第6章 小さな変化
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌日、ホテルのロビーでヘンリーと落ち合い、クロコダイルと3人でサン・ファルドの中心街から東側にある大きな市場にやって来た。
そこからさらに東のはずれに、船でしか行けない闇市場がある。武器弾薬、非合法な薬品、人身売買までなんでもござれだ。
なぜこの市場が潰れないかといえば、理由はただ1つ──天竜人御用達だからである。
道すがらそんな話を聞きながらたどり着いたのは、一軒の古びた店。
「いらっしゃい」
店主は妙齢の女性だった。声に張りがあり、ミホークのようにどこか緊張感のある人だ。
「あら、貴方……」
「こいつの武器を見繕ってくれ」
ぐい、と背中を押し出され、店主の前にまろび出る。
今日は普段と同じスーツにコート、でも仮面だけつけたクロコダイルを見ていた視線が、シンプルなシャツワンピースの私へと切り替わる。
「これまた可愛らしいお客だね。久しぶりの上客だ、いいのを見つけよう」
さてまずは、と店主は右手を差し出してきた。
「リズだ。よろしく」
「アスターです。お願いします」
ぎゅ、と強めに握られた右手はそのまま、リズさんの左手が腕を撫で上げる。
「じゃ、質問だ。アスターは、何がしたくて武器が欲しいんだい?」
彼女の左手は二の腕を経て肩、背中まで到達し、握手とともに身体から離れた。
「えっと……自分の身を守るため」
「守ってそしてどうしたい?」
少しだけ、言いよどむ。
「自分の、思うままに生きてみたい」
「具体的には?」
「あ──う、」
また本人の前で言うのはちょっと恥ずかし過ぎる。好意を自覚したあとだから、尚更だ。
ちらりとクロコダイルに視線を送るが、ヘンリーとともに船に置きたい武器を選んでいるようだった。
「サ……ボスについて行って、並び立ちたいな、と」
リズさんにだけ聞こえるように小声で言えば、
「なるほどなるほど」
彼女も私に聞こえるようにだけ、愛の力だねと言って、いたずらっぽくウインクした。
リズさんが私のために選んでくれたのは3種類の銃だった。
「アスターから見て、右から銃剣付きの狙撃銃、あと2つは拳銃で小さい弾が弾倉に8発入るのと、大きめの弾が弾倉に6発入るの」
専門的な用語は分からないだろうからこんな説明でいいかい?とリズさんが少し大きめの声で問いかける。その声に反応して、ヘンリーとクロコダイルもカウンターの前に集まった。
「アスター、近距離戦もそこそこやれそうだからオレ的には狙撃銃オススメしたいな〜」
「ああ、いいんじゃねェか?ただ、狙撃だと基本一人で行動することになるが」
場所とりが生死を分けるかもな、と言ってクロコダイルは小さく笑った。
「今日このあと暇なんだったら、ちょっとレクチャーしてあげようか。お代、弾んでもらいたいところだけどねぇ」
リズさんが、クロコダイルをちらりと流し見る。
「クハ、もう二丁買いてェから、それでいいだろう」
それくらいはサービスしろと、言外に滲ませる。
「弾も買ってくれるかい?」
「当たり前だろう」
「ヨシ、なら交渉成立だ」
「あの、」
「ん?どうしたんだいアスター」
「もし可能であれば、3つとも試し打ちとかって、できますか?」
「構わないよ。手入れはしてあるしね。ああ、手入れの方法も教えないといけないね」
リズさんは、銃を箱ごと担いで踵を返した。
「裏に狙撃場がある。おいで」
試し打ちの結果や、手入れ方法をざっくり聞いたのち──私は、オススメ通りに狙撃銃を買うことにした。
その重みに、できれば人には使いたくないものだと思ったが、予想よりはるかに早く使うことになるとはこの時は思ってもみなかった。
fin
next→あとがき
そこからさらに東のはずれに、船でしか行けない闇市場がある。武器弾薬、非合法な薬品、人身売買までなんでもござれだ。
なぜこの市場が潰れないかといえば、理由はただ1つ──天竜人御用達だからである。
道すがらそんな話を聞きながらたどり着いたのは、一軒の古びた店。
「いらっしゃい」
店主は妙齢の女性だった。声に張りがあり、ミホークのようにどこか緊張感のある人だ。
「あら、貴方……」
「こいつの武器を見繕ってくれ」
ぐい、と背中を押し出され、店主の前にまろび出る。
今日は普段と同じスーツにコート、でも仮面だけつけたクロコダイルを見ていた視線が、シンプルなシャツワンピースの私へと切り替わる。
「これまた可愛らしいお客だね。久しぶりの上客だ、いいのを見つけよう」
さてまずは、と店主は右手を差し出してきた。
「リズだ。よろしく」
「アスターです。お願いします」
ぎゅ、と強めに握られた右手はそのまま、リズさんの左手が腕を撫で上げる。
「じゃ、質問だ。アスターは、何がしたくて武器が欲しいんだい?」
彼女の左手は二の腕を経て肩、背中まで到達し、握手とともに身体から離れた。
「えっと……自分の身を守るため」
「守ってそしてどうしたい?」
少しだけ、言いよどむ。
「自分の、思うままに生きてみたい」
「具体的には?」
「あ──う、」
また本人の前で言うのはちょっと恥ずかし過ぎる。好意を自覚したあとだから、尚更だ。
ちらりとクロコダイルに視線を送るが、ヘンリーとともに船に置きたい武器を選んでいるようだった。
「サ……ボスについて行って、並び立ちたいな、と」
リズさんにだけ聞こえるように小声で言えば、
「なるほどなるほど」
彼女も私に聞こえるようにだけ、愛の力だねと言って、いたずらっぽくウインクした。
リズさんが私のために選んでくれたのは3種類の銃だった。
「アスターから見て、右から銃剣付きの狙撃銃、あと2つは拳銃で小さい弾が弾倉に8発入るのと、大きめの弾が弾倉に6発入るの」
専門的な用語は分からないだろうからこんな説明でいいかい?とリズさんが少し大きめの声で問いかける。その声に反応して、ヘンリーとクロコダイルもカウンターの前に集まった。
「アスター、近距離戦もそこそこやれそうだからオレ的には狙撃銃オススメしたいな〜」
「ああ、いいんじゃねェか?ただ、狙撃だと基本一人で行動することになるが」
場所とりが生死を分けるかもな、と言ってクロコダイルは小さく笑った。
「今日このあと暇なんだったら、ちょっとレクチャーしてあげようか。お代、弾んでもらいたいところだけどねぇ」
リズさんが、クロコダイルをちらりと流し見る。
「クハ、もう二丁買いてェから、それでいいだろう」
それくらいはサービスしろと、言外に滲ませる。
「弾も買ってくれるかい?」
「当たり前だろう」
「ヨシ、なら交渉成立だ」
「あの、」
「ん?どうしたんだいアスター」
「もし可能であれば、3つとも試し打ちとかって、できますか?」
「構わないよ。手入れはしてあるしね。ああ、手入れの方法も教えないといけないね」
リズさんは、銃を箱ごと担いで踵を返した。
「裏に狙撃場がある。おいで」
試し打ちの結果や、手入れ方法をざっくり聞いたのち──私は、オススメ通りに狙撃銃を買うことにした。
その重みに、できれば人には使いたくないものだと思ったが、予想よりはるかに早く使うことになるとはこの時は思ってもみなかった。
fin
next→あとがき