第6章 小さな変化
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守られてばかりで居心地が悪い。
なんて、考えているんじゃあないかと、下唇を軽く噛むアスターを見下ろす。
「行くぞ、出航だ」
その悔しさは、強くなるための糧となるだろう。だからあえて、今は何も言わない。
採ってきた果実を船のキッチンへ運び込むと、ロッシュは今晩のデザートにしようと半分は冷蔵庫にしまった。
残りの半分はペーストにしたり砂糖漬けにしたりと、保存がきくよう調理するようだ。
それを聞いたアスターが、食べるのが楽しみだと笑顔になる。
彼女はよく笑うようになったと思う。最近は、悔しそうな顔も多いが。
出航の合図を出してから船長室に戻ると、せっせと手巻き煙草を作るアスターの背中があった。そっと近付くが、こちらには気づかない。またえらく集中しているようだ。
鮮やかな手際で出来上がって行く煙草が、20本まとめて袋詰めされる。
それをひたすら繰り返す手は、あちこちマメができたり擦り傷があったりと生傷が絶えない。船を出す前の傷ひとつない華奢な白い手は、作り物めいていてあまり好かなかったと思い返す。
「オイ、」
アスターの肩に手をかけると、びくりと震えてから返事があった。
「は、い」
「進捗は?1人つけるか」
「え、えと、そうですね…少し遅れてるかな…手先の器用な方がいれば」
こちらを振り返ろうとしないことを不審に思い少しだけ顔を覗き込むと、
「なん、ですか」
ようやくこちらをちらりと見る。その頬は赤く、熱でもあるのかと頬に手をやろうとして──
「だ、大丈夫です」
──その手をやんわりと押し返された。
「そうか」
体調が悪ければ言えと命じてあるのだ。これ以上追及する必要はない。
ない、のだが。
「……」
クライガナ島逗留時にはあえて直接関わらないようにしてみたが、やはり心のどこかで触れたいという想いが消えない。
少しうつむいて作業を開始したアスターの頭に一瞬だけ手を置いて、部屋を後にした。
自分にも心などというものがあったのかと、少し驚きながら。
なんて、考えているんじゃあないかと、下唇を軽く噛むアスターを見下ろす。
「行くぞ、出航だ」
その悔しさは、強くなるための糧となるだろう。だからあえて、今は何も言わない。
採ってきた果実を船のキッチンへ運び込むと、ロッシュは今晩のデザートにしようと半分は冷蔵庫にしまった。
残りの半分はペーストにしたり砂糖漬けにしたりと、保存がきくよう調理するようだ。
それを聞いたアスターが、食べるのが楽しみだと笑顔になる。
彼女はよく笑うようになったと思う。最近は、悔しそうな顔も多いが。
出航の合図を出してから船長室に戻ると、せっせと手巻き煙草を作るアスターの背中があった。そっと近付くが、こちらには気づかない。またえらく集中しているようだ。
鮮やかな手際で出来上がって行く煙草が、20本まとめて袋詰めされる。
それをひたすら繰り返す手は、あちこちマメができたり擦り傷があったりと生傷が絶えない。船を出す前の傷ひとつない華奢な白い手は、作り物めいていてあまり好かなかったと思い返す。
「オイ、」
アスターの肩に手をかけると、びくりと震えてから返事があった。
「は、い」
「進捗は?1人つけるか」
「え、えと、そうですね…少し遅れてるかな…手先の器用な方がいれば」
こちらを振り返ろうとしないことを不審に思い少しだけ顔を覗き込むと、
「なん、ですか」
ようやくこちらをちらりと見る。その頬は赤く、熱でもあるのかと頬に手をやろうとして──
「だ、大丈夫です」
──その手をやんわりと押し返された。
「そうか」
体調が悪ければ言えと命じてあるのだ。これ以上追及する必要はない。
ない、のだが。
「……」
クライガナ島逗留時にはあえて直接関わらないようにしてみたが、やはり心のどこかで触れたいという想いが消えない。
少しうつむいて作業を開始したアスターの頭に一瞬だけ手を置いて、部屋を後にした。
自分にも心などというものがあったのかと、少し驚きながら。