第5章 強くなりたい
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さらに翌日。
シッケアール滞在7日目。
いつもの時間に目覚め、体の調子を確かめるように入念にストレッチをした。
外は静かに雨が降っており、朝食の後鍛錬を再開すべく外へ出てもまだ降り続いていた。
雨の中みっちり3時間ほど、手合わせや走り込みを終えて昼食のため城に戻ると、ヘンリーが妙な顔でこちらをチラチラ見ていた。
「ヘンリー?」
「ん?あーいや、うん。眼福です」
「……?」
意味がよくわからない。首を傾げていると、ヘンリーは急に何かから逃げるようにエントランスの階段を駆け上がって行った。
やべ、と聞こえたような気がした。
「オイ」
「っはい」
階段の踊り場まで登ったところで、下から低い声で呼び止められる。
「サー、どうし──」
振り向こうとした瞬間、右側から腹部に大きな手が回ってきて、思わず身をすくめる。
雨でぐっしょりと濡れたTシャツが身体に張り付いて、見下ろすと下着が完全に透けて見えていた。ああ、ヘンリーが眼福だと言ったのはこれかと、腑に落ちる。
大きな手は、シャツの上から収まりのいい場所を探すように数回へその辺りを撫でた後、すこし上がってきてみぞおちの辺りで落ち着いた。親指の爪が、シャツ越しにブラに触れて、小さく息を飲む。
冷たい、手だった。雨で濡れて冷えた私の身体よりも、冷たい。
くく、とクロコダイルが頭の上で小さく笑った。
たぶん、私の心臓が強く脈打つのが、その手に響いているからだろう。冷えていたはずの身体が、熱を持つ。
「フン、こんなものか」
「ッは……」
少し間をおいてすんなり手が離れていって、詰めていた息を吐き出す。
「え?」
手を開いたり握ったりしながら、私を追い越して階段を上って行くクロコダイル。
「……え?」
上から下までぐっしょりだったはずなのに、シャツもパンツも、靴や髪まで綺麗に乾いていた。
さっきまでクロコダイルが触れていたみぞおちに、そっと手をやる。
やり逃げにしてはタチが悪い。
そこに残る感触を掻き消そうと、強めに撫で擦った。
能力で服を乾かしてくれたのだということはもちろん分かる。なんならその調節の練習台にされたのではないかと、それも分かってしまう。
そして期待してしまうのだ。
他の人に、濡れた私を見られたくないからなのではないかと。
あまりにも淡くて甘い、期待を。
「ッもう……」
大きな手が触れていた感触は、しばらく忘れられそうになかった。
fin
next→あとがき
シッケアール滞在7日目。
いつもの時間に目覚め、体の調子を確かめるように入念にストレッチをした。
外は静かに雨が降っており、朝食の後鍛錬を再開すべく外へ出てもまだ降り続いていた。
雨の中みっちり3時間ほど、手合わせや走り込みを終えて昼食のため城に戻ると、ヘンリーが妙な顔でこちらをチラチラ見ていた。
「ヘンリー?」
「ん?あーいや、うん。眼福です」
「……?」
意味がよくわからない。首を傾げていると、ヘンリーは急に何かから逃げるようにエントランスの階段を駆け上がって行った。
やべ、と聞こえたような気がした。
「オイ」
「っはい」
階段の踊り場まで登ったところで、下から低い声で呼び止められる。
「サー、どうし──」
振り向こうとした瞬間、右側から腹部に大きな手が回ってきて、思わず身をすくめる。
雨でぐっしょりと濡れたTシャツが身体に張り付いて、見下ろすと下着が完全に透けて見えていた。ああ、ヘンリーが眼福だと言ったのはこれかと、腑に落ちる。
大きな手は、シャツの上から収まりのいい場所を探すように数回へその辺りを撫でた後、すこし上がってきてみぞおちの辺りで落ち着いた。親指の爪が、シャツ越しにブラに触れて、小さく息を飲む。
冷たい、手だった。雨で濡れて冷えた私の身体よりも、冷たい。
くく、とクロコダイルが頭の上で小さく笑った。
たぶん、私の心臓が強く脈打つのが、その手に響いているからだろう。冷えていたはずの身体が、熱を持つ。
「フン、こんなものか」
「ッは……」
少し間をおいてすんなり手が離れていって、詰めていた息を吐き出す。
「え?」
手を開いたり握ったりしながら、私を追い越して階段を上って行くクロコダイル。
「……え?」
上から下までぐっしょりだったはずなのに、シャツもパンツも、靴や髪まで綺麗に乾いていた。
さっきまでクロコダイルが触れていたみぞおちに、そっと手をやる。
やり逃げにしてはタチが悪い。
そこに残る感触を掻き消そうと、強めに撫で擦った。
能力で服を乾かしてくれたのだということはもちろん分かる。なんならその調節の練習台にされたのではないかと、それも分かってしまう。
そして期待してしまうのだ。
他の人に、濡れた私を見られたくないからなのではないかと。
あまりにも淡くて甘い、期待を。
「ッもう……」
大きな手が触れていた感触は、しばらく忘れられそうになかった。
fin
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