第6章 小さな変化
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出航してまずはアカリ島に戻り、食糧など必要物資を再度調達すると、すぐにサン・ファルドへと舵を切った。
私はと言えば、タバコの葉とひたすら睨めっこしていた。
クライガナ島にいる間全くできなかった葉のブレンド作業の再開だ。
まずは葉の状態から確認して行くが、アカリ島で色々と資材を買っておいたおかげで、湿気からは守られていて一安心する。
「ふー、さて、やるかぁ……」
感傷に浸っている時間などない。
やるべき事を、やらねばならない。
サン・ファルドにつくまでに、100箱以上は作っておきたい。ひと箱は20本入りなので、本数にすると2000本という事になる。
途方もない数字に頭を抱える暇すら、ないのだ。
早速作業を開始すると揺れすら気にならないほど集中してしまい、クロコダイルに頭を撫でられるまでひたすら手を動かしていた。
「メシだ」
「え、もうそんな時間……ちょ、あの」
そのままぐらぐらと頭を揺すられて、思わず強く目を瞑る。すぐに揺さぶりから解放されたと思ったら、今度は頭をがっちり掴まれてしまった。
「頭痛はねェな?」
「え、と、はい。ないです」
そう言えばそうだった。早朝出航して5時間ほど経っていたが、特に不調はなかった。
作業に没頭しすぎたなと、反省する。
昼食を済ますと再度作業に戻り、暗くなる前に今日は打ち止めとした。すっかり日課になった筋トレをこなし、夕飯を食べて、そして夜。
幸い海は穏やかで、またハンモックに連れ込まれることはなさそうだ。
ソファで寝る支度を整えていると、船内の見回りを終えたのであろうクロコダイルが船長室に入ってくるなり溜息を吐いた。
「お前は、またぶっ倒れてェのか?」
「えっいや、そんなわけ」
そんな訳はない。
しかし、その口ぶりからするに、一緒に寝るぞと言わんばかりではないか。
本当に、クロコダイルが私をどうしたいのかがわからない。
確か、クライガナ島にいる間は、最後の夜以外は別の部屋で寝ていたけれど、思い返してみれば船にいる間は一度倒れた後ほとんどずっと一緒に眠っていたわけで。
「……え、わっ」
そうこうしていると、クロコダイルの腕に抱き込まれてあっという間にベッドに落とされた。そして次の瞬間には隣にいて、私の首の下には彼の腕が敷かれている。
いくら好きなようにすればいいと言われても、当たり前だがクロコダイルには逆らえない。それをいいことに、好き勝手にされている感も否めない。
「サー、あの」
「なんだ」
クロコダイルと私は、手を繋いだことも、キスをしたこともない。なのに同じベッドで眠り、寝ぼけ眼で私の耳を食み、首元に顔を埋める。
「──っなんでも、ないです。おやすみなさい」
少し声が震えたことに、気づかないでと願った。
きっと、なんとも思っていないから出来ることなのだろう。その答えを聞くのが怖くて、言いかけた質問を飲み込んで目を閉じた。
なにかを追い求める気持ちだけで生きていくことは、なんて難しいんだろう。身体だけでなく心の強さも試されるのかと、ここへきてようやく気づいた。
今の私には、そんな強さはない。
いつか言える日が来るのだろうか。
あなたが好きだ、と。
私はと言えば、タバコの葉とひたすら睨めっこしていた。
クライガナ島にいる間全くできなかった葉のブレンド作業の再開だ。
まずは葉の状態から確認して行くが、アカリ島で色々と資材を買っておいたおかげで、湿気からは守られていて一安心する。
「ふー、さて、やるかぁ……」
感傷に浸っている時間などない。
やるべき事を、やらねばならない。
サン・ファルドにつくまでに、100箱以上は作っておきたい。ひと箱は20本入りなので、本数にすると2000本という事になる。
途方もない数字に頭を抱える暇すら、ないのだ。
早速作業を開始すると揺れすら気にならないほど集中してしまい、クロコダイルに頭を撫でられるまでひたすら手を動かしていた。
「メシだ」
「え、もうそんな時間……ちょ、あの」
そのままぐらぐらと頭を揺すられて、思わず強く目を瞑る。すぐに揺さぶりから解放されたと思ったら、今度は頭をがっちり掴まれてしまった。
「頭痛はねェな?」
「え、と、はい。ないです」
そう言えばそうだった。早朝出航して5時間ほど経っていたが、特に不調はなかった。
作業に没頭しすぎたなと、反省する。
昼食を済ますと再度作業に戻り、暗くなる前に今日は打ち止めとした。すっかり日課になった筋トレをこなし、夕飯を食べて、そして夜。
幸い海は穏やかで、またハンモックに連れ込まれることはなさそうだ。
ソファで寝る支度を整えていると、船内の見回りを終えたのであろうクロコダイルが船長室に入ってくるなり溜息を吐いた。
「お前は、またぶっ倒れてェのか?」
「えっいや、そんなわけ」
そんな訳はない。
しかし、その口ぶりからするに、一緒に寝るぞと言わんばかりではないか。
本当に、クロコダイルが私をどうしたいのかがわからない。
確か、クライガナ島にいる間は、最後の夜以外は別の部屋で寝ていたけれど、思い返してみれば船にいる間は一度倒れた後ほとんどずっと一緒に眠っていたわけで。
「……え、わっ」
そうこうしていると、クロコダイルの腕に抱き込まれてあっという間にベッドに落とされた。そして次の瞬間には隣にいて、私の首の下には彼の腕が敷かれている。
いくら好きなようにすればいいと言われても、当たり前だがクロコダイルには逆らえない。それをいいことに、好き勝手にされている感も否めない。
「サー、あの」
「なんだ」
クロコダイルと私は、手を繋いだことも、キスをしたこともない。なのに同じベッドで眠り、寝ぼけ眼で私の耳を食み、首元に顔を埋める。
「──っなんでも、ないです。おやすみなさい」
少し声が震えたことに、気づかないでと願った。
きっと、なんとも思っていないから出来ることなのだろう。その答えを聞くのが怖くて、言いかけた質問を飲み込んで目を閉じた。
なにかを追い求める気持ちだけで生きていくことは、なんて難しいんだろう。身体だけでなく心の強さも試されるのかと、ここへきてようやく気づいた。
今の私には、そんな強さはない。
いつか言える日が来るのだろうか。
あなたが好きだ、と。