序章 旅の始まり
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半壊した建物から引っ張り出した宝を手分けして担いで、夜の街を走った。
到着したのは、この島唯一の造船所。
船大工の棟梁は、実に不本意そうに待っていた。
ダズが約束の金だ、とベリーの束を渡すと、棟梁は約束の船だ、とすでに準備が始まっている船を指差す。
小さな島の小さな造船所だが、ウォーターセブンにたどり着くためには十分だろう。
造船所の近くに潜んでいた乗組員とも合流し、荷物の積み込みが始まっていた。
人数は自身も合わせて12名。ようやく、スタートラインまで戻って来た。
隣でまだ息を切らしているアスターを脇に抱えて、船に乗り込む。おおよそ発注通りの仕上がりで、自室に備え付けられたソファに腰を下ろした。
そういえば、発注時にそのつもりのなかったこの女の部屋がない。さすがに乗組員共の部屋で寝るのはまずかろう。
女関係で船内がゴタつくのは勘弁願いたい。
「……おい」
座った勢いで膝の上にいるアスターに話しかけると、小さく返事はあったものの、何やらカチカチに固まっていた。構わずに話し出す。
「寝泊まりする場所はここでいいだろう」
有無を言わせない、つもりだった。
「こ、ここ?サー、と?」
振り向くアスターの表情は、戸惑い、怯え、それと少しの羞恥か。
「嫌ならダズの部屋か、男共の巣窟だぞ」
船には無駄な部屋などない。特に女が寝泊まりできるような、鍵のかかる部屋なんてものは存在しない。
葉巻に火をつけて、はたと我に帰る。
そこまでして守る必要はないのではないか、と。
「……わ、分かりました、そこのソファで」
向かいにある二人がけのソファを指差すアスター。
船内がゴタつくのを防ぐためで、それ以外の感情など持ち合わせてはいない。
なんとなくそう言い聞かせるように反芻して、煙を吸い込んだ。