大金の入った、クロコダイルが持っていたはずの鞄がない。
照準から目を離し、肉眼で通りを見渡す。
「いた、」
店内で私に殴りかかって来た男と思われる人影が、鞄を担いで足を引きずりながら歩いていた。
男に照準を合わせる。この距離ならまだ大丈夫、訓練でも命中率は8割を超えていた。
徐々に遠ざかる背中、その下の腿あたりに照準を合わせる。大丈夫、死にはしない、はずだ。
引き金に置いた人差し指に、力を込める。
サイレンサーはついていないので乾いた発砲音がして、反動の衝撃が肩に響く。
「は、は……ッ」
うまく呼吸ができず、意図的に深呼吸しようと試みる。手のひらも、背中も、どっと汗をかいていた。
私は、人を、撃った。
狙撃位置が分からないよう、頭を下げていたが、クロコダイルが戦っていた方から男たちの悲鳴が聞こえてゆっくり顔を上げる。
「よくやった、ずらかるぞ」
目の前に砂化したクロコダイルがいて、固まる私はあっという間にコートにくるまれ脇に抱えられる。次に気付いた時には、もうホテルの部屋の中にいた。
縛られた店員の存在を思い出したのは、眠りに着く寸前のことだった。