第5章 強くなりたい
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身体が痛くて目が覚めるという経験を、産まれて初めてした。
錆びた機械に心があったら、きっとこんな気持ちだろうと思う。動くたび、ギシギシと軋むような音が聞こえる気がする。
クライガナ島での生活も5日目。
今日も鍛錬に明け暮れているわけだけれど、今日からその内容ががらりと変わった。筋トレは申し訳程度で、走り込みと実戦訓練にほとんどの時間を充てるという。
「筋力は人並みにちょい劣るくらいまで来たと思うから、こっからは立ち回り体で覚えて」
「うん」
ヘンリーはゾロとほぼ同い年という事もあって、当初の鷹の目からの依頼であった稽古の手伝い、つまりゾロとの実戦訓練をしていたが、それは今日からダズへとバトンタッチしたようだ。
「ゾロほんっと容赦ねーの」
ひとふさ自慢の金髪を斬られてしまったと、ヘンリーは遠くに見えるゾロに向かって小さく舌を突き出した。
ともかく今日からは私につきっきりで教えてくれる、もとい、鍛えてくれる事になった。
「つーことで、とりあえず一周走ってこよう」
島の周囲を走ることから始まり、ロッシュとの組み手と、銃の扱いに慣れる為、ヒューマンドリル達に弄ばれながらひたすら撃って撃って撃ちまくった。昼休憩を挟んで、少し走って、さてまたヒューマンドリル達と手合わせ願おうとした時、この島に来て初めて聞く唸り声が森から聞こえて来た。
「な、なに?」
ヒューマンドリル達も周囲を見回し、落ち着かない様子だ。
「あー、モリスかな」
「でしょうね」
他の船員たちの相手をしていたロッシュが、全員かたまれ、と、私のそばに皆をかためる。
周囲を気にもせず火花を散らすゾロとダズが視界の端に映ったけれど、そのそばでクロコダイルが悠々と葉巻をふかしていたのであの3人はきっと大丈夫だろう。
背筋をぞわぞわと這い上がってくるこれが恐怖かと、唸り声の聞こえる方向を見る。
「何回聞いてもやな声」
「言ってやるな。モリスも本意じゃあないでしょう」
「ねぇ、何が起こってるの」
ヘンリーは武器を構え、ロッシュはその拳を握って、視線は森に向けたまま。
「能力がまだ制御できねぇっつってたろ」
「暴走状態、とでも言いましょうか」
ガサガサと、木々が揺らぐ。
「ここへ来てからほとんどならなかったんですけどね」
「ったく、アスターさんもいるってのに……っ来るぞ」
それは、最初は黒い塊にしか見えなかった。
一歩一歩、近づいて来る大きな塊。
踏み出すごとに地面が小さく揺れ、徐々に荒い息遣いが聞こえて来る。巨大な、ヒグマ。
立ち上がればおそらく3メートルを超すだろう。その太い腕に薙ぎ払われれば確実に私は死ぬ。
ついさっきまであれほどいたヒューマンドリル達は、すでに身を隠したようで一匹も見当たらない。本能的に敵わないと悟ったのだろう。
ヒグマ──モリスが銃の射程範囲内に入った。
「今までで一番デカくねぇ…?」
「そう、ですね」
その会話が終わると同時に、2人は動いた。
右へ回り込みながら銃を撃つヘンリー。まっすぐ、モリスに向かうロッシュ。吼える、モリス。
ヘンリーが撃った弾は全て命中していたけれど、分厚い皮膚に阻まれてダメージを与えられていない。ロッシュが打ち込む拳も、効いているのかここからではよくわからない。
その時、ロッシュの拳が黒く染まる。あれが武装色の覇気か。
チリチリと指の先が痺れるような感覚。耳が熱い。
鈍い、打撃音。
ロッシュの一撃が、モリスの側頭部にヒットして、巨体がよろめく。けれど、その巨体は地に伏せることはなく、ロッシュに激突した。
彼を跳ね飛ばしたその勢いのまま、モリスはこちらに駆けてくる。
「あ──」
やばい逃げなきゃと、思ったものの、足は動かず。
「お前ら!アスターさんっ!」
逃げろと、ヘンリーとロッシュの声が聞こえた。
錆びた機械に心があったら、きっとこんな気持ちだろうと思う。動くたび、ギシギシと軋むような音が聞こえる気がする。
クライガナ島での生活も5日目。
今日も鍛錬に明け暮れているわけだけれど、今日からその内容ががらりと変わった。筋トレは申し訳程度で、走り込みと実戦訓練にほとんどの時間を充てるという。
「筋力は人並みにちょい劣るくらいまで来たと思うから、こっからは立ち回り体で覚えて」
「うん」
ヘンリーはゾロとほぼ同い年という事もあって、当初の鷹の目からの依頼であった稽古の手伝い、つまりゾロとの実戦訓練をしていたが、それは今日からダズへとバトンタッチしたようだ。
「ゾロほんっと容赦ねーの」
ひとふさ自慢の金髪を斬られてしまったと、ヘンリーは遠くに見えるゾロに向かって小さく舌を突き出した。
ともかく今日からは私につきっきりで教えてくれる、もとい、鍛えてくれる事になった。
「つーことで、とりあえず一周走ってこよう」
島の周囲を走ることから始まり、ロッシュとの組み手と、銃の扱いに慣れる為、ヒューマンドリル達に弄ばれながらひたすら撃って撃って撃ちまくった。昼休憩を挟んで、少し走って、さてまたヒューマンドリル達と手合わせ願おうとした時、この島に来て初めて聞く唸り声が森から聞こえて来た。
「な、なに?」
ヒューマンドリル達も周囲を見回し、落ち着かない様子だ。
「あー、モリスかな」
「でしょうね」
他の船員たちの相手をしていたロッシュが、全員かたまれ、と、私のそばに皆をかためる。
周囲を気にもせず火花を散らすゾロとダズが視界の端に映ったけれど、そのそばでクロコダイルが悠々と葉巻をふかしていたのであの3人はきっと大丈夫だろう。
背筋をぞわぞわと這い上がってくるこれが恐怖かと、唸り声の聞こえる方向を見る。
「何回聞いてもやな声」
「言ってやるな。モリスも本意じゃあないでしょう」
「ねぇ、何が起こってるの」
ヘンリーは武器を構え、ロッシュはその拳を握って、視線は森に向けたまま。
「能力がまだ制御できねぇっつってたろ」
「暴走状態、とでも言いましょうか」
ガサガサと、木々が揺らぐ。
「ここへ来てからほとんどならなかったんですけどね」
「ったく、アスターさんもいるってのに……っ来るぞ」
それは、最初は黒い塊にしか見えなかった。
一歩一歩、近づいて来る大きな塊。
踏み出すごとに地面が小さく揺れ、徐々に荒い息遣いが聞こえて来る。巨大な、ヒグマ。
立ち上がればおそらく3メートルを超すだろう。その太い腕に薙ぎ払われれば確実に私は死ぬ。
ついさっきまであれほどいたヒューマンドリル達は、すでに身を隠したようで一匹も見当たらない。本能的に敵わないと悟ったのだろう。
ヒグマ──モリスが銃の射程範囲内に入った。
「今までで一番デカくねぇ…?」
「そう、ですね」
その会話が終わると同時に、2人は動いた。
右へ回り込みながら銃を撃つヘンリー。まっすぐ、モリスに向かうロッシュ。吼える、モリス。
ヘンリーが撃った弾は全て命中していたけれど、分厚い皮膚に阻まれてダメージを与えられていない。ロッシュが打ち込む拳も、効いているのかここからではよくわからない。
その時、ロッシュの拳が黒く染まる。あれが武装色の覇気か。
チリチリと指の先が痺れるような感覚。耳が熱い。
鈍い、打撃音。
ロッシュの一撃が、モリスの側頭部にヒットして、巨体がよろめく。けれど、その巨体は地に伏せることはなく、ロッシュに激突した。
彼を跳ね飛ばしたその勢いのまま、モリスはこちらに駆けてくる。
「あ──」
やばい逃げなきゃと、思ったものの、足は動かず。
「お前ら!アスターさんっ!」
逃げろと、ヘンリーとロッシュの声が聞こえた。