第6章 小さな変化
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クライガナ島滞在11日目。
明朝、サン・ファルドへと出航することが決まっていた。
今日の鍛錬は午前で終了、午後は休息となり、夕刻、また宴が開かれることとなった。
その宴の準備を手伝い終え、大皿に盛られたカットフルーツとプリンが置かれた移動台を広間へと運び入れる。
絵本の中のお城に出てきたものとそっくりな、大きな長いテーブルに、背の高い椅子。真っ白なテーブルクロスの上に、運んできたデザートを置いてから席に着いた。
歓迎の宴とは違う席で、左にはペローナ、右のいわゆる誕生日席にはミホーク、正面にクロコダイル。
すでに仲間たちは酒と料理を楽しんでいて、周りは少し騒がしい。とは言えミホークもクロコダイルも静かに酒を飲んでいて、ここだけは少し纏う空気が違う。
「アスター、客人なのに給仕を手伝わせてすまなかった。コック殿にも伝えてくれ」
「え、いえそんな、好きでやった事なので」
ミホークと話すのは緊張する。いや、ミホークが常に緊張しているというか、警戒しているような目をしているからつられてしまう。
話しかけられてピンと伸びた背中を、少しだけ緩める。
「それと、ペローナと良き友人でいてやってくれ」
「な──急に何言ってんだ鷹の目!?何様だ!!」
音をたてて立ち上がったペローナが、勢いよくミホークの言葉に噛み付く。勢いはいいが、その頬は少し赤い。
「はい、分かりました」
「おぉお前も何フツーに返事してるんだアスター!!」
頼まれずとも、そのつもりだ。まだ好きな人がいることを言えていないし、モリアのこともある。
出航してしまえば会えない時間は長いかもしれない。それでも、できる限り手紙を書きたいし、可能であれば電話もしようと思っている。
私とミホークの顔を交互に睨みつけていたペローナだが、2人がそれ以上喋らなくなり、小さく唸りながら椅子に腰を下ろした。
「これからもよろしくね、ペローナ」
「……フン、仕方ねえな」
賑やかな食事をめいっぱい楽しんで、お酒も少しだけ飲んだ。あまり強くはないので、少しだけ。
日付が変わる前に宴はお開きとなり、食器をキッチンへ運ぶのだけ手伝って部屋に戻った。
疲労感に酔いが加わり、眠くて仕方ない。
手早くシンプルなネグリジェに着替えて、明かりを消してベッドに倒れこんだ。
「う、え!?」
倒れ込んだ先にざらりと砂の感触がして、思わず声が出る。
「るせェ」
「え、なんで」
何故ここに、クロコダイルが寝ているのだろう。一瞬部屋を間違えたかと思ったが、着替えがあったのだから間違いなく私にあてがわれた部屋だとすぐに気づく。
暗闇の中、クロコダイルが私を抱き寄せる。
「ちょ、と」
「寝る」
それきり、何も言うことはなく静かな呼吸だけが聞こえてくる。
徐々に目が慣れてくると、目の前にクロコダイルの喉元があった。普段警戒心の塊みたいなひとが、こうもたやすく急所を晒すなんて。胸の奥を強く掴まれるような感じがした。
ぎゅう、と鳴き声も聞こえた気がした。
明朝、サン・ファルドへと出航することが決まっていた。
今日の鍛錬は午前で終了、午後は休息となり、夕刻、また宴が開かれることとなった。
その宴の準備を手伝い終え、大皿に盛られたカットフルーツとプリンが置かれた移動台を広間へと運び入れる。
絵本の中のお城に出てきたものとそっくりな、大きな長いテーブルに、背の高い椅子。真っ白なテーブルクロスの上に、運んできたデザートを置いてから席に着いた。
歓迎の宴とは違う席で、左にはペローナ、右のいわゆる誕生日席にはミホーク、正面にクロコダイル。
すでに仲間たちは酒と料理を楽しんでいて、周りは少し騒がしい。とは言えミホークもクロコダイルも静かに酒を飲んでいて、ここだけは少し纏う空気が違う。
「アスター、客人なのに給仕を手伝わせてすまなかった。コック殿にも伝えてくれ」
「え、いえそんな、好きでやった事なので」
ミホークと話すのは緊張する。いや、ミホークが常に緊張しているというか、警戒しているような目をしているからつられてしまう。
話しかけられてピンと伸びた背中を、少しだけ緩める。
「それと、ペローナと良き友人でいてやってくれ」
「な──急に何言ってんだ鷹の目!?何様だ!!」
音をたてて立ち上がったペローナが、勢いよくミホークの言葉に噛み付く。勢いはいいが、その頬は少し赤い。
「はい、分かりました」
「おぉお前も何フツーに返事してるんだアスター!!」
頼まれずとも、そのつもりだ。まだ好きな人がいることを言えていないし、モリアのこともある。
出航してしまえば会えない時間は長いかもしれない。それでも、できる限り手紙を書きたいし、可能であれば電話もしようと思っている。
私とミホークの顔を交互に睨みつけていたペローナだが、2人がそれ以上喋らなくなり、小さく唸りながら椅子に腰を下ろした。
「これからもよろしくね、ペローナ」
「……フン、仕方ねえな」
賑やかな食事をめいっぱい楽しんで、お酒も少しだけ飲んだ。あまり強くはないので、少しだけ。
日付が変わる前に宴はお開きとなり、食器をキッチンへ運ぶのだけ手伝って部屋に戻った。
疲労感に酔いが加わり、眠くて仕方ない。
手早くシンプルなネグリジェに着替えて、明かりを消してベッドに倒れこんだ。
「う、え!?」
倒れ込んだ先にざらりと砂の感触がして、思わず声が出る。
「るせェ」
「え、なんで」
何故ここに、クロコダイルが寝ているのだろう。一瞬部屋を間違えたかと思ったが、着替えがあったのだから間違いなく私にあてがわれた部屋だとすぐに気づく。
暗闇の中、クロコダイルが私を抱き寄せる。
「ちょ、と」
「寝る」
それきり、何も言うことはなく静かな呼吸だけが聞こえてくる。
徐々に目が慣れてくると、目の前にクロコダイルの喉元があった。普段警戒心の塊みたいなひとが、こうもたやすく急所を晒すなんて。胸の奥を強く掴まれるような感じがした。
ぎゅう、と鳴き声も聞こえた気がした。