第6章 小さな変化
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力を抜くと、手足の指先からざらざらと崩れ落ちる感触がする。
悪魔の実を食った直後のような、体が砂になって人の形を保てなくなる感覚。
忌々しくも、どこか郷愁を覚えるこの感じ。
日中、能力を鍛えようと使えば使うほど、夜になると反動でそんな感覚に襲われた。
実際は砂になって崩れ落ちるような事になってはいない。ただの錯覚だ。
しかし、気持ちのいいものではない。気分は最悪で、寝つきは悪く、眠りも浅い。ここ数日、睡眠時間は常の半分くらいだった。
小さなことにイラついていると自覚があったから、誰とも関わらないように森の中で能力の微調整に集中した。
シッケアールを発つ前夜。
宴がお開きになり部屋に戻った時、急に例の錯覚に襲われた。
──否、今回ばかりは錯覚ではなかった。ぐらりと視界が揺れ、見下ろせば右足が砂へと変化している。
「っオイオイ……」
冗談じゃねェ。
こんなところで何を躓いているんだ。これでは新世界でなどすぐに海の藻屑ではないか。
ぐっと力を込めると、すぐに足は元に戻った。
とはいえ、眠ろうとしても、とてもじゃないが砂の感覚が拭えない。
「ッチ……」
仕方なく寝ることを諦めようと、内ポケットの葉巻を手に取ろうとして、葉巻よりずいぶん細い手巻きの煙草が手に触れた。
これは、アスターの。
「……海の加護、か」
一体それがなんなのか、詳細は全く分からない。本人すら知らないのだ。
けれど、そうだ、あの力があれば。
睡眠不足で判断力が落ちていることも、昨日あたりから自覚があった。これでは海に出た時危険を伴う、とも。
ならばあの力に触れてみるのも、1つの手ではないか。
そう思って、アスターの部屋に忍び込んだ。
程なくして部屋に戻ってきたアスターが、無造作にネグリジェに着替えてベッドに倒れ込んでくる。
「う、え!?」
そこでようやくおれに気づいたのだろう、耳元で戸惑いの声が上がった。
「るせェ」
「え、なんで」
何故ここにいるのかと、戸惑う顔が見える気がする。実際は暗闇の中で見えないが。
アスターの腰のあたりを抱き寄せると、足先までゆっくり力が抜けていくのが分かった。
「ちょ、と」
「寝る」
数日分の睡眠を取り戻すかのように、抗いがたい睡魔に襲われて、そのまま意識を手放した。
悪魔の実を食った直後のような、体が砂になって人の形を保てなくなる感覚。
忌々しくも、どこか郷愁を覚えるこの感じ。
日中、能力を鍛えようと使えば使うほど、夜になると反動でそんな感覚に襲われた。
実際は砂になって崩れ落ちるような事になってはいない。ただの錯覚だ。
しかし、気持ちのいいものではない。気分は最悪で、寝つきは悪く、眠りも浅い。ここ数日、睡眠時間は常の半分くらいだった。
小さなことにイラついていると自覚があったから、誰とも関わらないように森の中で能力の微調整に集中した。
シッケアールを発つ前夜。
宴がお開きになり部屋に戻った時、急に例の錯覚に襲われた。
──否、今回ばかりは錯覚ではなかった。ぐらりと視界が揺れ、見下ろせば右足が砂へと変化している。
「っオイオイ……」
冗談じゃねェ。
こんなところで何を躓いているんだ。これでは新世界でなどすぐに海の藻屑ではないか。
ぐっと力を込めると、すぐに足は元に戻った。
とはいえ、眠ろうとしても、とてもじゃないが砂の感覚が拭えない。
「ッチ……」
仕方なく寝ることを諦めようと、内ポケットの葉巻を手に取ろうとして、葉巻よりずいぶん細い手巻きの煙草が手に触れた。
これは、アスターの。
「……海の加護、か」
一体それがなんなのか、詳細は全く分からない。本人すら知らないのだ。
けれど、そうだ、あの力があれば。
睡眠不足で判断力が落ちていることも、昨日あたりから自覚があった。これでは海に出た時危険を伴う、とも。
ならばあの力に触れてみるのも、1つの手ではないか。
そう思って、アスターの部屋に忍び込んだ。
程なくして部屋に戻ってきたアスターが、無造作にネグリジェに着替えてベッドに倒れ込んでくる。
「う、え!?」
そこでようやくおれに気づいたのだろう、耳元で戸惑いの声が上がった。
「るせェ」
「え、なんで」
何故ここにいるのかと、戸惑う顔が見える気がする。実際は暗闇の中で見えないが。
アスターの腰のあたりを抱き寄せると、足先までゆっくり力が抜けていくのが分かった。
「ちょ、と」
「寝る」
数日分の睡眠を取り戻すかのように、抗いがたい睡魔に襲われて、そのまま意識を手放した。