第4章 報われない恋と幽霊騒ぎ
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アスターの横顔をこっそり見ながら、気づかれないようにホッと息を吐き出した。飲み干したココアのカップをコロコロと両手で弄ぶ。
アタシにとって、恋愛感情なるものは未知だった。
勿論知識として知ってはいた。経験がないだけなのだ。だから知りたいと思った。
アスターがクロコダイルに向ける想いの中に、そんな感情があるのかどうか。なんとなく、だけれど、従者が主人に向けるソレだけではない気がして。
でも聞いたことをたちまち後悔した。アスターの表情が、あまりに苦しそうだったから。
「なあ、アスター」
「ん?」
何がそんなに苦しいんだ。聞こうとして、でもあの表情はもう見たくなくて、やっぱりなんでもないとごまかした。
傍に置いた傘を手に取ると、まだココアを飲みきっていないアスターを急かす。
「早くしねえと、そろそろ鷹の目が待ってる」
待たせればいい、と思う気持ちもないではない。でもそれでさっさと帰られてしまっては、アタシはあの島へ帰るーーいや、行く?手段がなくなってしまう。居候というのは厄介だ。
喉を鳴らして三口程、ココアを飲み干したアスターが、行こうと立ち上がる。
彼女をホテルの前まで送ったら、港に向かおう。まったく自分の面倒見の良さに呆れるほどだと、アスターにバレないようにほんの少し苦笑した。